ニワウルシ
ニワウルシ(庭漆[2]・樗[3]・臭椿[3]、学名: Ailanthus altissima)は、ニガキ科の落葉高木。別名、シンジュ(神樹)。和名に「ウルシ」がついているが、ウルシ(ウルシ科)とは全くの別種。ウルシのようにかぶれる心配はない。
ニワウルシ/シンジュ | |||||||||||||||||||||
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分類(APG III) | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Ailanthus altissima (Mill.) Swingle (1916)[1] | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ニワウルシ[1] シンジュ[1] | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Tree of Heaven |
名称
編集ニワウルシの和名は、ウルシに似ているが、かぶれないので庭に植えられることから。シンジュは英語名称の Tree of Heaven(ツリー・オブ・ヘヴン:天国の木)[4]、ドイツ語名称の Götterbaum(ゲッターバウム:神の木)の和訳による。このように西欧の言語では、ニワウルシの木の高さや成長の早さを強調する名前が付けられている[4]。中国原産で、中国名は臭椿(別名:樗)とよばれている[1]。臭椿(シュウチン)は、木を折ったり葉を揉むと、独特の悪臭がすることに由来する[4]。
学名の属名は、インドネシアのモルッカ諸島の現地語で「空と同じくらい高い」を意味する ai lantit(アイ・ランティット)に由来する[4]。
分布と生育環境
編集原産は中国北中部。日本には明治初期に渡来した。街路樹などにされ、野生化しており、河川敷などで群生している[2]。アメリカ合衆国には1820年のニューヨーク州にもたらされ、アメリカ合衆国農務省も種子を配布した[4]。1840年代のゴールドラッシュ時には、中国人労働者が薬用として種子をアメリカに持ち込んで植えた[4]。19世紀中頃にはアメリカ合衆国東部でも、手軽に育てられる木として種苗場で人気の樹種となった[4]。
ガ(蛾)の一種であるシンジュサンの食樹としても知られ、シンジュサンでの養蚕目的に栽培されたことも各地に野生化する原因となった。乾燥した土地や荒れ地、空気の汚染などの厳しい環境でも育つほど生命力が強く、容易に群生する[4]。近年では道端などに広く野生化しており、日本同様に導入されたアメリカなどでは問題化している。
農業害虫のシタベニハゴロモ(カメムシ目ビワハゴロモ科)が繁殖することでも知られ、アメリカや日本[5]に帰化して問題となっている。
形態・生態
編集落葉広葉樹の高木で、生長が非常に速く、樹高は10 - 20メートル (m) 、大きなもので25 m以上になる[2][4]。広葉高木としては珍しく幹は真っ直ぐな円柱状で、枝は太い[2][4]。樹皮は白っぽい灰色で皮目があり、滑らかであるが、のちに縦波状の筋ができる[2][4]。一年枝は赤褐色で太く、皮目が多く、枝先に毛が残ることがある[2]。
葉は大型の奇数羽状複葉を互生し、小葉は数十枚つき[4]、生長すると長さ1 m近くなる[2]。
花期は6月[2]。雌雄異株で[4]、夏に緑白色の小花を多数円錐状につける。虫媒花で、花粉を媒介する昆虫を引き寄せるために、雄花はひどい悪臭を放つ[4]。雌株にできる果実(翼果)は秋に琥珀色から褐色に熟し[2]、披針形で中央に種子がある[4]。翼果は回転しながら木から落ち、風に乗って種子が遠くまで運ばれる[4]。枯れて白っぽくカサカサになった翼果が、冬でも枝によく残る[2]。
冬芽は平たい半球状で小さい鱗芽で、芽鱗3 - 4枚に包まれる[2]。枝先の仮頂芽と、枝に互生する側芽はほぼ同じ大きさである[2]。葉痕は大きくて目立つ心形で、維管束痕は葉痕の縁に並ぶ[2]。 アレロパシー効果で他の植物の成長を阻害する。
利用
編集脚注
編集- ^ a b c d 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ailanthus altissima (Mill.) Swingle ニワウルシ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月26日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 116
- ^ a b 三省堂百科辞書編輯部 編「にわうるし」『新修百科辞典』三省堂、1934年、1644頁。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p ドローリ 2019, p. 222.
- ^ あわら市吉崎におけるシタベニハゴロモ Lycorma delicatula (White) の初記録, 福井市自然史博物館研究報告 第60号:67-68(2013)
参考文献
編集- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、116頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- ジョナサン・ドローリ 著、三枝小夜子 訳『世界の樹木をめぐる80の物語』柏書房、2019年12月1日。ISBN 978-4-7601-5190-5。
- 多田多恵子『身近な草木の実とタネハンドブック』文一総合出版、2010年、31頁。ISBN 978-4-8299-1075-7。
関連項目
編集外部リンク
編集- 波田善夫. “ニワウルシ”. 植物雑学事典. 岡山理科大学. 2010年12月20日閲覧。
- 樹げむ舎. “樹木図鑑(ニワウルシ)”. 木のぬくもり・森のぬくもり(樹げむのTree World). 2010年12月20日閲覧。