スパイvsスパイ (コンピュータゲーム)
『スパイvsスパイ』(SPY vs SPY、スパイ アンド スパイ[1])は、1984年にアメリカ合衆国のファーストスターソフトウェアから発売されたAtari 8ビット・コンピュータ用対戦アクションゲーム。1961年よりアメリカの雑誌社『Mad』で連載された同名のコミック・ストリップのゲーム化である。
ジャンル | 対戦アクション |
---|---|
対応機種 |
Apple II (APII) ATARI-8bit コモドール64 (C64) 対応機種一覧
|
開発元 | ファーストスターソフトウェア |
発売元 | ファーストスターソフトウェア |
デザイナー | マイケル・J・リーデル |
人数 | 1 - 2人(対戦プレイ) |
メディア | フロッピーディスク |
発売日 |
APII, ATARI-8bit, C64 INT 1984年10月 |
スパイの情報争奪戦をテーマとした固定画面の対戦アクションゲーム(1人プレイは対コンピュータ、2人プレイは対人)で、プレイヤーは、原作の主人公である白のスパイ(WHITE)か黒のスパイ(BLACK)のどちらかを操作キャラクターに選択し、時に罠などで相手を妨害したり、逆に相手の妨害を回避したりしながら、各所に隠されたアイテムを回収し、制限時間内に相手よりも早く脱出することが目的となる。
オリジナルはAtari 8ビット・コンピュータ版で、同年にコモドール64やApple II、後年にはAmigaやAtari STなど当時の主要な海外プラットフォームに広く移植された。日本ではファミリーコンピュータ、セガマークIII、PC-8801、X1、ゲームボーイカラーに移植されている。また、続編も複数製作されている。
ゲーム内容
編集ゲーム画面は上下二分割固定で、上半分が白のスパイ(WHITE)、下半分が黒のスパイ(BLACK)の操作画面となる(これはプレイヤーがどちらを選んでも変わらない)。ゲームの舞台は、複数の部屋がドアで区切られた迷路のような構造をしていて、対戦開始前に選ぶマップごとにその構造は異なる(マップには「レベル」が存在し、高いレベルのマップほど複雑かつ広大となる)。
各部屋のどこかに隠された『設計図』『パスポート』『お金』『鍵』の4種類のアイテムを『カバン』に格納し、出口(飛行機のマークが描かれたドア)から脱出した方の勝利となる[2]。4種のアイテムは1つずつしか手に持てず、2種類以上のアイテムを持ち歩くには『カバン』が必携となる。また、クリアに必須なこれら以外にも、後述の罠や、それらを解除できるアイテムを手に持って運ぶことが出来る。
スパイは、移動操作以外には「家具などを調べる」「アイテムを家具などに隠す」「罠を仕掛ける」「相手のスパイと直接戦う」「マップを見る」といった行動が可能で、これらを駆使して目的を果たしたり、相手を妨害したりする。また、罠にかかるなどするとスパイは「死亡」し、ペナルティとして制限時間が減少する。制限時間が0になった場合は敗北となるため、「死亡」した回数が多いほど不利になる。
罠
編集以下の罠を使って相手を妨害することができる。設置された罠にかかると「死亡」する。なお、罠は仕掛けた本人に対しても作動する。また、それぞれの罠には一部を除き、対応した解除用のアイテムが存在し、特定の箇所から入手し、手に所持した状態で解除が可能(マップによっては入手箇所が存在しない場合もある)。
- ダイナマイト
- 部屋の家具などに仕掛ける。仕掛けた家具を調べると爆発し「死亡」する。
- 赤い防火用具入れから入手できる『消火バケツ』を所持していると解除できる。
- スプリング
- 部屋の家具などに仕掛ける。仕掛けた家具を調べると勢いよく弾き飛ばされる。飛ばされた先が閉じたドアや壁ならそこに激突し「死亡」するが、開いたドアの場合、激突するまで延々と飛ばされ続ける。
- 白い工具箱から入手できる『ペンチ』を所持していると解除できる。
- バケツ[3]
- ドアに仕掛ける。仕掛けたドアを開けると、バケツの中身が降りかかり、感電するようなエフェクトの後「死亡」する。
- コートラックから入手できる『カサ』を所持していると解除できる。
- ワイヤー銃
- ドアに仕掛ける。他の罠と異なり、仕掛けるには家具などからドアにワイヤーを繋げる必要がある(ただし繋げた元の家具側を動かしても作動はしない)。仕掛けたドアを開けると、全身を撃ち抜かれて「死亡」する。
- 十字マークの救急キットから入手できる『ハサミ』を所持していると解除できる。
- ファミリーコンピュータ(NES)版では削除されている(#移植版を参照)。
- 時限爆弾[4]
- 部屋自体に仕掛ける。仕掛けた直後から「その部屋にスパイがいる間だけ」カウントが進み(カウント中は独特の時計音がする)、カウントが約10秒進んだ時に部屋にいるスパイを爆破、「死亡」させる。
- この罠のみ、解除用のアイテムや解除方法が存在しない。
- ファミリーコンピュータ(NES)版では外見や性能が変わっている(同上)。
戦闘モード
編集2人のスパイが同じ部屋に入ると戦闘モードとなる[2]。このモードでのみ、相手スパイを直接攻撃できる。基本的に殴り合いで、一定回数殴られた側が「死亡」する。なお移植版によっては、戦闘が有利になる武器の入手が可能。
移植版
編集No. | タイトル | 発売日 | 対応機種 | 開発元 | 発売元 | メディア | 型式 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | Spy vs Spy | 1985年 1985年 |
Amstrad CPC ZX Spectrum |
First Star Software | Beyond Software | フロッピーディスク | - | |
2 | スパイvsスパイ | 1986年4月26日 1988年10月31日 PAL 1990年7月27日 |
ファミリーコンピュータ NES |
コトブキシステム | コトブキシステム | 320キロビットロムカセット[5] | KSC-SP NES-SP-USA |
|
3 | スパイvsスパイ | 1986年6月 1988年10月 1988年 |
セガ・マークIII | セガ第2AM研究開発部 | セガ | 256キロビットマイカード[6] | C-514 4010 MK-4583-50 |
|
4 | スパイvsスパイ | 1986年12月 |
PC-8801 X1 |
コンパイル | ホット・ビィ | フロッピーディスク カセットテープ |
- | |
5 | Spy vs Spy | 1987年 |
コモドール16 BBC Micro |
Artcrew Productions | Tynesoft | フロッピーディスク | - | |
6 | Spy vs. Spy | 1989年 |
Amiga Atari ST |
First Star Software | Wicked Software | フロッピーディスク | - | |
7 | スパイ アンド スパイ | 1999年7月23日 1999年8月1日 2000年5月13日 |
ゲームボーイカラー | コトブキシステム | コトブキシステム | 8メガビットロムカセット | CGB-AS6J-JPN CGB-AS6E-USA CGB-AS6P-EUR |
ファミリーコンピュータ版のアレンジ |
8 | Spy vs. Spy | INT 2012年7月26日 |
iOS | Robots and Pencils | Robots and Pencils | ダウンロード | - | リメイク版 |
9 | Spy vs. Spy | INT 2014年 |
Android | Robots and Pencils | Robots and Pencils | ダウンロード | - | リメイク版 |
- ファミリーコンピュータ / NES版
- ケムコから1986年4月に発売された。クレジットは『MAD MAGAZINE'S OFFICIAL KEMCO』。
- 日本国内版独自の設定として、白のスパイに「ヘッケル」、黒のスパイに「ジャッケル」という名前がつけられ、2人はそれぞれ「ケムコ」の産業スパイとライバル会社「トムコ」の産業スパイで、奪い合う設計図はゲーム界の元締めである「ジンテンドウ」の開発した新型ディスクシステムのもの、というバックストーリーがある。本作発売年の2月に任天堂からディスクシステムが発売されており、『別冊宝島797 僕たちの好きなTVゲーム 80年代懐かしゲーム編』では「産業スパイが狙うような最新機器として、ディスクシステムは認知されていた…のかなぁ」と解説されている[7]。
- ゲーム内容も、他の移植作と比べ、様々な変更点が存在する。
- 罠の仕様変更
- ワイヤー銃が削除され、時限爆弾の性能が「仕掛けた部屋にスパイが入ることで作動。スパイの顔が青くなり、2秒後に爆破する」となり、「作動してから2秒以内に部屋から出ること」で解除可能となった。
- 戦闘モードの仕様追加
- 家具などから、下記2種類の戦闘モード用の武器を入手・装備可能となった。他のアイテムと違い、一度装備すれば失うことはないが、別の武器を装備すると上書きされる。
- 警棒 - 威力は中程度で(6回ほど当てれば「死亡」)、射程が長い武器。
- ナイフ - 威力が大きく(4回ほど当てれば「死亡」)、射程が中程度の武器。
- また、パワーゲージが表示され、どの程度のダメージを受けているかが視認しやすくなり、『カバン』入手時にダメージが全回復するようになった。
- さらに、戦闘モード専用の操作にジャンプが加わり、相手の攻撃を回避できるようになった。
- 「死亡」時のペナルティ強化
- 「死亡」時に制限時間が減少した後、さらにそこから一定時間行動不能となり、より「死亡」時に不利になるようになった。
- セガ・マークIII版
- セガから1986年6月に発売され、移植は中裕司が担当した。
- 日本国内PC版
- PC-8801版およびX1版がホット・ビィから1986年12月に発売された。
- 開発はコンパイルが担当。
- ゲームボーイカラー版
- ファミリーコンピュータ(NES)版を移植したケムコが製作・発売。ファミリーコンピュータ版の仕様をベースに、マップの種類が大幅に増加などのアレンジが加わっている。
- iOS / Android版
- オリジナルであるAtari 8ビット・コンピュータ版のリメイク。メニュー画面など全て英語表記となる。グラフィックは現代風に描き直されているが、レトロモードを選べばオリジナル版のグラフィックでも楽しめる。
- なお、Android版は現在では日本国内での購入は不可能となっている。
スタッフ
編集- オリジナル版
- ゲーム・デザイン:マイケル・J・リーデル
- ファミリーコンピュータ版
- プロジェクト・ディレクター:フェルナンド・フェレーラ、リチャード・M・スピタルニー
- キャラクター・クリエイター:アントニオ・プロヒアス
- 音楽
- タイトル音楽:増野宏之
- ゲーム内音楽:ニック・スカイリム(作曲)、増野宏之(編曲)
- セガ・マークIII版
- リード・プログラミング:中裕司
- プログラミング:マイケル・J・リーデル
- 日本国内PC版
- プロデューサー:MOO NIITANI(仁井谷正充)
- スーパービジョン:マイケル・J・リーデル
- ゲーム・デザイン:PAC FUJISHIMA(藤島聡)
- メイン・プログラム:JEMINI HIRONO(広野隆行)
- マップ・メーカー:LUNARIAN SHINTANI(新谷憲司)
- アート・デザイン:JANUS TERAMOTO(寺本耕二)、YORIKI
- サウンド・クリエイター:MIYAMO(宮本昌知)、SHANT(山藤武志)
- サウンド・プログラム:POCHI NAKAMORI
- サウンド・エフェクト:SHIN-KUN
- テストプレイ:M.N.C.NUI、MIYAMO(宮本昌知)、JONATHAN、WAO ISEE(石丸忠)、YORIKI、PAL KITATANI
- ディレクター:MAC MURAKAMI
評価
編集評価 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
項目 | キャラクタ | 音楽 | 操作性 | 熱中度 | お買得度 | オリジナリティ | 総合 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
得点 | 2.66 | 2.56 | 2.54 | 2.45 | 2.59 | 2.36 | 15.16 |
- ファミリーコンピュータ版
- ゲーム誌『ファミリーコンピュータMagazine』の読者投票による「ゲーム通信簿」での評価は別記の通り15.16点(満30点)となっている[5]。
- ゲーム誌『ユーゲー』においてライターの池谷勇人は、対戦プレイ時において個人の性格が露わになる事を絶賛し、「美しく勝つ術など本作には存在しない。欺き、利用し、ひたすら『悪く』勝ってこそ本作は楽しめる」とゲーム性に関して肯定的に評価している[17]。
- ゲームボーイカラー版
ゲーム誌『ファミ通』の「クロスレビュー」では、6・6・7・7の合計26点(満40点)となっており[19][14]、レビュアーからはファミリーコンピュータ版と比較した上で「新作としても楽しめる」とした意見が挙げられた他、内容が単純であるが故にとっつきやすいといった意見や奥深いバトルが可能であるとの肯定的な意見の他、通信による対戦プレイに関して高評価が与えられた。しかし、対戦プレイに関しては「初心者どうしだとそっけないかも」といった意見やモニターが小さいため「敵の行動を見ながらプレイするのは少々無理がある」といったインターフェイス上の問題点、ゲーム性において「スピーディーな展開と神経衰弱的要素は人を選ぶかも知れない」など一部で否定的な評価も散見された[19]。
続編
編集- Spy vs. Spy II: The Island Caper(1985年) - 南国の無人島を舞台にしたシリーズ第2弾。『南国指令!!スパイvsスパイ』のタイトルで、ファミリーコンピュータにも移植された。
- Spy vs Spy III: ARCTIC ANTICS(1987年)- 南極を舞台にしたシリーズ第3弾。日本製ハードには移植されなかった。
- Spy vs. Spy(2005年) - 3Dアクションゲーム。ストーリーモード、モダン/クラシックモード、マルチプレイヤーモード(最大4人の対戦)が選択出来る。海外のPlayStation 2とXboxで発売され、ゲームキューブ版は発売中止となった。日本製ハードには移植されなかった。
- Spy vs. Spy vs. Spy - 海外で2018年頃に続編とリマスターが開発されていたが版権に問題があり発売されることはなかった[要出典]。
脚注
編集- ^ 日本国内では"VS"を「アンド」と読む。
- ^ a b M.B.MOOK『懐かしゲームボーイパーフェクトガイド』 (ISBN 9784866400259)、26ページ
- ^ 選択用のアイコンには、バケツに稲妻型のマークが入っているが、移植作品によっては単なるバケツとなっている。
- ^ 選択用のアイコンでは、目覚まし時計のような形をしている。
- ^ a b c 「5月10日号特別付録 ファミコンロムカセット オールカタログ」『ファミリーコンピュータMagazine』第7巻第9号、徳間書店、1991年5月10日、74頁。
- ^ 「7月号特別付録 MEGADRIVE ALL CATALOG」『メガドライブFAN』第3巻第7号、徳間書店、1991年7月15日、64頁。
- ^ 浅野智明、川島栄作、(株)ヘッドルーム編「スパイvsスパイ」『別冊宝島797 僕たちの好きなTVゲーム 80年代懐かしゲーム編』宝島社、2003年6月24日。ISBN 4-7966-3311-1、62頁。
- ^ a b c “Spy vs Spy for NES (1986)” (英語). MobyGames. Blue Flame Labs. 2017年3月4日閲覧。
- ^ “Spy vs Spy for SEGA Master System (1986)” (英語). MobyGames. Blue Flame Labs. 2017年3月4日閲覧。
- ^ a b c “Spy vs Spy for Commodore 64 (1984)” (英語). MobyGames. Blue Flame Labs. 2017年3月4日閲覧。
- ^ “Spy vs Spy for Amstrad CPC (1985)” (英語). MobyGames. Blue Flame Labs. 2017年3月4日閲覧。
- ^ a b c “Spy vs Spy for Atari ST (1989)” (英語). MobyGames. Blue Flame Labs. 2017年3月4日閲覧。
- ^ a b c d “Spy vs Spy for ZX Spectrum (1985)” (英語). MobyGames. Blue Flame Labs. 2017年3月4日閲覧。
- ^ a b “スパイ アンド スパイ(ゲームボーイ)の関連情報”. ファミ通.com. KADOKAWA CORPORATION. 2018年7月14日閲覧。
- ^ a b “Spy vs Spy for Game Boy Color (1999)” (英語). MobyGames. Blue Flame Labs. 2018年7月14日閲覧。
- ^ “Spy vs Spy for Amiga (1989)” (英語). MobyGames. Blue Flame Labs. 2017年3月4日閲覧。
- ^ a b 池谷勇人「ユーゲーが贈るファミコン名作ソフト 100選」『ユーゲー 2003 No.07』第7巻第10号、キルタイムコミュニケーション、2003年6月1日、59頁、雑誌17630-2。
- ^ “Readers' Top 100 Games of All Time”. Your Sinclair. (September 1993).
- ^ a b 「新作ゲームクロスレビュー」『ファミ通』第14巻第31号、アスキー、1999年7月30日、31頁、雑誌26255-7/30。