シャーフコップフ
シャーフコップフ(ドイツ語: Schafkopf)は、ミュンヘンなど、主にドイツのバイエルン地方で盛んに競技されている、トランプを使ったトリックテイキングゲームである。スカートの元になったゲームとしても知られる。
ドイツタイプのトランプの4枚のオーバー | |
起源 | ドイツ |
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種類 | トリックテイキングゲーム |
人数 | 4 |
枚数 | 32 |
デッキ | ドイツ |
順番 | 時計回り |
カードランク (最高-最低) | O O O O U U U U A 10 K 9 8 7 A 10 K 9 8 7 (切り札以外) |
プレイ時間 | 20分 |
関連ゲーム | |
スカート |
概要
編集「シャーフコップフ」とは、ドイツ語で「ヒツジの頭」を意味するが、なぜこの名前がついたのかは諸説あり、判明していない[1]。
ブリスコラ・シュナプセンなどと同様に、Aを11点、10を10点とする点数の体系を持つポイントトリックゲームであるが、すべてのオーバー(Qに相当)・ウンター(Jに相当)がもっとも強い切り札として扱われるところに特徴がある。
しばしば金銭を賭けて競技されるが、ドイツの法律上[2]賭博は勝負が偶然によって決まるものであり、シャーフコップフは技術のゲームであるため、金銭を賭けても賭博にあたらない。当然日本で競技する場合は話が別になる。
スカート以外にも各地に同系統のゲームが行われている。ドイツ北部やフランクフルト周辺では、ドッペルコップフというふた組のトランプを使った類似のゲームが盛んである。ラトビアには、切り札以外のスートから7と8を除いた26枚のカードを使ってスカートのように3人で競技するズウォレ(英語版記事)というゲームがあり、ラトビアの国民的ゲームになっている。手札は8枚で、ひとりの攻撃者が残り2人のチームと戦う。攻撃者は残った2枚のカードと手札の不要な2枚を取りかえられ、ひとりで61点以上を獲得しなければならない。シャーフコップフはアメリカの一部の地域(ウィスコンシン州など)にもドイツ系移民によってもたらされ、シープスヘッド(英語版記事)という名前で競技されている。
ルール
編集ドングリ | 葉 | ハート | 鈴 |
多くのローカルルールがあるが、ここでは主に標準的なルールを記述する(外部リンク参照)。
競技人数は4人。トランプはドイツタイプの32枚のカードを用いる。ドイツタイプのトランプでは絵札は王(König)・オーバー(Ober)・ウンター(Unter)からなり、数札は7・8・9・10の4種類、それにAがある。スートはドングリ(Eichel)・葉(Gras)・ハート(Herz)・鈴(Schellen)の4種類からなっている。
シャーフコップフでは、切り札スートは原則としてハートに固定されている。それ以外に、すべてのオーバーとウンターが最高の切り札となる。オーバー同士・ウンター同士では、スートによって強弱が決まる(ドングリ > 葉 > ハート > 鈴)。オーバーとウンターの8枚のことをドイツ語ではHerrenと呼ぶ。切り札は全部で14枚、切り札以外が18枚ある。
オーバー・ウンター以外は A > 10 > 王 > 9 > 8 > 7 の順に強く、強い方がカードの点数も高い。オーバーやウンターは強いけれどもカードの点数はあまり高くないことに注意。すべてのカードの点数を合計すると120点になる。このうちの半分を越える61点以上を取ることがゲームの目的になる。
ランク | オーバー | ウンター | A | 10 | 王 | 9 | 8 | 7 |
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点数 | 3 | 2 | 11 | 10 | 4 | 0 |
最初のディーラーは何らかの方法で決める。ディーラーはプレイごとに時計回りに移動する。各競技者の手札は8枚で、ディーラーは4枚ずつまとめて配る。
宣言
編集各競技者は手札を見て、ディーラーの左隣から順に時計回りに、自分が攻撃側(Spielerpartei、直訳すると「競技者チーム」)になることを宣言するか、パスする。一度パスした競技者はその回のプレイでは二度と宣言できない。だれかが宣言した後に、別の人が自分も宣言したいときには、前の人よりも高い条件をつけなければならない。このとき、最初に宣言した人はパスすることも、別の(2番目に宣言した人以上の)条件で宣言することもできる。高い条件を指定した人の宣言が有効になる。複数の人が同じ条件で宣言した場合は、ディーラーの左隣から時計回りにみて早いほうの競技者の宣言が有効になる。最初の宣言者と2番目の宣言者の間でどちらの宣言が有効かが決定したあと、3番目以降の宣言も同様に進める。
誰も宣言しなかった場合は、流局となり、次のディーラーがカードを配り直す。なお、このときに次回の点数が倍になるなどのローカルルールもある。
宣言するときの条件には以下のものがある。下へいくほど高い条件になる。ローカルルールによってはこれ以外の条件を認めることもある。
- 通常(Rufspiel)
- 攻撃者はあるスート(ハート以外)を指定する。そのスートのAを持っている人がパートナーとなる。攻撃者は指定したカード(A・オーバー・ウンターを除く)を少なくとも1枚は持っていなければならない(したがって4枚のAが手札にある競技者はこの条件で宣言できない)。パートナーは自分がパートナーであることを他人に知らせてはならない。指定されたスートがリードされたら必ずAを出さなければならない。指定されたAは最終トリック以外で捨て札として使ってはならない。リードに関してはとくに制約はない。
- ヴェンツ(Wenz)
- 攻撃者がひとりで他の3人を相手に競技する。切り札としてウンター4枚だけを使用する(ハートおよびオーバーは切り札でない)。スカートのグランに相当。シャーフコップフではヴェンツ(人名に由来する)はウンターの別名。
- ゾーロー(Solo または Farb-Solo)
- 攻撃者がひとりで他の3人を相手に競技する。この場合、攻撃者は切り札スートをハート以外に指定できる。
- ヴェンツ・トゥー(Wenz Tout)
- ヴェンツと同じ条件で全部のトリックを取る。トゥーは「すべて」という意味のフランス語。ただし、ドイツ語版記事によるとバイエルンでは「ドゥー」と濁るという。
- ゾーロー・トゥー(Solo Tout)
- ゾーローと同じ条件で全部のトリックを取る。
- ズィー(Sie)
- 最初の手札が4枚のオーバーと4枚のウンターだったとき、それをさらして宣言する。現実にはまず起こらない。
プレイ
編集プレイは時計回りに進行する。ディーラーの左隣が最初のトリックをリードする。ほかの競技者は、以下のルールに従ってカードを1枚ずつ出していく。
- リードが切り札のときは、切り札を持っていればそれを出す。そうでないときは何を出してもよい。オーバーとウンターはすべて切り札に属することに注意。
- リードが切り札以外のときは、同じスートの(切り札でない)カードを持っていればそれを出す。そうでないときは何を出してもよい。
最強の切り札を出した人か、切り札が出なければリードと同じスートの最強のカードを出した人がトリックの勝者となる。トリックの勝者は場に出たすべてのカードを獲得し、次のトリックをリードする。以上を手札が尽きるまで繰り返す。
特殊ルール
編集プレイ開始時(通常は最初のトリックがリードされたとき)に、防御側はコントラ(Kontra)を宣言することができる。この場合のプレイの点数が倍になる。コントラをかけられた攻撃側は、さらにレ(Re、正式にはRetour)を宣言することができ、この場合は点数は4倍になる。
最初の4枚まで配られたところで、だれかがダブルを宣言すると、その回のプレイは点数が倍になるというローカルルールがある。複数の競技者がダブルを宣言すると、点数は4倍・8倍・16倍になっていく。
得点
編集金銭を賭ける場合、あらかじめ決めておいたレート(例:通常の基本点がユーロ10セント、ゾーローなどの場合は50セント)によって実際に授受する金額が異なる。ここでは通常の基本点を1点として説明する。たとえば「1点を得る」とあったら「相手チームの各競技者がそれぞれ1点に相当する金銭を支払う」という意味である。
トゥーを指定していない場合、攻撃側は61点以上を取ると勝ちになり、攻撃側の各競技者が1点を得る。ヴェンツやゾーローでは攻撃者が5点(上記のとおりレートの決め方により異なる)を得る。
攻撃側が91点以上を獲得することをシュナイダー(Schneider)といい、ボーナス点1点が加わる。攻撃側がすべてのトリックを取ることをシュヴァルツ(Schwarz)といい、ボーナス点は2点になる。
チームが最強のカードからランクの連続した3枚以上(ヴェンツでは2枚以上)の切り札を持っていた場合は1枚につきボーナス1点が支払われる。ヴェンツの場合は最大4点、それ以外の場合は最大14点(パートナーがいなければ8点)になる。
攻撃側がトゥー(ヴェンツ・トゥーまたはゾーロー・トゥー)を指定してそれを成功させた場合、得点は2倍になる。ただし、この場合はシュナイダー・シュヴァルツのボーナス点は発生しない。ズィーでは得点が4倍になる。
攻撃側が60点以下しか取れない場合、またはトゥーを指定して失敗した場合は、成功したときに攻撃側が得られるのと同じ点数を防御側が得る。攻撃側が30点以下の場合はシュナイダー・攻撃側が1トリックも得られない場合はシュヴァルツとなり、上記と同じボーナス点を防御側が得る。
コントラが指定されている場合、以上の点数は2倍になる(レでは4倍)。
なお、トーナメントルールでは上記とは得られる点数が異なる。
脚注
編集- ^ ドイツ語版記事では、「点数を記録するためにチョークで書いた記号がヒツジの頭に似ていた」という説と、「本来はシャフコップフで、シャフ(Schaff)とはバイエルン方言で樽を意味し、樽の蓋(=頭)の上で競技したから」という説を挙げている
- ^ § 284 Strafgesetzbuch
関連項目
編集外部リンク
編集- Schafkopfschule ("Regeln" のところにドイツ語と英語の正式ルールあり)