クロヅル(黒蔓[5]・昆明山海棠[6]学名: Tripterygium regelii)とはニシキギ科クロヅル属落葉つる性木本。山地に生える。雌雄同株。別名、ベニヅルサイゴククロヅル[1]中国名は、東北雷公藤[1]

クロヅル
福島県会津地方 2008年8月
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ニシキギ目 Celastrales
: ニシキギ科 Celastraceae
: クロヅル属 Tripterygium
: クロヅル T. regelii
学名
Tripterygium regelii Sprague et Takeda (1912)[1]
シノニム
和名
クロヅル(黒蔓)

特徴

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幹の直径は15ミリメートル (mm) になり、地表の他の植物を這い、ときに高木に巻きつき、這い上がることもある。若いつる(今年枝)は黄褐色または赤褐色[5]、前年枝は濃紫褐色で、より古いはしだいに灰色になる。樹皮の古いものは暗赤色で、太くなると縦に裂けてくる[5]。つるは上から見て左巻き(Z巻き)に巻き付く[5]

葉柄をもって茎に互生し、年枝ごとに4 - 10枚はえる。葉の形は卵形から楕円形で、葉先は急鋭頭、基部は浅心形からくさび形、縁は鈍鋸歯になる。葉身は長さ5 - 15センチメートル (cm) 、幅4 - 10 cmで、両面とも無毛。

花期は7 - 8月[5]。枝先に円錐花序をつける。は径6 mmで緑白色。果実は幅、長さとも12 - 18 mmの翼果で淡緑色から淡緑紅色を帯びる。

冬芽は互生し、円錐形で先が尖り、芽鱗は4 - 6枚で枝と同色である[5]。葉痕は半円形で、維管束痕は1個つく[5]

分布と生育環境

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日本では、本州東北地方から兵庫県日本海側、および奈良県四国ならびに九州に、東アジアでは、朝鮮半島および中国東北部に分布する。温帯の山地稜線、林縁、林内に自生する。

近縁種、利用

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中国などには近縁種タイワンクロヅル Tripterygium wilfordii が分布する。 タイワンクロヅルの根を加工した生薬は雷公藤(らいこうとう; レイコントン(léigōngténg))の名で知られ、関節リウマチなど炎症性疾患の妙薬とされる[7][8][9][注 1] また英語版によれば避妊薬として使える可能性があるとも。

クロヅルにも薬効があり、葉や蔓を乾燥して生薬に用いるともいう。

参考文献

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  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、210頁。ISBN 978-4-416-61438-9 

脚注

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注釈

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  1. ^ 英語版によれば関節リウマチ、慢性肝炎、慢性腎炎、硬直性脊柱炎、各種皮膚疾患への薬効を検証中であるという。

出典

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  1. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Tripterygium regelii Sprague et Takeda クロヅル(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年5月24日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Tripterygium regelii Sprague et Takeda var. occidentale T.Yamaz. クロヅル(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年5月25日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Tripterygium wilfordii auct. non Hook.f. クロヅル(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年5月24日閲覧。
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Tripterygium wilfordii Hook.f. var. regelii (Sprague et Takeda) Makino クロヅル(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年5月24日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 210
  6. ^ 中山泰昌 編『難訓辞典』東京堂出版、1956年12月。ISBN 4490100124 [要ページ番号]
  7. ^ 関連記事: 漢方薬の雷公藤、活動性関節リウマチの症状改善疫学批判)。 ※“漢方薬”とあるが、漢方理論によって調合した方剤ではなく、単体の生薬である。
  8. ^ 関連記事: 「中国のハーブが処方薬以上にリウマチの痛みを抑える」[1]
  9. ^ 関連記事:以上の論拠に関わる2014年3月発表の米医学専門誌の論文[2]