ジクロロテトラキス(ジメチルスルホキシド)ルテニウム(II)
ジクロロテトラキス(ジメチルスルホキシド)ルテニウム(II)(Dichlorotetrakis(dimethyl sulfoxide)ruthenium (II))は、化学式が RuCl2(dmso)4 と表される配位化合物である。この錯体は、中心のルテニウム(II)に4分子の DMSO(ジメチルスルホキシド)と2個の塩化物イオンが配位した構造をしているが、dmso配位子にはSで配位した場合とOで配位した場合の2種の配位が可能であり、結合異性体が存在する[1]。
cis,fac-ジクロロテトラキス(ジメチルスルホキシド)ルテニウム(II) | |
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ルテニウム, ジクロロテトラキス(スルホニルビス(メタン))- (9CI) | |
別称 テトラキス(ジメチルスルホキシド)ジクロロルテニウム(II), ジクロロテトラキス(メチルスルホキシド)ルテニウム, ジクロロテトラキス(スルフィニルビス(メタン))ルテニウム | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | [11070-19-2 [11070-19-2]] |
特性 | |
化学式 | C8H24Cl2O4RuS4 |
モル質量 | 484.51 g/mol |
外観 | 黄色の結晶 |
水への溶解度 | 混和性 |
溶解度 | ニトロメタン, クロロホルム, ジクロロメタン |
構造 | |
配位構造 | 八面体配位 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
構造
編集RuCl2(dmso)4は2種の異性体が単離されており、どちらも八面体形の錯体である。ルテニウムは酸化数+2を取り、全体として18電子則を満足している。
単離された2つの異性体とは、cis, fac -RuCl2(dmso-S)3(dmso-O) と、 trans, mer -RuCl2(dmso-S)4である。trans,mer 配置は速度論的に有利であるが、cis異性体に比べ熱力学的には不安定である。
上記の呼称において、"cis/trans" は塩化物イオンの位置関係を示しており、"fac/mer" は S で配位した DMSO の位置関係を示す。"dmso-S/O" の表記は DMSO のどの原子が金属へ配位しているかを表しており、dmso-Sと書いた場合は硫黄原子で配位し、dmso-Oと書いたときは酸素原子で配位していることを表す。
合成
編集利用
編集RuCl2(dmso)4 や類似の Ru-DMSO 錯体には抗癌作用が知られている[3]。
脚注
編集- ^ 総説: Alessio, E. "Synthesis and reactivity of Ru-, Os-, Rh-, and Ir-halide-sulfoxide compounds." Chem. Rev. 2004, 104, 4203-4242.
- ^ James, B. R.; Ochiai, E.; Rempel, G. I. Inorganic and Nuclear Chemistry Letters 1971, 7, 781.
- ^ Bratsos, I.; Serli, B.; Zangranko, E.; Katsaros, N.; Alessio, E. "Replacement of chlorides with dicarboxylate ligands in anticancer active Ru(II)-DMSO compounds: A new strategy that might lead to improved activity" Inorg. Chem. 2007, 46, 975-992.