ジョンストン・マッカレー
ジョンストン・マッカレー(Johnston McCulley、1883年2月2日 - 1958年11月23日)は、アメリカ合衆国イリノイ州オタワ生まれの小説家。「地下鉄サム」(Thub-Way Tham)シリーズと「怪傑ゾロ」シリーズの作家として知られる。マッカレイ/マッカリ/マッカーレイ/マッカレエなどの表記があり、別ペンネームに、ハリントン・ストロング(Harrington Strong)、ジョージ・ドレイン、レイリー・ブライアンなどがある。
高校卒業後、警察誌『ポリス・ガゼット』(Police Gazette)の記者や、第一次世界大戦での陸軍広報官(Army public affairs officer)を勤めた後、作家業に専念した。デビュー作品は、1908年の「失われた希望の土地」である。
1920年、「怪傑ゾロ」シリーズの第1作 「カピストラノの疫病神」(The Curse of Capistrano、後に The Mark of Zorro と改題)を発表。
地下鉄サム
編集ジョンストンは1918年、ニューヨークの地下鉄を舞台に活躍する腕っこきのスリ、サムを主人公にした連作短編「地下鉄サム」シリーズをパルプ・マガジン『ディテクティヴ・ストーリー・マガジン(Detective Story Magazine)』』に発表。以後1960年まで、長短編合わせて183編を発表。
ゾロ
編集覆面の快男児ゾロを主人公にした長編は4編書かれている。第1作は1919年のパルプ・マガジン『オールストーリー・ウィークリー』(All-Story Weekly)』誌に掲載された「カピストラノの疫病神」。第2作から第4作までは『アーゴシー・マガジン』(Argosy Magazine)誌に掲載された。1922年に第2作が、1931年に第3作 Zorro Rides Again が、1941年に第4作 The Sign of Zorro が掲載された。
ゾロの外見(黒いマントとマスク、帽子)は、ジョンストンの小説よりも1920年にダグラス・フェアバンクス主演で製作され大ヒットした無声映画『奇傑ゾロ』によって定義された部分が多く、後のテレビシリーズにおいてはジョンストンが逆にそのスタイルを踏襲している。
ゾロのキャラクターは人気を呼び、1932年、1933年、1934年と『アーゴシー』(Argosy)誌にさらに3つの短編が書かれた。
1940年、タイロン・パワーとリンダ・ダーネル主演で映画『快傑ゾロ』が製作され、大ヒットする。これによってゾロはより広く知られたキャラクターとなり、マッカレーはゾロの新しい冒険を執筆することを決めた。ジョンストンは、『ウェスト・マガジン』(West Magazine)誌全号にゾロの新作短編を書き下ろす契約を結び、1944年7月号から1951年7月の同誌最終号まで53編が掲載された。その後さらに1編が、"Max Brand's Western Magazine" 1954年5月号に掲載された(これはおそらく『ウェスト・マガジン』が廃刊になったため未発表になっていたものと思われる)。
最期のゾロの物語は、『ショート・ストーリー・マガジン』(Short Story Magazine)1959年4月号に掲載された。これは ジョンストンの死後、ガイ・ウィリアムス(Guy Williams)主演のディズニーによる白黒のテレビシリーズ「快傑ゾロ」(1957年から1959年)がアメリカ全土で人気になった後のことである。
2005年、チリの有名な小説家イサベル・アジェンデ(Isabel Allende)は、マッカレーによる最初のゾロの前日譚となる小説を書いた。
他のキャラクター
編集ジョンストンの創造した多くのキャラクター(グリーン・ゴースト(The Green Ghost)、ザ・サンダーボルト(The Thunderbolt)、クリムゾン・クラウン(The Crimson Clown)など)もまたゾロと同じように、マッカレーの時代から現代に至るまで大衆文化におけるマスクド・ヒーローに対するインスピレーションを与え続けている。
彼の描いた多くのパルプ・ヒーローの中でおそらく2番目に人気が高いのは、「ブラック・スター(The Black Star)」だと思われる。独身の大富豪ロジャー・バーベック=フラグラム(Roger Verbeck-Flagellum)と彼のパートナーである元凶悪犯マグス(Muggs)の犯罪者コンビである。
ブラック・スターの初出は『ディテクティヴ・ストーリー・マガジン』1916年3月5日号に掲載された「Rogue For a Day」である。このシリーズは、1930年の末まで続いた。
ブラック・スターは決して殺人を犯さず、女性を苦しめず、常に礼儀正しく、麻薬は取扱わないといった振る舞いから「犯罪紳士」と呼ばれた。
ブラック・スターの一味は、黒い星をエンボス(圧印)加工した黒いフード付きの外套を常に着用し、瞬間的に犠牲者の意識を失わせる「ヴェイパー・ボム」と「ヴェイパー・ガン」を使用した(このガジェットはグリーン・ホーネットのガス銃を先取りしたアイディアである)。
1927年にクリムゾン・クラウンものの第1作「赤い道化師(Crimson Clown)」を、また翌年に続編「Crimson Clown Again」を発表する。
クリムゾン・クラウンの本名はデルトン・プロース(Delton Prouse)。若き独身の大富豪である。また第一次世界大戦の勇士でもあり、探検家であり冒険家でもある。彼は現代のロビン・フッドとして、不正な手段で蓄財する金持ちや組織から、誰も傷つけることなく金品を奪い返し、彼らの犠牲となった者たちに分け与える義賊である。
彼は、道化師を模した白いスーツを着用し、催涙ガス・ピストル(後に「ガスガン」と呼ばれるようになった)を使用する。
著作リスト
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日本語訳された小説
編集- 「マッカリ集」(坂本義雄訳、博文館、『世界探偵小説全集22』に収載) 1929.7
- 「黒星」(和気律次郎訳、改造社、『世界大衆文学全集53』に収載) 1930
- 「双生児の復讐」(和気律次郎訳、春陽堂、『探偵小説全集15』に収載) 1930
- 『仮面の佳人』(The Masked Woman、藤澤透訳、論創社、論創海外ミステリ) 2015.6
地下鉄サム
編集- 「地下鉄サム」(横溝正史訳、平凡社、『世界探偵小説全集7』に収載) 1929
- 「地下鉄サム」(乾信一郎訳、東京創元社、『世界大ロマン全集06』に収載) 1956
- 『地下鉄サム』(乾信一郎訳、創元推理文庫) 1959.7
- 「サムの放送」
- 「サムと厄日」
- 「サムと指紋」
- 「サムと子供」
- 「サムとうるさがた」
- 「サムの紳士」
- 「サムと名声」
- 「サムと大スター」
- 「サムと贋札(にせさつ)」
- 「サムと南京豆(ピーナツ)」
- 「サムの魚釣」
- 「サムの鬱憤」
- 「サムの良心」
- 「サムの百ドル」
- 「サムとクリスマス」
- 「サムの初恋」
- 「サムの新弟子」
- 「サムと犬」
- 「サムと詐欺師」
- 「サムの陪審員」
- 『地下鉄サム 2』(坂本義雄訳、日本出版協同) 1953.1
- 「サムの遺産」
- 「サムの手術」
- 「サムの覚醒」
- 「サムの不景気」
- 「サムの競馬見物」
- 「サムの女嫌い」
- 「サムの美顔術」
- 「サムと猿公」
- 「サムの義侠」
- 『地下鉄サム 3』(坂本義雄訳、日本出版協同) 1953.3
- 「サムの悪日」
- 「サムの「特権」」
- 「サムの慈善家」
- 「サムのクロースワード」
- 「サムの誕生日」
- 「サムのラジオ」
- 「サムの礼装」
- 「サムのロマンス」
- 「サムの自動車」
- 「サムの友情」
- 『地下鉄サム 4』(乾信一郎訳、日本出版協同) 1953.7
- 「サムの放送」
- 「サムと厄日」
- 「サムと指紋」
- 「サムと子供」
- 「サムとうるさがた」
- 「サムの紳士」
- 「サムと名声」
- 「サムと大スター」
- 「サムと贋札」
- 「サムと南京豆」
- 「市民サム」(乾信一郎訳、ミステリマガジン 1976.10 No.246)
- 「サムの吉日」(三田村裕訳、日本版EQMM 1961.1 No.55)
- 「サムの新弟子」(訳者不詳、文藝春秋編、文春文庫『人間の情景04 - こんな人たち』に収載) 1992.12
- 「サムの不景氣」(坂本義雄訳、近代社『世界短篇小説大系 探偵家庭小説篇』に収載) 1926
- 「サムの放送」(乾信一郎訳、赤木かん子編、ポプラ社『ミステリーは身をたすく』に収載) 2007.3
快傑ゾロ
編集- 「怪傑ゾロ」(井上一夫訳、東京創元社『世界大ロマン全集58』に収載) 1959
- 「快傑ゾロ」(平塚武二文、小学館、川端康成監修『少年少女世界の名作文学11 - アメリカ編2』に収載) 1965
- 『快傑ゾロ』(井上一夫訳、創元推理文庫) 1969.12、のち再刊(創元推理文庫) 2005.12
- 『快傑ゾロ』(広瀬順弘訳、角川文庫) 1975、のち新版 1998.8