イワカガミ
イワカガミ(岩鏡、学名:Schizocodon soldanelloides)は、イワウメ科イワカガミ属の常緑の多年草[3][4][5]。高山植物の一種ではあるが、実質的には低山帯から高山帯まで幅広く分布する[6]。
イワカガミ | |||||||||||||||||||||||||||
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福島県会津地方 2009年6月
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. soldanelloides[1] | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
イワカガミ(岩鏡)[3][4] |
特徴
編集茎は細く、地を這って、茎の先に葉が束生する。葉は厚く光沢があり、葉身は円形で、長さ幅ともに3-6cmになり、先は円形または広三角形で頂部は短くとがり、縁はとがった鋸歯があり、基部はわずかに心形となり、長い葉柄がある[3][4][5]。葉の基部の側脈は1か所に集まる[7]。
花期は4-7月。束生した葉の中央から高さ10-20cmになる花茎を伸ばし、先端に3-10個の花を総状花序につける。花は淡紅色。萼片は5個で、裂片は長楕円形。花冠は径1-1.5cmになり、漏斗状で5裂し、裂片の縁はさらに裂ける。雄蕊5個と短い仮雄蕊5個がある。雌蕊は1個。果実は径3-4mmになる球形の蒴果となる[3][4][5]。
分布と生育環境
編集名前の由来
編集和名イワカガミは、「岩鏡」の意で、岩場に多く生え、葉に光沢があることから「鏡」に見立てたもの[3][5]。
種小名 soldanelloides は、「サクラソウ科の Soldanella属に似た」の意味で、Soldanella は、イタリア語の soldo(小さいコイン)に葉が似ることの意味[3]。なお、ヨーロッパ原産で、日本で栽培種として流通しているサクラソウ科の Soldanella alpine L.[8]には、「イワカガミダマシ」の和名がついている[8]。
下位分類
編集生育地によって植物体の大きさに変異があり、コイワカガミ、イワカガミ、オオイワカガミという名があてられているが、それらの中間型が存在し、変異も連続的で、類型分類では区別できないという見解がある。DNA集団遺伝構造解析では、それらについてまったく違いが認められないという[5]が、YListで「標準」とされているものについて、次に示す。
- シロバナイワカガミ Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. soldanelloides f. leucanthus H.Hara[9] - 基本種の白花品種。
- コイワカガミ Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. soldanelloides f. alpinus Maxim.[10] - 高山に生え、全体に矮小化しており、葉の鋸歯があまりとがらないもの[5]。
- オオイワカガミ Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. magnus (Makino) H.Hara[11] - 葉が大型で円形、長さ幅ともに8-12cmになり、縁に多数のとがった鋸歯があるもの。北海道南部から本州の東北地方、中部地方の日本海側に分布し、多雪地帯のブナ林の林床に群落をつくる[5]。
- シロバナオオイワカガミ Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. magnus (Makino) H.Hara f. niveus H.Hara[12] - 和名、学名からするとオオイワカガミの白花品種であるが、YListのノートでは、本品種のタイプ標本の採集地が日本海側ではない山梨県の青木ヶ原であることから、「これはヤマイワカガミ系では?」の記載がある[12]。
- ナガバイワカガミ Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. longifolius (T.Yamaz.) T.Shimizu[13]
- シロバナナガバイワカガミ Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. longifolius (T.Yamaz.) T.Shimizu f. albiflorus T.Shimizu[14]
- ヒメコイワカガミ Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. minimus (Makino) H.Hara[15] - 屋久島の上部に生え、葉がごく小さく、縁の鋸歯が少ないもの。これは最初、牧野富太郎(1912)によってイワカガミの品種とされ、その後、山崎敬(1968)によってヒメイワカガミの変種とされるなど、分類が混乱していた。現在はDNA集団遺伝構造解析で、イワカガミの変種とされる[5]。
ギャラリー
編集脚注
編集- ^ イワカガミ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ イワカガミ(シノニム) 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e f g 『新牧野日本植物圖鑑』p.524, p.1347
- ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.376
- ^ a b c d e f g h i 『改訂新版 日本の野生植物 4』pp.213-214
- ^ 『山溪ハンディ図鑑8 高山に咲く花』pp.181-182
- ^ 山崎, 敬 (1990). “イワカガミ・イワウチワ属の追記”. 植物研究雑誌 65 (10): 311. doi:10.51033/jjapbot.65_10_8522.
- ^ a b イワカガミダマシ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ シロバナイワカガミ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ コイワカガミ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ オオイワカガミ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ a b シロバナオオイワカガミ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ ナガバイワカガミ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ シロバナナガバイワカガミ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ ヒメコイワカガミ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
参考文献
編集- 清水建美、木原浩『山溪ハンディ図鑑8 高山に咲く花』、2002年、山と溪谷社
- 牧野富太郎原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男編『新牧野日本植物圖鑑』、2008年、北隆館
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 4』、2017年、平凡社
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- 『植物研究雑誌』The Journal of Japanese Botany