カール・フレッシュ国際ヴァイオリン・コンクール
カール・フレッシュ国際ヴァイオリン・コンクール(英: Carl Flesch International Violin Competition、ハンガリー語: Flesch Károly Nemzetközi Hegedűverseny)は、ヴァイオリニストを対象としたコンクールの一つ。
概要節のとおり2つの同名のコンクールがあるが、両者は開催地だけでなく由来や主催者も異なり(ハンガリーでの国際コンクールはモションマジャローヴァール市とJózsefné Fejes音楽財団が主催)、全くの別物である[注釈 1]。
概要
編集- カール・フレッシュ国際ヴァイオリン・コンクール・イン・ロンドン
1945年、ヴァイオリン奏者カール・フレッシュの名を記念して、マックス・ロスタールとエドリック・カンデルにより創設された。第1位には、賞金5,000ポンド(1990年時点)とカール・フレッシュ・メダルが贈られ、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団との共演の機会が与えられた。英国において開催されてきたコンクールは、ロンドン市がコンクールへの資金援助を停止したことにより、1992年の開催を最後にして以降は開催されなくなった[注釈 2]。
- カール・フレッシュ国際ヴァイオリン・コンクール・イン・ハンガリー
他方、1985年からハンガリーにおいて開催されている別のコンクールがあり、当初のナショナル・カール・フレッシュ・ヴァイオリン・コンクール[1]を改称して、今日ではカール・フレッシュ国際ヴァイオリン・コンクール(カール・フレッシュ国際ヴァイオリン・コンペティション)の名で開催されている(外部リンクのウェブサイトを参照)。なお、本コンクールの開催場所は、首都ブダペストでなくハンガリー北西部のモションマジャローヴァール(カール・フレッシュの出身地)である(2023年開催時点[2])。
ロンドンでの国際コンクール入賞者
編集《出典:英語版Wikipedia「Carl Flesch International Violin Competition」》
- 1945年 レイモンド・コーエン(イギリス)
- 1946年 ノルベルト・ブレイニン (イギリス)
- 1947年 エリック・グリューエンバーグ(パレスチナ)
- 1948年 ガブリエラ・レンゲル(ハンガリー)
- 1949年 John Glickman
- 1950年 Eugene Prokop(チェコスロバキア)
- 1951年 イゴール・オジム(ユーゴスラビア)
- 1952年 Pierre Jetteur(ベルギー)
- 1953年 ベティー=ジャン・ハーゲン(カナダ)
- 1954年 Maria Vischnia(ウルグアイ)
- 1955年 コヴァーチ・デーネシュ(ブルガリア)
- 1956年 ラディスラフ・ヤーセック(チェコスロバキア)
- 1957年 Michael Davis
- 1958年 ウィルフレッド・レーマン(英: Wilfred Lehmann)(オーストラリア)
- 1959年 Ronald Keith Thomas(オーストリア)
- 1960年 アントワーヌ・ゴーランド(Antoine Goulard)(フランス)
- 1961年 Marie Renaudie
- 1962年 ジャン=ジャック・カントロフ(フランス)
- 1963年 アナ・チュマチェンコ(イタリア/アルゼンチン)
- 1964年 Eva Zurbrügg(スイス)
- 1965年 ボダ・エステル(Eszter Boda Katona)(ハンガリー)
- 1966年 Andreas Röhn(西ドイツ)[3]
- 1968年 大山平一郎(日本)
- 1970年 ストイカ・ミラノヴァ(ブルガリア)
- 1972年 チャバ・エルデーイ(ハンガリー)
- 1974年 ミンチョ・ミンチェフ(ブルガリア)
- 1976年 ドラ・シュワルツベルク(オーストリア)
- 1978年 ウジェーヌ・サルブ(ルーマニア)
- 1980年 バルバラ・グルジンスカ(ポーランド)
- 1982年 アデリナ・オプリーン(ルーマニア)
- 1984年 木野雅之(日本)
- 1986年 薛偉(中国)
- 1988年 ヤン・サンシク(朝: 양성식、英: Sungsic Yan)(韓国)
- 1990年 マキシム・ヴェンゲーロフ(ロシア)
- 1992年 ベンヤミン・シュミット(ドイツ)
1992年をもって事実上終了[注釈 2]。
ハンガリーでの国際コンクール入賞者
編集《2018年(第13回)までの出典:[5]》
1985年から1991年までの各位入賞者にハンガリー人の参加者の名前[注釈 3]が連なっていることから、当時は国際コンクールでなかったことがうかがえる。
- 1985年(第1回)
- 第1位 ジュラ・シュトュッレール(ハンガリー)
- 第2位 János Pilz(ハンガリー)
- 第3位 Tímea Iván(ハンガリー)
- 1987年(第2回)
- 第1位 Erika Tóth(ハンガリー)
- 第2位 Zsuzsanna Nagy(ハンガリー)、György Ács(ハンガリー)
- 第3位 Ferenc Illényi[注釈 4](ハンガリー)、ゾルタン・アルマーシ[注釈 5](ハンガリー)
- 1989年(第3回)
- 第1位 Beatrix Godányi(ハンガリー)
- 第2位 Beatrix Csík(ハンガリー)、Péter Somogyi(ハンガリー)
- 第3位 Péter Fodor(ハンガリー)、Éva Viniczai(ハンガリー)
- 1991年(第4回)
- 1993年(第5回)
- 第1位 シャンドル・ヤボルカイ(洪: Sándor Jávorkai)(ハンガリー)[8]
- 第2位 Melinda Béres(ルーマニア)
- 第3位 エドウィン・マートン[注釈 7](ウクライナ)
- 1995年(第6回)
- 第1位 Melinda Béres[注釈 6](ルーマニア)
- 第2位 ガボール・ザボ
- 第3位 バルナバーシュ・ケレメン
- 1997年(第7回)
- 第1位 Katalin Varnagy(ハンガリー)[9]
- 第2位 ヴェロニカ・ヤルシュコヴァ(スロバキア)
- 第3位 Flóra Kovács(ハンガリー)
- 1999年(第8回)
- 第1位 カタリン・コカス(ハンガリー)
- 第2位 Gyula Vadászi(ハンガリー)
- 第3位 Dániel Papp(ハンガリー)
- 2001年(第9回)
- 第1位 Bence Gazda(ハンガリー)
- 第2位 Csaba Birkás(ハンガリー)
- 第3位 Michal Majersky(スロバキア)
- 2003年(第10回)
- 第1位 Ádám Banda(ハンガリー)
- 第2位 Gyula Vadászi[注釈 8](ハンガリー)
- 第3位 Federico Kasik(ウクライナ)、Nazariy Pylatyuk(ウクライナ)
- 2008年(第11回)
- 第1位 エルノ・カライ(ハンガリー)
- 第2位 シニ=マーリア・シモネン(フィンランド)
- 第3位 ジュリア・パスカー(ハンガリー)、Ilya Movchan(ロシア)
- 2013年(第12回)
- 第1位 ララ・ボシュコウ(ドイツ)
- 第2位 尾池亜美(日本)、エヴァ・ラブチェフスカ(英: Eva Rabchevska)(ウクライナ)
- 第3位 アメリア・マゾンスカ(ポーランド)
- 2018年(第13回)
- 2023年(第14回)[10]
- 第1位 Eun Che Kim(韓国)
- 第2位 Sara Ispas(オーストラリア)
- 第3位 Maya Alexandra Kasprzak(日本/ドイツ/ポーランド)
脚注
編集注釈
編集- ^ 両者の比較については、1945年以来の伝統があり、かつては「最も権威のあるコンクールの一つ」(英語版記事より)と評された、ロンドンでの国際コンクールはさしずめ「元祖カール・フレッシュ国際ヴァイオリン・コンクール」であり、片や、カール・フレッシュの出身地で今日も開催されるハンガリーでの国際コンクールは「本家カール・フレッシュ国際ヴァイオリン・コンクール」であると言える。
- ^ a b アンネ=ゾフィー・ムターら有志により2001年10月での開催を企図してコンクールの復活が試みられたことがあったが、実現には至らなかった[4]。
- ^ 出典には、他国からの参加者名もあわせて「姓・名」の順で表記されている。→「ハンガリー人の姓名」を参照
- ^ イレーニ・コティツァの記事の中にある同名人物の、同じくヴァイオリニストでハンガリー国立歌劇場の奏者であった、彼女の父親のイレーニ・フェレンツ(1935年 - 2007年)とは、年齢差から別人であると推測される。1991年からヒューストン交響楽団のヴァイオリン奏者(現:第一ヴァイオリン)を務めており、健在[6]。なお、ヒューストン交響楽団の紹介記事には父親がハンガリー国立歌劇場のヴァイオリニストであったと記されている(父親の名を継いでいる可能性はある)。イレーニ・コティツァの項目の出典のDiscogs(リンク先)をたどると、共演者(同項目によれば兄弟姉妹)の中にヒューストン交響楽団員の同一人物が認められ、むしろイレーニ・コティツァの兄弟の方にあたると考えられる。
- ^ ゾルタン・アルマーシは、1991年からベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のヴァイオリン奏者(現:第一ヴァイオリン)を務めている[7]。
- ^ a b c 前年にも入賞。
- ^ 出典では、本名の Lajos Csűri で表記。
- ^ 1999年(第8回)にも入賞。
出典
編集- ^ Carl Flesch International Violin Competition - Our Story(Flesch Károly Nemzetközi Hegedűverseny ウェブサイト) - ウェイバックマシン(2021年8月3日アーカイブ分)
- ^ “カール・フレッシュ国際ヴァイオリン・コンペティション”. サリーヌ・ロワイヤル・アカデミー. 2025年2月1日閲覧。
- ^ “Röhn Tradition” (英語). the Röhn WORKSHOP. 2025年2月1日閲覧。 “he won the prestigious Carl Flesch international violin competition in London in 1966”
- ^ Carl Flesch International Competition(Carl Flesch by José Sánchez-Penzo ウェブサイト) - ウェイバックマシン
- ^ Results from 1985(Flesch Károly Nemzetközi Hegedűverseny ウェブサイト) - ウェイバックマシン(2021年6月18日アーカイブ分)
- ^ “Ferenc Illenyi” (英語). ヒューストン交響楽団. 2025年1月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月26日閲覧。
- ^ “Zoltán Almási” (英語). ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団. 2024年12月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月26日閲覧。 “Third Prize in the Carl Flesch Competition (1987)”
- ^ “シャンドル・ヤボルカイ/アダム・ヤボルカイ”. 株式会社テンポプリモ. 2025年2月1日閲覧。
- ^ “Katalin Varnagy” (英語). ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団. 2025年2月1日閲覧。
- ^ “Prizewinners Announced at the Carl Flesch International Violin Competition” (英語). The Violin Channel (2023年5月13日). 2025年1月30日閲覧。