スヴャトラーナ・ツィハノウスカヤ

ベラルーシの政治家

スヴャトラーナ・ツィハノウスカヤベラルーシ語: Святлана Ціханоўская, ラテン文字転写: Sviatlana Cichanoŭskaja; 英語: Sviatlana Tsikhanouskaya1982年9月11日 - )は、ベラルーシ政治活動家。ロシア語読みのスヴェトラーナ・チハノフスカヤまたはスベトラーナ・チハノフスカヤ[1]ロシア語: Светлана Тихановская, 英語: Svetlana Tikhanovskaya)と呼ばれることも少なくない。

スヴャトラーナ・ツィハノウスカヤ
Святлана Ціханоўская
スヴェトラーナ・チハノフスカヤ
Светлана Тихановская
photo of Sviatlana Tsikhanouskaya
チェコの首都プラハでのツィハノウスカヤ(2021年)
生誕 (1982-09-11) 1982年9月11日(42歳)
ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦
白ロシア・ソビエト社会主義共和国の旗 白ロシア・ソビエト社会主義共和国(現・ベラルーシ)ミカシェヴィチュイベラルーシ語版ロシア語版英語版(ミカシェヴィチ)
国籍  ベラルーシ
出身校 イヴァン・シャミヤキン名称マズィル国立教育大学ベラルーシ語版ロシア語版
職業 教師政治活動家
活動期間 2020年–現在
著名な実績 2020年ベラルーシ大統領選挙に大統領候補として出馬
政党 無所属
公式サイト 公式ウェブサイト
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前歴

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大統領候補になる前、ツィハノウスカヤはベラルーシ国内で教師をしていた。逮捕されたYouTuber政治活動家シャルヘイ・ツィハノウスキーベラルーシ語版ロシア語版英語版(セルゲイ・チハノフスキー)と結婚している[2]

2020年の大統領選挙とその後の弾圧

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5月29日に夫が逮捕された後、ツィハノウスカヤは夫に代わって大統領選挙に出馬する意向を表明した。彼女は2020年7月14日に無所属の大統領候補として登録された[3]。大統領候補として登録された後、彼女は出馬を認められなかった有力な野党政治家であるヴァレルィ・ツァプカラベラルーシ語版ロシア語版英語版(ヴァレリー・ツェプカロ)とヴィクタル・ババルィカベラルーシ語版ロシア語版英語版(ヴィクトル・ババリコ)の支持を受けた。ババルィカの選挙対策本部長マリア・コレスニコワおよびヴァレルィ・ツァプカラの妻ヴェロニカ・ツァプカラと一緒に写っているツィハノウスカヤの写真は、彼女の選挙運動のシンボルとなった[4]

6月には動画を公開し、その動画内で彼女は「これ以上選挙運動を続けたら逮捕する、子供たちを誘拐する」と脅されていると語った。そのため彼女は、安全のため子供たちを海外に送り出し、祖母と一緒に暮らすようにした[5]

女性の連帯

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大統領選挙が始まる前に、ベラルーシの大統領アレクサンドル・ルカシェンコは、わが国は女性が大統領になるのはふさわしくないと発言した[6]。彼女の選挙運動は、アムネスティ・インターナショナルがこの国における反対運動家女性に対する差別的な扱いを非難したことを受けており[7]、差別的な扱いの中には性的暴力の脅しなどが挙げられ、女性運動家の子供たちの保護が求められている[8]

政治的見解

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ツィハノウスカヤは選挙期間中、夫を刑務所から解放するため大統領選挙に立候補していると語った[9]。また、一番の目標は自由で公正な選挙を確立することであると述べた。ベラルーシ政府がルカシェンコの有力な政敵を次々と排除したため、ツィハノウスカヤは現在の選挙を違法であると見なしている。彼女は、政権を取ってから6ヶ月以内に透明で責任ある選挙の計画を提出することを公約した[10]

支持者

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ツィハノウスカヤは無所属で選挙運動を戦っているにもかかわらず、ベラルーシの様々な反体制派から支持を得ている。ベラルーシ・キリスト教民主主義ベラルーシ語版ロシア語版英語版(BChD/BCD)の共同党首ヴィタリ・ルィマシェウスキベラルーシ語版ロシア語版英語版(ヴィタリー・ルィマシェフスキー)は、党としてツィハノウスカヤを支持することを宣言した。これは、ベラルーシ社会民主党ベラルーシ語版ロシア語版英語版(BSDP)、ベラルーシ統一市民党ベラルーシ語版ロシア語版英語版(AGP)、ベラルーシ女性党「ナジェヤ」ベラルーシ語版英語版(ベラルーシ女性党「希望」)に続くものである[11][12]。また、彼女は2010年の大統領選挙で野党から出馬した元大統領候補ミコライ・スタトケヴィチベラルーシ語版ロシア語版英語版(ニコライ・スタトケヴィチ)からも支持を受けている[12]

投票結果

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8月9日の投票の結果、中央選挙管理委員会はルカシェンコが80.2%を得票して当選した一方、ツィハノウスカヤは9.9%にとどまったと発表した。

選挙後の亡命と弾圧

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ベラルーシ市民は不正選挙であると一斉に反発し、市民と警官隊との間で衝突が発生し、約3000人が身柄を拘束された[13][14]。ツィハノウスカヤは10日夜から所在が分からなくなっていたが、11日に隣国のリトアニアに脱出していることが確認された[15]。8月17日には、大統領選挙の結果は不当なものだとして、国の指導者として行動することを表明した[16]

2022年にはドイツのアーヘン市よりカール大帝賞を受賞している。

2023年3月6日、ミンスクの裁判所は本人不在のまま反逆罪などで懲役15年の有罪判決を言い渡した[17]。同年6月20日、ベラルーシ最高裁判所はこの判決を支持すると発表した[1]

ギャラリー

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脚注

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  1. ^ a b 「反政権派の有罪 最高裁が支持 ベラルーシ」『読売新聞』朝刊2023年6月22日(国際面)
  2. ^ “Svetlana Tikhanovskaya: Housewife steps into election fight with Belarus strongman Lukashenko”. The Times. (6 June 2020). https://www.thetimes.co.uk/article/svetlana-tsikhanouski-housewife-gears-up-for-election-fight-with-belarus-strongman-rgtnr7qmv 
  3. ^ “In Belarus, 3 Women Unite to Fight Strongman Lukashenko”. Moscow Times. (20 July 2020). https://www.themoscowtimes.com/2020/07/20/in-belarus-3-women-unite-to-fight-strongman-lukashenko-a70925 
  4. ^ “Wife of jailed blogger steps up to fight Lukashenko of Belarus”. The Times. (20 July 2020). https://www.thetimes.co.uk/article/wives-of-jailed-rivals-step-up-to-fight-lukashenko-of-belarus-w5wtzpc3t 
  5. ^ “Belarus presidential candidate sends her children abroad after threats”. Reuters. (20 July 2020). https://www.reuters.com/article/us-belarus-election-candidate-children-idUSKCN24L1Q6 
  6. ^ “'Female solidarity': In Belarus, three women unite to fight strongman Lukashenko”. RTL. (17 July 2020). https://today.rtl.lu/news/world/a/1551143.html 
  7. ^ Belarus: Authorities threatening women political activists ahead of election”. Amnesty International (17 July 2020). 2020年7月30日閲覧。
  8. ^ Belarus rally for presidential challenger largest in years” (英語). The Republic. 22 July 2020閲覧。
  9. ^ “Newsday: The female politicians of Belarus taking on a male president who has been in power for more than two decades”. BBC World Service. (22 July 2020). https://www.bbc.co.uk/sounds/play/w172x2wbbkf0jwz 
  10. ^ «У Лукашэнкі вельмі нізкі рэйтынг». Што Ціханоўская сказала ў сваім першым выступе на тэлевізіі.. Радыё «Свабода». (2020年7月21日). https://www.svaboda.org/a/30739678.html 
  11. ^ БСДП (Грамада) заклікала галасаваць за Ціханоўскую і адстойваць права на свабодныя выбары.. Радыё «Свабода». (2020年7月23日). https://www.svaboda.org/a/30743221.html 
  12. ^ a b Статкевіч, Кавалькова, Хашчавацкі, АГП і БХД. Хто падтрымлівае Сьвятлану Ціханоўскую.. Радыё «Свабода». (2020年7月22日). https://www.svaboda.org/a/30741749.html 
  13. ^ “ベラルーシ警察が数千人を拘束、大統領選の現職勝利発表で大規模デモ”. bloomberg.co.jp. ブルームバーグ. (2020年8月10日). https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-08-10/QEU7EHT0AFBA01L 2020年8月11日閲覧。 
  14. ^ “大統領選、抗議弾圧で死者情報 ルカシェンコ氏6選―ベラルーシ”. jiji.co.jp. 時事通信社. (2020年8月10日). https://web.archive.org/web/20200816115921/https://www.jiji.com/jc/article?k=2020081000100&g=int 2020年8月12日閲覧。 
  15. ^ “ベラルーシ大統領選の対立候補、国外脱出 「子供たちのため」”. bbc.com. BBC. (2020年8月10日). https://www.bbc.com/japanese/53737679.amp 2020年8月12日閲覧。 
  16. ^ “ベラルーシ大統領、「私を殺すまで」選挙はない”. cnn.co.jp. CNN. (2020年8月18日). https://www.cnn.co.jp/world/35158306.html 2020年8月18日閲覧。 
  17. ^ “チハノフスカヤ氏懲役15年 ベラルーシ裁判所が判決”. 共同通信. (2023年3月6日). https://web.archive.org/web/20230306205137/https://nordot.app/1005469932294094848 2023年3月7日閲覧。 

関連文献

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  • アリス・ボータ英語版 著、岩井智子, 岩井方男 訳『女たちのベラルーシ 革命、勇気、自由の希求』春秋社、2023年。 (原書 Bota, Alice (2021), Die Frauen von Belarus: Wie ein Aufstand die Welt verändert 

関連項目

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外部リンク

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