シロキクラゲ
シロキクラゲ(白木耳[3]、学名: Tremella fuciformis)は、シロキクラゲ科シロキクラゲ属の小型から中型のキノコ(菌類)。主に日本と中国で食用とされている。和名の由来は、色が白くてキクラゲのなかまであることによる[4]。
シロキクラゲ | |||||||||||||||||||||||||||
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![]() シロキクラゲ
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Tremella fuciformis Berk. [1] | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
シロキクラゲ | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Snow fungus |
100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 678 kJ (162 kcal) |
74.5 g | |
デンプン 正確性注意 | 3.6 g |
食物繊維 | 68.7 g |
0.7 g | |
飽和脂肪酸 | 0.10 g |
一価不飽和 | 0.23 g |
多価不飽和 | 0.15 g |
4.9 g | |
ビタミン | |
チアミン (B1) |
(10%) 0.12 mg |
リボフラビン (B2) |
(58%) 0.70 mg |
ナイアシン (B3) |
(15%) 2.2 mg |
パントテン酸 (B5) |
(27%) 1.37 mg |
ビタミンB6 |
(8%) 0.10 mg |
葉酸 (B9) |
(19%) 76 µg |
ビタミンD |
(101%) 15.1 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(2%) 28 mg |
カリウム |
(30%) 1400 mg |
カルシウム |
(24%) 240 mg |
マグネシウム |
(19%) 67 mg |
リン |
(37%) 260 mg |
鉄分 |
(34%) 4.4 mg |
亜鉛 |
(38%) 3.6 mg |
銅 |
(5%) 0.10 mg |
セレン |
(1%) 1 µg |
他の成分 | |
水分 | 14.6 g |
水溶性食物繊維 | 19.3 g |
不溶性食物繊維 | 49.4 g |
ビオチン(B7) | 86.9 µg |
試料: 栽培品。エネルギー: 暫定値 | |
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%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
生態
編集日本の本州以南、東南アジア、北アメリカ、南アメリカ、オーストラリアなど、世界的に温帯から熱帯までの広い地域に分布する[1][5]。
日本では春から秋にかけて、シイ・カシ林やコナラの雑木林などで、広葉樹倒木や枯枝、枯れ木に発生する[3][1]。キクラゲ(木材腐朽菌)とは異なり、他の菌類、特にクロコブタケ(シイタケの害菌)という黒い粒状の子囊菌類に寄生する菌寄生菌であり[6][4]、シイタケやナメコの栽培用ほだ木に発生することもある[3][5]。このキノコは発生している周辺を見れば、黒いクロコブタケがどこかにいる[3]。
菌類は通常、胞子が発芽すると菌糸状になるが、シロキクラゲ類は、つぶつぶした酵母状のものが増えるだけという、珍しい特徴をもっている[4]。
形態
編集子実体はゼリー質(ゼラチン質)でやわらかく、白く半透明[3]。形は不規則で、八重咲きの花びら状やとさか状の塊、あるいは耳状の集団と表現される[7][3][1][5]。通常、大きさは径3 - 10センチメートル (cm) ほど、高さは5 cmほどになる[1][5]。乾くと小さく縮まり、固く軟骨状になる[6][5]。裂片は波状に不規則に切れ込む[1]。裏表の区別はなく、両面に胞子ができる[7]。
子実体を構成する菌糸は一菌糸型で、菌糸隔壁にはクランプを有する[5]。担子器は類球形から倒卵形で、縦方向に十字の隔壁で2 - 4室に仕切られる[1][5]。担子胞子は6 - 9.5 × 5 - 7マイクロメートル (μm) の類球形から倒卵形で平滑、無色、非アミロイド性[1][5]。胞子紋は白色[5]。
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子実体は、八重咲きの花びら状で白く半透明
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枯れ枝に発生した幼菌
食用
編集主に中華料理の食材として栽培される[7]。中国では「銀耳」(ンガッイー)と呼ばれて栽培され、通常は乾燥品として出回っている[4]。市場に出回っている薄い黄白色のかたい皮状の乾燥品は、キクラゲと同様に水で戻し、湯通しして使う[8]。
風味は少しもクセがなく、なめらかば口当たりと独特の歯触りが特徴だが、自身には味がない[1][8]。さっと茹でて、主にスープの浮き実やシロップ漬けにしてデザートなどにされる[1][8]。惣菜の海藻サラダに交じってシロキクラゲが使われることもある[4]。中国では燕の巣のスープのあとに食べたという[1]。一方、中国では薬用にもされており[5]、不老長寿の薬としても珍重されている。
シロキクラゲは、血中や肝臓のコレステロールを低下させる効果が高いとされており、動脈硬化、心臓発作に効果的であると言われており、シロキクラゲを利用した料理として中華料理の銀耳羹(シロキクラゲのスープ)などがある[9]。
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「銀耳」(ンガッイー)として中国で売られているシロキクラゲ
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シロキクラゲを使った中国のデザート
類似種
編集日本には本種の類似種として、Tremella yokohamensis(和名なし)が分布する[5]。
出典
編集- ^ a b c d e f g h i j k 今関六也・大谷吉雄・本郷次雄 編著 2011, p. 531
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ a b c d e f 牛島秀爾 2021, p. 72.
- ^ a b c d e 大作晃一 2015, p. 119.
- ^ a b c d e f g h i j k 前川二太郎 編著 2021, p. 35.
- ^ a b 秋山弘之 2024, p. 82.
- ^ a b c 吹春俊光 2010, p. 101.
- ^ a b c 講談社 編『からだにやさしい旬の食材 野菜の本』講談社、2013年5月13日、215頁。ISBN 978-4-06-218342-0。
- ^ 大谷 幸代 「薬膳認識による新食品コンセプトの提案」 『開発工学』Vol. 15 (1996) No. 2 P 76-81
参考文献
編集- 秋山弘之『知りたい会いたい 色と形ですぐわかる 身近なキノコ図鑑』家の光協会、2024年9月20日。ISBN 978-4-259-56812-2。
- 今関六也・大谷吉雄・本郷次雄 編著『日本のきのこ』(増補改訂新版)山と渓谷社〈山渓カラー名鑑〉、2011年12月25日。ISBN 978-4-635-09044-5。
- 牛島秀爾『道端から奥山まで採って食べて楽しむ菌活 きのこ図鑑』つり人社、2021年11月1日。ISBN 978-4-86447-382-8。
- 大作晃一『きのこの呼び名事典』世界文化社、2015年9月10日。ISBN 978-4-418-15413-5。
- 吹春俊光『おいしいきのこ 毒きのこ』大作晃一(写真)、主婦の友社、2010年9月30日。ISBN 978-4-07-273560-2。
- 前川二太郎 編著『新分類 キノコ図鑑:スタンダード版』北隆館、2021年7月10日。ISBN 978-4-8326-0747-7。