スタンドアップパドルボード
スタンドアップパドルボード(standup paddleboard)は、サーフィンの一種としてのウォータースポーツである。このスポーツで用いられるボードのことも指す。サーフボードの上に立ち、一本のパドルで左右を交互に漕ぎ、海・湖沼・河川などの水面を進む。スタンド・アップ・パドルボード(standup paddleboard)の頭文字をとってSUP(サップ)とも呼ばれ[1]、SUPサーフィンや立ちこぎボードなどと呼ばれることもある[2]。
歴史
編集サーフィン用のボードは通常、つかまって泳いだり、上に座るかうつ伏せになって波乗りのタイミングを待ったりする。1960年代、アメリカ合衆国ハワイ州オアフ島ワイキキのビーチボーイズらによってSUPが始められ、大きなサーフボードの上でパドルを使って漕ぐ乗り方が生まれた。
近年になり、ハワイのマウイを拠点とするビッグウェイヴサーファーのレイヤードハミルトンやデイブカラマ、マカハビーチボーイズ、オアフ島のブライアン・ケアルラナや、デイブ・パーメンター等によって再び注目を浴びるようになる。 当初はトゥインサーフィンの足腰の練習用として始められたが、これによって沖からのテイクオフもパドルを使う事により可能になり、ロングボードのターンにもパドルがより有効な事が認知された。
特徴
編集長距離を移動する事も可能であり、波や風の無いフラットな海水面でも楽しめる事から、ハワイでは子供から高齢者まで許容範囲の広いマリンスポーツとして注目されている。不安定なボードの上に乗ってバランスを取ることにより全身運動につながり、股、太もも、首、ひざ等が鍛えられるエクササイズ効果がある事も魅力の一つとされている。釣りでの1人乗りボートの代わりや水上でのヨガに使われることもある[3]。
日本にも伝わり、湖や流れが緩い河川を含めて楽しまれるようになった。日本スタンドアップパドルボード協会(神奈川県横浜市)や日本シティサップ協会(大阪市)[1][3]など全国規模またはSUPが盛んな地域での愛好者の集まりやチーム、業界団体も複数設立されている[4]。
事故
編集死亡例を含む水難事故も起きており、海上保安庁は2018年、安全指針(ウォーターセーフティガイド)を策定した。事前に天候を調べ、救命胴衣(ライフジャケット)を着用し、ボードと離れ離れにならないように足とリーシュコードで結びつけて水に出ることを勧めている。遭難時に通報できるよう防水袋に入れた携帯電話も持って出ることも呼び掛けている[3]。日本スタンドアップパドル協会は2022年10月、SUP用品販売店の認定制度を導入し、ライフジャケット着用など来店客への安全指導を求めている[3]。
2022年の海上保安庁のまとめによると、同年12月16日までのSUPによる海難事故は年70人と過去最多を更新。離岸流や風の影響で岸に戻れなくなるケースが見られた[5]。
分類
編集道具
編集ボード
編集一般的には、9フィート(約274.3cm)以上のロングボードと呼ばれているものが使用される。近年は専用のボードが開発されている。ボードに厚みや幅を広く作る事で浮力・安定感を持たせたり、スピードが出るような形状にしたりしたものがある。上級者であれば、ショートボードでも可能であり、基本的な定義はない。
パドル
編集立った状態で漕げるように、身長に合わせたパドルが使用される。更に漕ぎやすくするためにグリップの形状も改良され、ブレードに角度がついたものが主流になってきている。
リーシュコード
編集サーフボードと体を結ぶ紐状のもの。リーシュコードの他に、流れ止め、パワーコードとも呼ぶ。ロングボード用など長めのものが使用される。
脚注
編集- ^ a b 立ちこぎボード「SUP」波に乗ってバランス力アップ 朝日新聞デジタル(2018年7月14日)2018年9月17日閲覧
- ^ 「水上散歩に救命胴衣を 立ちこぎボード事故増」『読売新聞』2018年8月7日夕刊
- ^ a b c d “楽しく水上すいすい でも 要注意/SUP 人気で事故急増 神奈川全国最多/危ない秋の北風「ライフジャケット着用徹底を」”. 東京新聞. (2022年10月9日) 2022年10月16日閲覧。
- ^ SUP関係団体 日本SUP振興会(2022年10月16日閲覧)
- ^ “マリンレジャー「SUP」人気 離岸流に注意 5年で事故3.5倍 今年最多70人”. 産経新聞. (2022年12月18日) 2023年9月4日閲覧。
- ^ “サップヨガとは”. 一般社団法人 日本サップヨガ協会HP. 2023年9月4日閲覧。