サーマ・ヴェーダ
概要
編集祭式において旋律にのせて歌われる讃歌(sāman)を収録したもの。 歌詠を司るウドガートリ祭官(udgātṛ)によって護持されてきた。
讃歌の多くは『リグ・ヴェーダ』に、一部は他のヴェーダ文献に材を取っており、オリジナルのものは少ない。
伝説によれば、『サーマ・ヴェーダ』はかつて1000の流派(シャーカー)に分かれていたというが[1]:163注2、現在はカウトゥマ(Kauthuma)、ラーナーヤニーヤ(Rāṇāyanīya)、ジャイミニーヤ(Jaiminīya)3派のものが文献として残っている[2]。3派のスタンザの数は、それぞれ585、1225、58あるが、重複部分もある。
『サーマ・ヴェーダ』の本文であるサンヒターは、アールチカ(ārcika)とウッタラールチカ(uttarārcika)の2部に分かれ、前者は韻律と対象となる神によって配列されているが、後者は供犠の種類によって配列されている[1]:166。
サーマ・ヴェーダにとって重要なのは讃歌の歌詞よりも旋律(サーマン)であるが[1]:164-165、アールチカおよびウッタラールチカのいずれも音楽は記録されておらず、歌詞のみが記されている[1]:166。旋律を記したものとしてはガーナ(gāna)が附属し、これはより時代の新しいものだが[1]:166-167、インド音楽の歴史を知る上で重要な資料になっている[1]:169。アールチカに附属するガーナにはグラーマゲーヤガーナとアラニヤガーナがあり、ウッタラールチカに附属するガーナにウハガーナとウヒヤガーナがある[1]:167。
脚注
編集- ^ a b c d e f g Winternitz, Moriz (1927). A History of Indian Literature. 1. translated by S. Ketkar. University of Calcutta
- ^ Ralph T. H. Griffith (1893). The Hymns of the Samaveda. Benares: E.J. Lazarus and co.. p. iv