カワチブシ
カワチブシ(河内附子、学名:Aconitum grossedentatum[1])は、キンポウゲ科トリカブト属の疑似一年草、有毒植物[4][5][6][7]。
カワチブシ | |||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Aconitum grossedentatum (Nakai) Nakai (1935)[1] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
カワチブシ(河内附子)[4][5] |
特徴
編集生育場所によって形体的変異が著しい。地下の塊根は径0.5-3cmになる。林縁や林内では茎は斜上して先端が垂れ、草原では直立して高さは50-180cmになる。茎中部付近でよく分枝し、枝は広角度に伸長する。根出葉と下部の茎葉は、花時には枯れて存在しない。中部の茎葉の葉身は五角形から五角形状円形で、長さ5-19cm、幅6-17cm、3深裂または3全裂し、裂片は粗い鋸歯縁になるか、ときに羽状に深裂する。鋸歯または欠刻片は、卵状から披針形、狭披針形になり、幅は2-5mmになる。葉柄は長さ1-6cmになり、無毛または屈毛が生える[5][7]。
花期は8-11月。花柄は長さ1.5-4.5cmで、無毛、花柄の中部に対になった小苞があり、狭楕円形で長さ3-7mmになる。花序は長さ5-12cmの散房状、総状、円錐状になり、1-10個の花がつく。花は青紫色で、長さは3-5.5cmになり、ときに光沢があり、まれに黄白色の花がある。花弁にみえるのは萼片で、上萼片1個、側萼片2個、下萼片2個の5個で構成される。上萼片は円錐形まれに僧帽形になり、長さ22-30mm、幅17-24mmになり、長い嘴があり、上萼片の外面に毛は無い。花弁は上萼片の中にかくれて見えないが、柄、舷部、蜜を分泌する距、唇部で構成される。1対あり、無毛で、舷部は長さ10-14mmあって強くふくらみ、距はふつう太くて長いがまれに短く嚢状になり、180度以上に内曲し、唇部は長さ3-4mmになり、先端は2浅裂して反り返る。雄蕊は多数ありふつう無毛、まれに開出毛がまばらに生える。雌蕊は3-5個あり、無毛。果実は長さ15-27mmの袋果になり、斜開するか直立する。種子は長さ4mmになる。染色体数2n=32の4倍体種である[5][7]。
分布と生育環境
編集日本固有種[8]。本州の太平洋側、関東地方(神奈川県・群馬県)から近畿地方(和歌山県)までと四国に分布し、山地帯の林内、林縁または草原に生育する[5][7]。
このうち、鈴鹿山脈と紀伊山地に分布し、風衝草原に生育し、茎が直立して高さ30-80cmになり、全体が小型で葉に光沢があるものは、シノニム欄の var. odaiense とされ、アシブトウズまたはオオダイブシと分類されることがある[6][7]が、現在はカワチブシの草原型として整理されている[2][7]。また、四国山地に分布し、葉が3全裂し、裂片がさらに深裂して欠刻片が披針形になるものは、var. sikokianum とされ、シコクブシとされることが多い[5][7][8]が、これもカワチブシのシノニムになっている[3][7]。
名前の由来
編集和名カワチブシは、「河内附子」の意で、タイプ標本が大阪府の金剛山で採集され、金剛山が旧河内国に属することによる[5]。
種小名(種形容語)grossedentatum は、grosse-dentatum の意で[1]、「非常に大きい鋸歯の」の意味[9]。中井猛之進による命名[1]。
種の保全状況評価
編集国(環境省)のレッドデータブック、レッドリストでの選定はない。都道府県別では、岐阜県、大阪府、和歌山県で絶滅危惧II類となっている[10]。
分類
編集カワチブシは、トリカブト属トリカブト亜属 Subgenus Aconitum のうち、花弁の舷部が距に向かって膨大するキヨミトリカブト節 Section Euchylodea に属し、同節のうち、花はふつう花序の上から下に向かって開花するヤマトリカブト列 Series Japonica に分類される。ヤマトリカブト列に属する日本に分布する種のうち、温帯に生育する種(高山植物でない種)としては、本種の他、ウゼントリカブト Aconitum okuyamae、オンタケブシ A. metajaponicum、コウライブシ A. jaluense(亜種にセンウズモドキ subsp. iwatekense がある。)、ヤマトリカブト A. japonicum(亜種にオクトリカブト subsp. subcuneatum、ツクバトリカブト subsp. maritimum、イブキトリカブト subsp. ibukiense、タンナトリカブト subsp. napiforme がある。)、ヤサカブシ A. nikaii が属する[11]。
本種の花柄と上萼片は無毛であること。ウゼントリカブトとオンタケブシは、花柄と上萼片に開出毛と腺毛が生え、上萼片の嘴は短いこと。コウライブシは、花柄と上萼片に開出毛と腺毛が生え、上萼片の嘴は長いこと。ヤマトリカブトとその亜種群、ヤサカブシは、花柄と上萼片に屈毛が生えることが異なる。なお、オンタケブシは分布が限られ極まれな種であり、ヤサカブシは山口県にのみ分布する種である[11]。
ギャラリー
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林縁や林内では茎は斜上して先端が垂れる。
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花弁にみえるのは萼片で、上萼片1個、側萼片2個、下萼片2個の5個で構成される。雄蕊は多数あって無毛。
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上萼片は円錐形になり、長い嘴があり、上萼片の外面に毛は無い。
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左の写真の花柄部分の拡大。花柄は無毛で、中部に対になった狭楕円形の小苞がある。
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果実は袋果になり、斜開する。
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この個体の中部の茎葉の葉身は五角形から五角形状円形で、3深裂し、裂片は粗い卵状の鋸歯縁になっている。
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花が黄白色のものもある。
脚注
編集- ^ a b c d カワチブシ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b カワチブシ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b カワチブシ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.214
- ^ a b c d e f g 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.490
- ^ a b 田村道夫 (1982) 「キンポウゲ科トリカブト属」『日本の野生植物 草本II 離弁花類』p.65
- ^ a b c d e f g h 門田裕一 (2016) 「キンポウゲ科トリカブト属」『改訂新版 日本の野生植物 2』p.127
- ^ a b 門田裕一 (2011) 「キンポウゲ科トリカブト属」『日本の固有植物』pp.55-57
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1491, 1495
- ^ カワチブシ、日本のレッドデータ検索システム、2024年1月8日閲覧
- ^ a b 門田裕一 (2016) 「キンポウゲ科トリカブト属」『改訂新版 日本の野生植物 2』pp.120-122
参考文献
編集- 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本II 離弁花類』、1982年、平凡社
- 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム
外部リンク
編集- カワチブシ – コトバンク
- カワチブシ(南河内の自然情報) – 大阪府