カカオマス
カカオマス(cocoa mass、まれにcacaomas)とは、カカオ豆の胚乳を発酵、乾燥、焙煎、磨砕したもの。外皮と胚芽は工程中で除去される。液体のものをカカオリカー、冷却・固化したものをカカオマスと呼ぶ。主にココアパウダー、チョコレートの原料として利用される[1]。
カカオマスの製法
編集原産地での工程
編集収穫・発酵
編集カカオの実は年2 - 3回収穫される。収穫後すぐに実(カカオポッド)を割り、種子周囲のパルプ(白色の果肉)ごと取り出し、発酵させる。 発酵はバナナの葉でくるむ、若しくは木箱に入れて行い、むらができぬよう毎日撹拌する。 発酵期間は豆の種類によって異なるが、概ね一週間前後とされている。
乾燥・出荷
編集充分に発酵した豆は、速やかに天日若しくは乾燥機で水分を除去する。 輸送・保管中のカビの原因となるため、水分は6%以下になるようにする。 麻袋などに60kg程度ずつ袋詰めし、船便で出荷する。
加工地での工程
編集選別・焙炒・分離
編集到着したカカオ豆は選別機(クリーナー)を通され、篩(ふるい)や送風機の風、磁石などによって異物を除かれ、人の目視によって最終選別される。 ビーンズロースト法(豆ロースト法)ではこの後、焙煎機(ロースター)で熱風を当て、コーヒー豆と同じように焙煎される(但しコーヒー豆の焙煎温度は230-250℃、アーモンドやピーナッツでは170-180℃、カカオ豆の場合は110-150℃である[要出典])。 焙煎の済んだカカオ豆は粗く粉砕され、風選機(ふうせんき)(セパレーター/ハスカー/ウィノワー)によってハスク(外皮)と胚芽を取り除かれる。 ハスクを取り除き、粗く粉砕されたカカオ豆は、カカオニブ (cacao nibs)と呼ばれる。
磨砕
編集カカオニブは磨砕機(グラインダー/リカーミル)によって直径約100μm程度まで磨り潰される。 カカオニブには約55%の脂肪分が含まれているため、細かく磨り潰すと液状になる。 この磨り潰されたペーストがカカオリカーである。
カカオマスの焙炒法
編集カカオ豆のロースト方法は、上記のビーンズロースト法の他に、ニブロースト法とリカーロースト法がある。
- ニブロースト法
- ロースト前にハスクの除去を行い、カカオニブのみを焙煎する方法。
- リカーロースト法
- ハスク除去、カカオニブ磨砕を先に行い、液体のカカオリカーを焙煎する方法。
- プレロースト
- ニブロースト法などの場合、本ローストの前に、ハスクを除去しやすくするため短時間熱風を当てる。
またココアパウダー用のカカオマスを製造する際は、ロースト前にアルカリ剤などを添加し、風味・色調の調整を行う場合がある。
カカオマスを原料とする製品
編集ココアパウダー・ココアバター
編集カカオマスには約55%のカカオ脂肪分(ココアバター)が含まれている。 プレス機でカカオリカーを適度に圧搾し、ココアバターを取り除いたものをココアケーキと称し、ココアミルでココアケーキを粉砕して粉末状にしたものがココアパウダーである。 ココアパウダーの脂肪分は約11% - 23%程度である。
チョコレート
編集カカオマスはそれぞれのメーカーの嗜好に合わせて数種類がブレンドされ、チョコレートに加工される。ブレンドはカカオニブやカカオリカーの段階で行われる場合もある。カカオマスに砂糖、粉乳、ココアバター、植物油などを加えて均一に混合したものは、チョコレートの元でありチョコレートドゥと呼ばれる。チョコレートドゥはその後、レファイナーによる最終磨砕、コンチェ(コンチングマシン)による精錬、テンパリング(温調)による脂肪結晶の生成、成型、包装、エージング(結晶安定化)など多くの工程を経て、製品としてのチョコレートになる。
カカオマスの栄養成分
編集脚注
編集- ^ “平気で「チョコ」を買う人が知らない超残念な真実”. 東洋経済オンライン (2023年2月10日). 2023年2月14日閲覧。