ギンヌンガガプ
北欧神話の用語
ギンヌンガガプ[1](Ginnungagap[2]、ギンヌンガ・ガップとも)とは、北欧神話に登場する、世界の創造の前に存在していた巨大で空虚な裂け目のことである。 日本語訳ではギンヌンガの淵(ギンヌンガのふち)、ギンヌンガの裂け目(ギンヌンガのさけめ)という表記もみられる。
ギンヌンガガプの北からは激しい寒気が、南からはムスペルヘイムの耐え難い熱気が吹きつけている。世界の始まりの時において、寒気と熱気がギンヌンガガプで衝突した。熱気が霜に当たると、霜から垂れた滴が毒気 (Eitr) となり、その毒気はユミルという巨人に変じた。このユミルは全ての霜の巨人(ヨトゥン)たちの父となり、またのちに殺され彼の肉体によって世界が形作られることとなる。滴からは牝牛のアウズンブラも生まれ、ユミルはアウズンブラから流れ出る乳を飲んで生き延びた。アウズンブラは氷をなめ、そのなめた部分からブーリが生まれた。北欧神話の主神であるオーディンはブーリの孫にあたる。のちにオーディンらによってユミルが殺されたときに、ギンヌンガガプはユミルの血で満たされたという。
脚注
編集- ^ 「ギンヌンガガプ」の表記は菅原 (1984) p. 319(索引)などにみられる。谷口訳 (1973) p. 227, 230, 236( 『ギュルヴィたぶらかし』第5章、第8章、第15章); p. 9(『巫女の予言』第3詩節)などでは「奈落の口」と訳出されている。
- ^ “ginnungagap sb. n. (ONP)”. Dictionary of Old Norse Prose. コペンハーゲン大学. 2023年10月8日閲覧。