サマリア語
サマリア語(サマリアご、Samaritan Hebrew language)とは、サマリア人が、サマリア五書を朗読する際に使用する 聖書ヘブライ語から発展した言語。ヘブライ語の一種と見なされることが多い。
サマリア語 | |
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話される国 | イスラエル |
地域 | 主にサマリア地方及びホロン市 |
話者数 | 1,000人以下(宗教行事でのみ使用される) |
言語系統 | |
表記体系 | サマリア文字 |
言語コード | |
ISO 639-3 |
smp |
書記体系
編集現在、ヘブライ語で使用されているヘブライ文字は、アラム文字から発展したものだが、サマリア語では、それより古くに使用されていた古ヘブライ文字(Paleo – Hebrew alphabet)から直接発展した サマリア文字(Samaritan alphabet)を用いる(古ヘブライ文字自体はフェニキア文字の一種である)。
発音
編集サマリア語の発音は、他のヘブライ語とはいくつかの点で差異が大きい。咽頭音のヘー及びヘットの音は母音に変化するか、消滅している。 ベートとヴァヴは共に 'b' で発音され(字母の名称はそれぞれ Bît および Ba である)、ヴァヴ倒置法(聖書ヘブライ語で、文頭にヴァヴが置かれた場合、動詞の時制(完了態と未完了態)が逆になる現象。この場合、完了態の動詞が表す時制は未完了態になり、未完了態の動詞の時制は完了態を表す)の時だけ 'u' と発音される。シンの文字の音値は、ヘブライ語と異なり 'sh' 1つのみである。ダゲッシュの付いた文字は長子音として発音される。アクセントは通常最終から2番目の音節に置かれる。
文法
編集代名詞
編集人称代名詞
編集私 | anáki |
あなた(男性単数) | átta |
あなた(女性単数) | átti (語尾に 'ヨッド' の文字が付加される) |
彼 | û |
彼女 | î |
我々 | anánu |
あなたがた(男性複数) | attímma |
あなたがた(女性複数) | éttên |
彼ら(男性) | ímma |
彼女ら(女性) | ínna |
指示代名詞
編集これ: 男性形 ze, 女性形 zéot, 複数 ílla
あれ: alaz(語頭に 'ヘー' の文字が付く)
関係代名詞
編集éšar(人、物とも共通)
疑問代名詞
編集誰 = mi 何 = ma
名詞
編集名詞に接尾辞が付く場合、最終音節の母音 ê は î に、ô は û に変化する。例:bôr "穴(単数)" > búrôt "同"(複数形を表す接尾辞が付いた形)。また、af "怒り" > éppa "彼女の怒り"(所有を表す人称接尾辞が付いた形)。
ミルエル形の名詞(ヘブライ語の名詞の分類で、最後から2番目の母音にアクセントのあるもの。母音記号セゴール(/e/)が最終母音になっているものが多いため、セゴリームともいう)の変化は、ヘブライ語と同様である。例:beţen "腹" > báţnek "あなたの腹", kesef "銀" > kesfánu "我々の銀", dérek "道" > dirkakimma "あなたがた(男性)の道" ただし áreş "土地" > árşak "あなたの土地"
冠詞
編集定冠詞は、a- または e- で、定冠詞の付いた語の最初の子音は、咽頭音や声門破裂音でなければ長子音になる。サマリア文字では、'ヘー'(ヘブライ文字の 'ה' に相当)で表記されるが、'h' の音は発音されない。例: énnar / ánnar = "(その)若者the youth"; ellêm = "(その)肉"; a'émur = "(その)ロバ"
数
編集複数形の語尾は -êm (男性名詞)、 -ôt (女性名詞)となる。
- eyyamêm "その日々", elamôt "夢(複数)"
双数形は -ayem (šenatayem "2年")で表される場合もあるが、通常は複数形と同じ語尾で表される(yédêm "両手")。
動詞
編集動詞の主語の人称を表す接辞は以下のとおり:
完了態 | 未完了態 | |
私が | -ti | e- |
あなた(男性)が | -ta | ti- |
あなた(女性)が | -ti | ? |
彼が | - | yi- |
彼女が | -a | ti- |
我々が | ? | ne- |
あなたがたが(男性複数) | -tímma | te- -un |
あなたがたが(女性複数) | -tên | ? |
彼らが | -u | yi- -u |
彼女らが | ? | ti- -inna |
その他
編集前置詞
編集"~で・に(場所・時・手段)"を意味する前置詞は以下のとおり:
- b- 母音(または、咽頭音の子音が母音に変化したもの)で始まる語の前
- b-érbi = "剣で"; b-íštu "彼の妻と共に"
- ba- 両唇音で始まる語の前
- bá-bêt "家で", ba-mádbar "荒野で"
- ev- その他の子音で始まる語の前
- ev-lila "夜に", ev-dévar "その事で"
- ba-/be- 定冠詞付きの語の前
- barrášet "朝に"; béyyôm "その日に"
"~のように、~として"を意味する前置詞は以下のとおり:
- ka 定冠詞のない語の前: ka-demútu "彼の姿のように(彼とそっくりで)"
- ke 定冠詞付きの語の前: ké-yyôm "その日のように"
"~に(人・場所)、~のために"を意味する前置詞は以下のとおり:
- l- 母音で始まる語の前: l-ávi "私の父に", l-évad "その奴隷に"
- el-, al- 子音で始まる語の前: al-béni "(~の)子供たちに"
- le- 子音 /l/ で始まる語の前: le-léket "行くために"
- l- 定冠詞付きの語の前: lammúad "定められた時に"; la-şé'on "その群れに"
その他の前置詞:
- al: ~に向かって
- elfáni: ~の前に
- bêd-u: 彼のため
- elqérôt: ~に反して
- balêd-i: 私以外は
接続詞
編集"~と、そして(and)" を表す接続詞:
- w- 子音で始まる語の前: wal-Šárra "そしてサラに"
- u- 母音で始まる語の前: u-yeššeg "そして彼は追いついた"
その他
- u: または
- em: もし~ならば、~する時
- avel: しかし
副詞
編集- la: ~ではない(否定)
- kâ: ~もまた
- afu: ~もまた
- ín-ak: あなたは~でない
- ífa (ípa): どこに?
- méti: いつ?
- fâ: ここに
- šémma: そこに
- mittét: 下に
参考文献
編集- J. Rosenberg, Lehrbuch der samaritanischen Sprache und Literatur, A. Hartleben's Verlag: Wien, Pest, Leipzig.
- Ben-Hayyim, Ze'ev, and Tal, Abraham, A Grammar of Samaritan Hebrew Based on the Recitation of the Law in Comparison with the Tiberian and Other Jewish Traditions: 2000 ISBN 1-57506-047-7