サクステッド(Thaxted)は、イギリスの音楽家グスターヴ・ホルストの組曲『惑星』の「木星‐快楽をもたらすもの」の第4主題中間部を基にした楽曲、および楽曲群の総称である。本人によって管弦楽付きコラールに改作されたのち、そのメロディが広く知られて、おびただしい数の歌詞が付けられるようになった。多くが英語の歌詞の賛美歌である。名前は作者が暮らした街の名前にちなむ。

ホルストが1917年から1925年まで暮らしたサクステッドの「牧師館(The Manse)」

概要

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「木星-快楽をもたらすもの」の演奏時間はおよそ7分30秒から8分であり、演奏開始後3分前後で第4主題が現れ1分30秒から2分程度ほど演奏される。全体の4分の1しか占めない部分であるが、この部分を独立させた作品が制作された。

1918年1921年説も)にイギリスの外交官セシル・スプリング・ライスによる愛国的な歌詞を付した『我は汝に誓う、我が祖国よ』と題された管弦楽付きコラールが最初である。当時は第一次世界大戦のさなかであり「愛国心の高揚」「戦没者の追悼」への雰囲気が国内にあった。スプリング・ライスの歌詞もスプリング家のモットー欽定訳聖書のを文章を基に彼が1908年ごろに書いた詩を、アメリカ合衆国駐箚イギリス大使だった1912年ごろに前述した当時の時代背景をもとに推敲した結果できたものである。本作はスプリング・ライスの依頼によってホルスト本人によって歌詞に合うように改作されたもので、版元のコーエン出版の要請で管弦楽付きコラールの形式に編曲された。作品番号は付されていないもののH番号148がふられておりホルスト自作の「管弦楽付きコラール」の一つに数えられている[1][2]。1926年にコーエン出版から刊行され、第一次世界大戦休戦協定記念式典で演奏されて評判となった。コーエン出版はヒューバート・パリー作曲、歌詞はウィリアム・ブレイクの『ミルトン』の序文より引用、エドワード・エルガー編曲の管弦楽付きコラール『エルサレム』も刊行していた。

1926年ヴィクトリア朝のころに作曲された英語の讃美歌をまとめた賛美歌集『賛美歌集(Songs of Praise)』が刊行されたが、同曲集には『我は汝に誓う、我が祖国よ』が収められた。このとき監修者の一人でホルストの友人でもある作曲家のレイフ・ヴォーン・ウィリアムズが『我は汝に誓う、我が祖国よ』に変えて、作者の暮らした街に因んで『サクステッド』と命名した。これが『サクステッド』と呼ばれるようになった初出である[3]

以降、ホルストが組曲『惑星』の「木星‐快楽をもたらすもの」の第4主題を基にセシル・スプリング・ライスの作った歌詞に適合するように制作したコラール『我は汝に誓う、我が祖国よ』の旋律を、単に『サクステッド』と呼ぶようになり、この「抽象化」によって作者の意図から離れ、メロディだけが独り歩きする形になり、他の歌詞がつけられたり編曲が加えられるようになり夥しい数の楽曲が出ることになった。原曲とは転調をしたもの、原曲は4分の3拍子だが4分の4拍子にしたものなどメロディにも改作が加えられたものもある(後述の『ワールド・イン・ユニオン』は4分4拍子に改作されている)。

1991年ラグビーワールドカップ1991年イングランド大会においてチャーリー・スカーベックが歌詞をつけた『ワールド・イン・ユニオン』がテーマ曲として発表され、以来ラグビー・ワールドカップのテーマ曲として歌い継がれている。

そのほかの使用例

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そのほかの使用例は以下のものがある。

世俗の音楽

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世俗の音楽として以下のものがある。

[17]

文学等での使用

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  • ドミニク・グリーンによって書かれたシャーロック・ホームズの模倣作『失われた世界での冒険』,[18]で「サクステッド」はプロットの重要な要素をなす。しかし物語の舞台は1918年で本作が「サクステッド」という題名での刊行する以前である。
  • ラグビーワールドカップ2015では「1823年ラグビー校でラグビーフットボールが発祥した故事」のショートフィルムが制作され開会式で上映されたが、『ワールド・イン・ユニオン』をテーマ曲として使用している関係で、作中ラグビー校のチャペルから『我は汝に誓う、我が祖国よ』が聞こえる演出なされているが、「サクステッド」誕生から100年近く前のことであり時代考証としては誤りである[19]

商業利用

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注釈

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  1. ^ ホルストの公式ウェブサイト(英語)
  2. ^ Holst, Imogen, A Thematic Catalogue of Gustav Holst's Music. Faber 1974, page 145
  3. ^ Vaughan Williams & Shaw, Songs of Praise, 1926, Oxford University Press
  4. ^ O Merciful Redeemer”. 2014年6月26日閲覧。
  5. ^ We Pledge To One Another”. 2010年4月24日閲覧。
  6. ^ O God Beyond All Praising”. 2008年7月1日閲覧。
  7. ^ O Spirit All-Embracing”. GIA Publications. 2009年5月28日閲覧。
  8. ^ As the Bread of Life Is Broken”. 2015年8月12日閲覧。
  9. ^ We Praise You and Acknowledge You, O God”. Starke, Stephen P.. 2011年3月30日閲覧。
  10. ^ Resources for Study, Reflection and Prayer”. Anglican Church of Canada. 2009年4月2日閲覧。
  11. ^ Three Days”. OCP. 2009年2月16日閲覧。
  12. ^ From Penola's Plains”. Marist Melbourne. 2010年5月23日閲覧。
  13. ^ Conference Summary for the 175th Semiannual General Conference”. 2015年9月19日閲覧。
  14. ^ Shawnee Press, For the Splendor of Creation”. 2010年5月27日閲覧。
  15. ^ St Patrick's College, Sutherland 
  16. ^ Article in Forward In Christ”. 2014年5月20日閲覧。
  17. ^ Lawrence University: College Songs of Past and Present”. 2008年7月1日閲覧。
  18. ^ originally published 2004 online in BBCi Cult Sherlock Holmes Magazine, and reprinted in The Improbable Adventures of Sherlock Holmes, ed. John Joseph Adams. San Francisco: Night Shade Books (ISBN 978-1597801607), 2009.
  19. ^ Rugby World Cup 2015 Opening Ceremony 18-09-2015
  20. ^ 駅メロ界3大巨匠による「ヒット曲駅メロアレンジ」が3月より携帯配信中。”. スイッチオフィシャルサイト. スイッチ (2008年2月26日). 2012年10月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月2日閲覧。
  21. ^ スイッチ「駅メロ ベストセレクション2 ~発車メロディ編~オリジナル音源」(SWIT-1009)
  22. ^ カテゴリから探す”. 鉄道モバイル. スイッチ. 2024年7月2日閲覧。
  23. ^ カテゴリから探す”. 鉄道モバイル. スイッチ. 2024年7月2日閲覧。
  24. ^ 「横浜音祭り2019」開幕にあわせみなとみらい駅の発車ベルが特別仕様に!』(PDF)(プレスリリース)横浜高速鉄道、2019年8月29日https://www.mm21railway.co.jp/info/news/uploads/20190829otomatsuri.pdf2024年7月2日閲覧 
  25. ^ みなとみらい駅の発車メロディが 「横浜音祭り2022」特別仕様に!』(PDF)(プレスリリース)横浜高速鉄道・横浜アーツフェスティバル実行委員会、2022年9月14日https://www.mm21railway.co.jp/info/news/uploads/press%20release_20220914.pdf2024年7月2日閲覧 

関連項目

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外部リンク

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