コプト・エパクト数字(コプト・エパクトすうじ、英語: Coptic Epact Numbers)は、Unicodeの173個目のブロック

コプト・エパクト数字
Coptic Epact Numbers
範囲 U+102E0..U+102FF
(32 個の符号位置)
追加多言語面
用字 Common
Inherited
割当済 28 個の符号位置
未使用 4 個の保留
Unicodeのバージョン履歴
7.0 28 (+28)
公式ページ
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解説

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10世紀ごろの、アラビア文字で書かれたコプト語による、会計文書や天文学のテキストなどの一部の写本において用いられた[1]数字体系を収録している。

コプト語では多くの場合コプト文字そのものをそのまま数字として扱ったコプト数字(ギリシャ数字キリル数字などと同様のシステム)が一般的に使用されていたが、伝統的なコプト数字は10世紀当時コプト語の当時の主要な方言であるボハイラ方言英語版でしか使われておらず、ファイユーム方言ではごく一部のみでしか使われておらず、サイード方言では全く使われていなかったため相互理解が困難であったことから、行政手続きにおいて数字を表現する場合に単語として記述しなければならなかった。単語として記述する煩雑さを解決するため、当時のアラビア文字で書かれたコプト語を用いるコプト・アラビアコミュニティにより、アラビア文字で用いられていた数字(アラビア・インド数字)の筆記体にあたるルミ数字記号をもとにしてこの数字体系が導入された。本数字体系もコプト語コミュニティにおいてはコプト数字に対する筆記体として扱われている[1]

元々単に「コプト数字(Coptic Numbers)」というブロック名で提案がなされていた[2]が、本来の古典的なコプト数字との区別ができなくなるため、ギリシャ語の ἐπακτός「輸入された」という単語に由来する「エパクト(Epact)」という本数字体系の別名を加えて現在のブロック名となった[1][3]

0を表す数字はなく、ローマ数字などのようにそれぞれの位に独立して数字が割り当てられている。1の位、10の位、100の位にそれぞれ単独の数字が9つずつ割り当てられており、1,000以上の数値は数値を1,000倍することを表すダイアクリティカルマークU+102E0 𐋠 COPTIC EPACT THOUSANDS MARKを下に付けることによって表現する。1,000,000以上の数値についてはこの記号を重複して付けることによって表現される。書字方向ラテン文字やコプト文字などと同様に左から右に横書き(左横書き)される。しばしば、数字であることを明示するため、数値全体に蛇行した上線が付けられ、これはUnicode上ではアラビア文字ブロックに存在するU+0605 ؅ARABIC NUMBER MARK ABOVEが用いられる[1]

当初はルミ数字記号と同一の文字体系ではないかという疑念があり、重複した符号化を懸念して追加に反対の声もあった[4]が、各数字の字形がルミ数字記号とは大きく異なる[5]ため、現在は別の文字体系として独立したブロックに符号化されている。

Unicodeのバージョン7.0において初めて追加された。

収録文字

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コード 文字 文字名(英語) 数価 用例・説明
記号
U+102E0 𐋠 COPTIC EPACT THOUSANDS MARK 数字の下に付き、数価を1,000倍する文字幅を持たない結合記号。

1,000,000倍する場合は重複して付けられる[1]

数字
U+102E1 𐋡 COPTIC EPACT DIGIT ONE 1
U+102E2 𐋢 COPTIC EPACT DIGIT TWO 2
U+102E3 𐋣 COPTIC EPACT DIGIT THREE 3
U+102E4 𐋤 COPTIC EPACT DIGIT FOUR 4
U+102E5 𐋥 COPTIC EPACT DIGIT FIVE 5
U+102E6 𐋦 COPTIC EPACT DIGIT SIX 6
U+102E7 𐋧 COPTIC EPACT DIGIT SEVEN 7
U+102E8 𐋨 COPTIC EPACT DIGIT EIGHT 8
U+102E9 𐋩 COPTIC EPACT DIGIT NINE 9
数値
U+102EA 𐋪 COPTIC EPACT NUMBER TEN 10
U+102EB 𐋫 COPTIC EPACT NUMBER TWENTY 20
U+102EC 𐋬 COPTIC EPACT NUMBER THIRTY 30
U+102ED 𐋭 COPTIC EPACT NUMBER FORTY 40
U+102EE 𐋮 COPTIC EPACT NUMBER FIFTY 50
U+102EF 𐋯 COPTIC EPACT NUMBER SIXTY 60
U+102F0 𐋰 COPTIC EPACT NUMBER SEVENTY 70
U+102F1 𐋱 COPTIC EPACT NUMBER EIGHTY 80
U+102F2 𐋲 COPTIC EPACT NUMBER NINETY 90
U+102F3 𐋳 COPTIC EPACT NUMBER ONE HUNDRED 100
U+102F4 𐋴 COPTIC EPACT NUMBER TWO HUNDRED 200
U+102F5 𐋵 COPTIC EPACT NUMBER THREE HUNDRED 300
U+102F6 𐋶 COPTIC EPACT NUMBER FOUR HUNDRED 400
U+102F7 𐋷 COPTIC EPACT NUMBER FIVE HUNDRED 500
U+102F8 𐋸 COPTIC EPACT NUMBER SIX HUNDRED 600
U+102F9 𐋹 COPTIC EPACT NUMBER SEVEN HUNDRED 700
U+102FA 𐋺 COPTIC EPACT NUMBER EIGHT HUNDRED 800
U+102FB 𐋻 COPTIC EPACT NUMBER NINE HUNDRED 900

小分類

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このブロックの小分類は「記号」(Sign)、「数字」(Digits)、「数値」(Numbers)の3つとなっている[6]

記号(Sign

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この小分類には他の数字について数値を1000倍するための、文字幅を持たない結合記号1つのみが収録されている。

数字(Digits

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この小分類には基本的な1の位の数字が収録されている。

数値(Numbers

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この小分類には10の位以上の数字が収録されている。Unicode上では1の位の数値を表すdigitと10の位以上の数値を一つの文字であらわしたnumberを区別している。

文字コード

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コプト・エパクト数字(Coptic Epact Numbers)[1]
Official Unicode Consortium code chart (PDF)
  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
U+102Ex 𐋠 𐋡 𐋢 𐋣 𐋤 𐋥 𐋦 𐋧 𐋨 𐋩 𐋪 𐋫 𐋬 𐋭 𐋮 𐋯
U+102Fx 𐋰 𐋱 𐋲 𐋳 𐋴 𐋵 𐋶 𐋷 𐋸 𐋹 𐋺 𐋻
注釈
1.^バージョン16.0時点


履歴

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以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。

バージョン コードポイント[a] 文字数 L2 ID ドキュメント
7.0 U+102E0..102FB 28 L2/10-114 Anshuman Pandey (12 April 2010), Towards an Encoding for Coptic Numbers in the UCS (WG2 N3786) (英語)
L2/10-206 Anshuman Pandey (21 June 2010), Final Proposal to Encode Coptic Numbers (revised; WG2 N3843R) (英語)
L2/10-333 Michael Everson (8 September 2010), Towards the encoding of a complete set of Coptic numbers (WG2 N3886) (英語)
L2/10-421 Anshuman Pandey (26 October 2010), Proposal to Rename the Block Name for Coptic Numbers (WG2 N3958) (英語)
L2/11-035 Azzeddine Lazrek (1 February 2011), Opposition about encode Coptic Epact numeral system (英語)
L2/11-062 Anshuman Pandey (8 February 2011), Final Proposal to Encode Coptic Epact Numbers (英語)
L2/11-065 Deborah Anderson (9 February 2011), Comparison of Coptic Epact vs. Rumi digits (英語)
  1. ^ 提案されたコードポイントと文字の名前は、最終決定と異なる場合がある。

出典

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  1. ^ a b c d e SEI / Anshuman Pandey (2011年2月8日). “Final Proposal to Encode Coptic Epact Numbers” (英語). Unicode. 2025年3月26日閲覧。
  2. ^ Anshuman Pandey (2010年4月12日). “Towards an Encoding for Coptic Numbers in the UCS (WG2 N3786)” (英語). Unicode. 2025年3月26日閲覧。
  3. ^ Anshuman Pandey (2010年10月26日). “Proposal to Rename the Block Name for Coptic Numbers (WG2 N3958)” (英語). Unicode. 2025年3月26日閲覧。
  4. ^ Azzeddine Lazrek (2011年2月1日). “Opposition about encode Coptic Epact numeral system” (英語). Unicode. 2025年3月26日閲覧。
  5. ^ Deborah Anderson (2011年2月9日). “Comparison of Coptic Epact vs. Rumi digits” (英語). Unicode. 2025年3月26日閲覧。
  6. ^ "The Unicode Standard, Version 15.1 - U102E0.pdf" (PDF). The Unicode Standard (英語). 2025年3月26日閲覧

関連項目

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