クール司教領 (ドイツ語: Hochstift Chur, Fürstbistum Chur, Bistum Chur) は、クール(現スイス領)に存在した司教領神聖ローマ帝国直属身分英語版であり、ゴッテスハウス同盟の盟主でもあった[1]。クール司教領はクール近郊からエンガディン地方まで、またヴィンシュガウ渓谷英語版までを支配していた[2]

クール司教領

Bistum Chur (de)
Chapitel catedral da Cuira (rm)
Principato vescovile di Coira (it)
1170年–1803年
of クール
国章
首都 クール
宗教
カトリック教会
統治体制 司教領
司教  
時代 中世
• 確立
1170年
• 帝国代表者会議主要決議
による世俗化
1803年
先行
継承
[[ラエティア・クリエンシス英語版]]
ゴッテスハウス同盟

歴史上の国家であるクール司教領は、現在まで続いているクール司教区英語版と区別する必要がある。

スイスにおけるクール司教領(黄色)
現在のクール司教区英語版
クール市街を見下ろすクール司教庁。左側はクール大聖堂英語版

歴史

編集

クール司教区は451年に創設され、アシニオ(Asinio)が初代司教となった[3]。1170年、神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世が司教区を諸侯としての司教領に格上げした[4]

1621年10月、バルディロン縦隊長という者が率いる8000人のオーストリア軍が、クール司教領とゴッテスハウス同盟を攻撃し、同年11月22日にクールを占領した。その後の和平交渉により、クール司教領は下エンガディン英語版をオーストリアに割譲し、オーストリア軍のクール駐屯と司教領内の道路使用を認めた[5]。1624年10月27日、Coeuvres侯率いるフランス・スイス軍8000人がクールのオーストリア軍守備隊を襲撃した。オーストリアは春に守備隊の大部分を引き上げていたため、フランス軍は瞬く間に穴だらけの防衛体制を突破し、クールとその周辺を制圧した[6]。15世紀から16世紀の原初同盟のアルプス越え英語版の時代には、クール司教領はヴァルテッリーナボルミオキアヴェンナを支配下に収めていた[7]

クール司教叙任権

編集

聖界諸侯であるため、元首たる司教は本来ローマ教皇に任命されるものであった。しかしクール司教は、少なくとも1440年の例では、新しい司教が就任する際に教皇エウゲニウス4世ではなくマインツ選帝侯が承認を行っている[8]。1441年には、コンスタンス司教ハインリヒ・フォン・ヒョーヴェンがクール司教を兼ねた[9]。1447年1月12日、エウゲニウス4世は神聖ローマ皇帝フリードリヒ3世への教皇勅書で、皇帝がクール司教の叙任権を終身保有することを認めた[10]

司教の一覧

編集
  • アシニオ: 451年 – ?[3]
  • ウァレンティニアヌス: ? – 548年[11]
  • アダルグロット2世: 1150年 – 1160年10月[12]
  • ハインリヒ2世: 1180年 – 1193年[13]
  • アルノルト2世: 1210年 – 1221年12月24日[14][15]
  • ルドルフ2世: 1223年 – 1226年[15]
  • ベルトルト: 1226年 – 1233年8月25日[16][15]
  • ウルリッヒ4世: 1233年 – 1237年[15]
  • フォルツナント: 1238年 – 1251年[15]
  • ハインリヒ・フォン・ヒョーヴェン: 1441年 – ?[9]

脚注

編集
  1. ^ Oechsli 2013, p. 64.
  2. ^ Oechsli 2013, p. 11.
  3. ^ a b Historical Dictionary of Switzerland.
  4. ^ Büsching 1762, p. 255.
  5. ^ Oechsli 2013, p. 190.
  6. ^ Oechsli 2013, p. 192.
  7. ^ Oechsli 2013, p. 40.
  8. ^ Stieber 1978, p. 171.
  9. ^ a b Stieber 1978, p. 478.
  10. ^ Stieber 1978, pp. 282–283.
  11. ^ Dopsch 2013, p. 254.
  12. ^ Walsh 2007, p. 8.
  13. ^ Napran 2005, p. 89.
  14. ^ Pixton 1995, p. 303.
  15. ^ a b c d e Pixton 1995, p. 195.
  16. ^ Pixton 1995, p. 403.

参考文献

編集
  • Büsching, Anton Friedrich (1762). A New System of Geography (英語). Oxford. ISBN 9781371415914
  • Dopsch, Alfons (2013). The Economic and Social Foundations of European Civilization (英語). London: Routledge. ISBN 9781135032388
  • Napran, Laura (2005). Chronicle of Hainaut (英語). Woodbridge: The Boydell Press. ISBN 9781843831204
  • Oechsli, Wilhelm (2013). History of Switzerland, 1499-1914 (英語). Cambridge: Cambridge University Press. ISBN 9781107629332
  • Pixton, Paul B. (1995). The German Episcopacy and the Implementation of the Decrees of the Fourth Lateran Council: 1216-1245 : Watchmen on the Tower (英語). Leiden: Brill. ISBN 9789004102620
  • Stieber, Joachim W. (1978). Pope Eugenius IV, The Council of Basel and the Secular and Ecclesiastical Authorities in the Empire: the Conflict Over Supreme Authority and Power in the Church (英語). Leiden: Brill. ISBN 9789004052406
  • Walsh, Michael (2007). A New Dictionary of Saints: East and West (英語). Collegeville: Liturgical Press. ISBN 9780814631867

外部リンク

編集