スティーヴン・ホーキングの著作
スティーヴン・ホーキングの著作(スティーヴン・ホーキングのちょさく)では、邦訳のあるスティーヴン・ホーキングの著作をとりあげる。
ホーキング、宇宙を語る
編集ホーキング 林一訳『ホーキング、宇宙を語る:ビッグバンからブラックホールまで』 早川書房 1989
(Stephen Hawking. A Brief History of Time: From the Big Bang to Black Holes. Bantam Books, 1988)
ホーキングの最初の一般向け啓蒙書。世界でベストセラーになった。
- 1 私たちの宇宙像
- ギリシャの天動説から、近代のガリレイ、ケプラー、ニュートンの地動説への変遷。
- 2 空間と時間
- ニュートンは絶対静止空間を不要とした。さらにアインシュタインは絶対時間も否定した。
- 3 膨張する宇宙
- ハッブルは宇宙が膨張している事を発見。ここからビッグバン理論が生まれた。
- 4 不確定性原理
- ハイゼンベルクは不確定性原理を発見。これにより素粒子の波・粒子の二重性を説明できる。
- 5 素粒子と自然界の力
- 物質をつくる素粒子と、その間に働く4種類の力について。
- 6 ブラックホール
- 大きな星が重力崩壊するとブラックホールができる。
- 7 ブラックホールはそれほど黒くない
- 1974年に、ホーキングはブラックホールの熱放射を発見した(ホーキング放射)。だからブラックホールは最後には蒸発する。
- 8 宇宙の起源と運命
- ビッグバン後、宇宙はちょうどいい速さで拡大した。それで星が生まれ、地球には生命が生まれた。
- 9 時間の矢
- 時間は逆行しない。これには、熱力学的な意味、人間の心理的な意味、宇宙の膨張の意味がある。
- 10 物理学の統合
- 相対性理論と量子力学は統合されるか。ひも理論がその候補。ただし10次元以上を必要とする。
- 11 結論 人間の理性の勝利
- やがては宇宙を説明できる統合理論が発見され、人間の理性は勝利するだろう。
ホーキングの最新宇宙論
編集ホーキング 佐藤勝彦監訳『ホーキングの最新宇宙論:ブラックホールからベビーユニバースへ』日本放送協会 1990
主に一般向けの講演・論文の集成。『ホーキング、宇宙へ語る』の後半部分、特に宇宙のはじまりの問題を詳しく解説。
- 1 ホーキング・私の半生
- A Short Story (1987) 出典は記されていない。
- 2 ブラックホールとベビーユニバース
- Black Holes and Baby Universes (1988)[注 1]
- 1990年 東京でNTTデータ通信が協賛した講演原稿。
- 3 宇宙の始まり
- The Origin of the Universe (1987) Cambridge, Print-87-0841
- 4 時空の涯て
- The Edge of Spacetime (1984)[注 2]
- (出典は 1989年 "The New Physics", Cambridge University Press)
- 5 虚時間
- Imaginary Time (1989) 直接の出典は記されていない。
- 6 時間の矢
- The Arrow of Time (1986)
- Hawking S. Arrow of Time in Cosmology. Physical Review D32, 2489-95 (1985) を講演向きにしたもの。
- 7 ブラックホールの量子力学
- The Quantum Mechanics of Black Holes (1977)
- (出典は S.W.Hawking. Scientific American 236, 34-42 (1977))
- 8 物理学の統一
- Unification of Physics (1984)
- (出典は1984年 "The Great Ideas Today", Encyclopedia Brittanica Inc.)
時間順序保護仮説
編集ホーキング 佐藤勝彦監訳『時間順序保護仮説』 NTT出版 1991
1990-1991年の講演原稿を編集したもの。
- 1 全てのことは予めどうなるかが定められているのだろうか?
- Is Everything Determined? (1990)
- 2 宇宙の未来
- The Future of the Universe (1991)
- 3 アインシュタインの一般相対論と量子力学
- Einstein's General Relativity and Quantum Mechanics
- 1991年、東京のNTTデータ ニューパラダイムセッションでの講演。
- 4 時間順序保護仮説
- The Chronology Protection Conjecture
- 1991年、京都のマーセル・グロスマン会議での講演。
- これを学術論文にしたものが、S.W.Hawking. Phys Rev D46, 603-611 (1992)
宇宙における生命
編集ホーキング 佐藤勝彦監訳 『宇宙における生命』 NTT出版 1993
1991-1992年の講演原稿を編集したもの。
- 1 私の信念
- My Beliefs (1992) 出典は記されていない。
- 2 宇宙における生命
- Life in the Universe (1991) [注 3]
- 1992年、NTTデータ、ニューパラダイムセッションでの講演
- 3 無境界条件と時間の矢
- The No Boundary Condition and the Arrow of Time (1991)[注 4]
- 1992年、早稲田大学の国際会議「量子論と宇宙」での講演
- 4 二次元ブラックホールの蒸発
- Evaporation of Black Holes in Two Dimensions (1992)
- S.W.Hawking. Evaporation of Two Dimensional Black Holes. Phys Rev Lett 69, 406-9 (1992) を講演向きにしたもの。
創造の種
編集ホーキング 佐藤勝彦 高柳雄一 『創造の種』 NTT出版 1995
ホーキングの文は2章まで。
- 1 オックスフォードとケンブリッジ
- 1993年の著作 "Black Holes and Baby Universes and other Essays" から。
- 2 創造の種
- 1993年 東京 NTTデータ 夏季特別セミナーで。
- 3 ビッグバン・モデルとその観測 (佐藤勝彦)
- 4 変わりゆく宇宙論 (高柳雄一)
ホーキング博士と宇宙
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ホーキング 向井清訳『ホーキング博士と宇宙』 北星堂書店 1995
(Stephen Hawking. Black Holes and Baby Universes)
時空の本質
編集ホーキング、ペンローズ 林一訳 『ホーキングとペンローズが語る時空の本質:ブラックホールから量子宇宙論へ』(英語版) 早川書房 1997
(Stephen Hawking and Roger Penrose. The Nature of Space and Time. Princeton University Press, 1996)
1994年のケンブリッジ大学でのホーキングとロジャー・ペンローズによる講演と討論。専門家向け。
- 1 古典理論 ホーキング
- 時空には特異点[要曖昧さ回避]が存在する。そこでは一般相対性理論は成立しない。
- 2 時空特異点の構造 ペンローズ
- 特異点はブラックホールのような観測不能な場所にある。自然は裸の特異点を見せない。(宇宙検閲官仮説)
- 3 量子ブラックホール ホーキング
- G=c=h=1とするプランク単位で、ブラックホールのエントロピーS=A/4 を導出。ブラックホールは熱を放射する。
- 4 量子論と時空 ペンローズ
- ブラックホールでの情報の消失、量子論の観測問題(シュレディンガーの猫問題)を論じる。
- 5 量子宇宙論 ホーキング
- 無境界提案。宇宙をユークリッド的な空間の経路積分をもとに定義される状態と考える。この空間は通常の空間+虚時間の4次元である。
- 6 ツイスターで見る時空 ペンローズ
- ツイスター理論で宇宙を説明する。宇宙は開いている?
- 7 討論 ホーキングとペンローズ
- シュレディンガーの猫をめぐって、ホーキングは実証主義者、ペンローズは実在主義者を自称する。
ホーキング、未来を語る
編集ホーキング 佐藤勝彦訳『ホーキング、未来を語る』(英語版)アーティストハウス 2001
(Stephen Hawking. The Universe in a Nutshell. Bantam, 2001)
前著『宇宙を語る』の後半部に焦点をおき、豊富なカラー図を入れ、詳しくかつわかりやすくした。
- 1 相対論について
- アインシュタインの相対性理論は時空間理解へ革命を起こした。ただしビッグバンの説明に限界がある。
- 2 時間の形
- 1960年代、我々はビッグバンは特異点[要曖昧さ回避]からはじまったと証明した。それ以前には時間はなかった。
- 3 クルミの殻の中の宇宙
- 虚時間を導入すれば、ビッグバンの特異点問題を回避できるかもしれない。
- 4 未来を予測する
- 私達はブラックホールの熱放射を発見した。つまりブラックホールは蒸発するはず。
- 5 過去を守る
- 過去へ時間旅行する事が可能か?マクロ的には不可能だ。
- 6 私たちの未来は?
- 科学論文つまり我々の知識は、指数関数的に増加している。それだけの情報を処理する方法は?
- 7 ブレーン新世界
- 銀河の中心の暗黒物質は何か?M理論が想定する11次元の世界の影響もあるかもしれない。
時空の歩き方
編集ホーキングほか 林一訳 『時空の歩き方:時間論・宇宙論の最前線』早川書房 2004
(S.W.Hawking, K.S.Throne, I.Novikov, T.Ferris, A.Lightman. The Future of Spacetime. California Institute of Technology, 2002)
2000年の一般向け講演会を編集。
第3章「歴史家のために世界の安全を守る『時間順序保護』」(Chronology protection: Making the world safe for historians)のみがホーキングの講演原稿。マクロ世界で過去への旅行が不可能であることの証明。
ホーキング、宇宙のすべてを語る
編集ホーキング、ムロディナウ 佐藤勝彦訳 『ホーキング、宇宙のすべてを語る』(英語版)ランダムハウス講談社 2005
(Stephen Hawking and Leonard Mlodinow. A Briefer History of Time. Bantam Books, 2005)
最初の一般むけ著作 "A Brief History of Time" から、難しくなりがちな量子力学や素粒子物理学などの話をほぼ省き、より短く(brieferに)した。
- 1 宇宙について考える
- 2 進化する宇宙像
- アリストテレス、プトレマイオス、コペルニクス、ケプラーの宇宙像
- 3 科学理論の本質
- 現在主導的な科学理論は、相対性理論と量子力学だ。
- 4 ニュートンの宇宙
- ニュートンの理論は絶対静止空間を要請しない。
- 5 相対性理論
- アインシュタインは絶対時間を放棄して、光速度不変を説明した。
- 6 曲がった空間
- アインシュタインは重力を空間の曲がりで説明した。
- 7 膨張している宇宙
- 1929年にハッブルはほとんどの銀河が遠ざかっている事を発見した。
- 8 ビッグバン、ブラックホール、宇宙の進化
- 宇宙はビッグバンから生まれた。大きな星が重力崩壊するとブラックホールになる。
- 9 量子重力理論
- 相対性理論は量子力学と統合され、重力に関する量子論とされねばならない。
- 10 ワームホールとタイムトラベル
- タイムトラベルは可能か。未来へは準光速移動ができれば可能だ。過去へはマクロ的には困難だ。
- 11 自然界の力と統一理論
- 統一理論はできるか。1980年代以後ひも理論が有力だが、10次元以上を必要とする。
- 12 結論
- 宇宙を説明できる究極理論が発見されれば、神の役割が示唆されるだろう。
ホーキング 宇宙の始まりと終わり
編集ホーキング 倉田真木訳 『ホーキング 宇宙の始まりと終わり:私たちの未来』 青志社 2008
(Stephen Hawking. The Theory of Everything: The Origin and Fate of the Universe. Phoenix Books and Audio, 2007)
1993年のケンブリッジ大学での講義をDove Books & Audioが収録、1996年に書籍化し、2007年にPheonix Books が再版したもの。 邦訳は21世紀だが、原著執筆は『ホーキング、宇宙を語る』に近い頃で、内容も近い。用語解説・人名解説はあわせて48pp.あり充実。
- 1 宇宙についての考え方
- 2 膨張する宇宙
- 3 ブラックホール
- 4 ブラックホールはそんなに黒くない
- 5 宇宙の起源と運命
- 6 時間の方向性
- 7 万物の理論
ホーキング、宇宙と人間を語る
編集ホーキング、ムロディナウ 佐藤勝彦訳『ホーキング、宇宙と人間を語る』(英語版) エクスナレッジ 2010
(Stephen Hawking and Leonald Mlodinow. The Grand Design. Bantam Books, 2010)
宇宙の存在理由をM理論が説明してくれるかもしれないという主旨。
- 1 この宇宙はなぜあるのか? - 存在の神秘
- 2 自然法則はいかに創られたか? - 法則の決まり
- 3 実在とは何か? - モデル依存実在論
- 4 すべては無数の歴史の足し上げで決まるのか? - 量子論の描く世界
- 5 万物の理論はあるのか? - 無数の宇宙を予言するM理論
- 6 この宇宙はどのように選ばれたのか? - 相対論と量子論の描く宇宙
- 7 私たちは選ばれた存在なのか? - 見かけ上の奇跡
- 8 グランドデザイン - 宇宙の偉大な設計図
ホーキング、自らを語る
編集ホーキング 池央耿訳 『ホーキング、自らを語る』(英語版) あすなろ書房 2014
(Stephen Hawking. My Brief History. Bantam Books, 2013)
- 1 幼年期
- 私の生まれは奇しくも、ガリレオの没後300年の1942年1月8日。
- 2 セント・オルバンス
- 私は機械仕掛けと見れば、どうして動くのか知りたくて、片っ端から分解した。
- 3 オックスフォード
- 友人に恵まれ、オックスフォード大学のボート部生活は楽しかった。
- 4 ケンブリッジ
- 大学院で一般相対性理論を研究。ALSを発症。ジェインと結婚。
- 5 重力波
- 重力波[要曖昧さ回避]の検出を考えたが、自分には無理と考えてやめた。
- 6 ビッグバン
- ビッグバンはどう始まったか。私たちは1960年代に、特異点[要曖昧さ回避]が時空のはじまりという特異点定理を証明した。
- 7 ブラックホール
- 1939年にオッペンハイマーはブラックホールを予測した。1974年にブラックホールからの熱放射を発見。
- 8 カリフォルニア工科大学
- キップ・ソーンがカリフォルニアに招いてくれた。電動車椅子は自立の助けになった。
- 9 結婚
- 気管切開、人工呼吸が必要になった。ジェインと離婚、看護師のエレインと再婚、再び離婚。
- 10 時間小史
- 1988年に一般読者向けの本を書く。題は「時間小史」(邦訳『ホーキング、宇宙を語る』)。
- 11 時間旅行
- ソーンが時間旅行の可能性を提起した。考えてみたが、過去に行くには負のエネルギーが必要だ。
- 12 虚数時間
- 虚数時間を取り入れ、1983年にハートルと無境界仮説を提案。特異点を除くことができた。
- 13 果てしなき道
- 発病後、五十年を経た今では、これまでをふりかえって静かな満足を覚えている。
ホーキング、ブラックホールを語る
編集ホーキング 塩原通緒訳『ホーキング、ブラックホールを語る:BBCリース講義』早川書房 2017
(Stephen Hawking. Black Holes: The BBC Reith Lectures. Bantam Books, 2016)
2016年の一般向けラジオ放送原稿。ブラックホールにテーマをしぼった。
- 1 ブラックホールには毛がないのか
- 1960年代まで、ブラックホールには3つの情報(質量、角運動量、電荷)しかないとされていた。(ブラックホール無毛定理)
- 2 ブラックホールはそれほど真っ黒ではない
- 1974年にホーキング放射を発見。だからブラックホールは最後に消滅する。
ホーキング、最後に語る
編集ホーキング、ハートッホ(松井信彦訳)、佐藤勝彦、白水徹也 『ホーキング、最後に語る:多宇宙をめぐる博士のメッセージ』早川書房 2018
ホーキングの最後の学術論文の解説として、日本で編集。
pp.71-92の「永久インフレーションからの滑らかな離脱?」 (S.W.Hawking and Thomas Hertog. A smooth exit from eternal inflation? Journal of High Energy Physics (2018)) がホーキングとハートッホの論文。
ビッグ・クエスチョン
編集ホーキング 青木薫訳 『ビッグ・クエスチョン:<人類の難問>に答えよう』(英語版) NHK出版 2019
(Stephen Hawking. Brief Answers to the Big Questions. Bantam Books, 2018)
ホーキング死去時には未完成だった。同僚や家族らによって完成。
- 1 神は存在するのか?
- 2 宇宙はどのように始まったのか?
- 3 宇宙には人間のほかにも知的生命が存在するのか?
- 4 未来を予言することはできるのか?
- 5 ブラックホールの内部には何があるのか?
- 6 タイムトラベルは可能なのか?
- 7 人間は地球で生きていくべきなのか?
- 8 宇宙に植民地を建設するべきなのか?
- 9 人工知能は人間より賢くなるのか?
- 10 より良い未来のために何ができるのか?
時空の大域的構造
編集ホーキング、G.F.R.エリス 富岡竜太他訳 『時空の大域的構造』(英語版)プレアデス出版 2019
(S.W.Hawking and G.F.R.Ellis. The Large Scale Structure of Space-Time. Cambridge University Press, 1973)
邦訳は新しいが、原著発刊は1973年。特異点定理を証明する専門書。ホーキング自身が「この本はきわめて専門的で、(一般人には)とても読めたものではない。」と『ホーキング、宇宙を語る』の序文で書いている。
- 1 重力の役割
- 2 微分幾何
- 3 一般相対論
- 4 曲率の物理学的意義
- 5 厳密解
- 6 因果構造
- 7 一般相対論におけるCauchy問題
- 8 時空特異点
- 9 重力崩壊とブラックホール
- 10 宇宙の初期特異点
長女ルーシー・ホーキングとの共著
編集長女ルーシー・ホーキングとの共著、少年少女向けの作品が以下。
関連書
編集「ホーキング、宇宙を語る」ガイドブック
編集ホーキング編 林一訳 『「ホーキング、宇宙を語る」ガイドブック』早川書房 1992
(Edited by Stephen Hawking, Prepared by Gene Stone. Stephen Hawking's Brief History of Time: A Reader's Companion. Bantam Books, 1992)
写真提供はホーキング。文章は周囲の人々による。 実際の編集作業はジーン・ストーンによる。
ホーキング 未来を拓く101の言葉
編集桝本誠二著 『ホーキング 未来を拓く101の言葉』 KADOKAWA 2018
脚注
編集注釈
編集- ^ Copyright 1988 とあるのは Proceedings of the Friedmann Centenary Conference, Leningrad, USSR (1988) か。
- ^ Copyright 1984 とあるのは、原論文である S.W.Hawking. American Scientist 72, 355-359 (1984) または S.W.Hawking. New Scientist 103, 10-14 (1984) か。
- ^ Copyright 1991 とあるが、その出典は不明。
- ^ Copyright 1991 とあるのは NATO Workshop on the Physical Origin of Time Asymmetry, 346-357 (1991) か。