エンリケ・ペーニャ・ニエト
エンリケ・ペーニャ・ニエト(スペイン語: Enrique Peña Nieto、スペイン語発音: [enˈrike ˈpeɲa ˈnjeto] ( 音声ファイル)、1966年7月20日 - )は、メキシコの政治家。第57代のメキシコ合衆国大統領を務めた。日本のメディアではエンリケ・ペニャニエトとされることが多いほか、外務省は「エンリケ・ペニャ・ニエト」という表記を採用している[1]。
エンリケ・ペーニャ・ニエト Enrique Peña Nieto | |
任期 | 2012年12月1日 – 2018年11月30日 |
---|---|
出生 | 1966年7月20日(58歳) メキシコ メヒコ州アトラコムルコ |
政党 | 制度的革命党 (PRI) |
配偶者 | モニカ・プレテリーニ・サエンス(1993年 – 2007年) アンヘリカ・リベラ(2010年 – 2019年) |
来歴
編集メヒコ州アトラコムルコ出身。宗教はカトリック。出身校はパン・アメリカン大学。
2005年9月16日から2011年9月15日までの6年間、メヒコ州の知事を務めた後、2012年12月1日にメキシコ合衆国大統領に就任した。これにより、ペーニャ・ニエトの所属する制度的革命党 (PRI) は12年ぶりに政権を取り戻した。彼は、不正が行われたと非難された[2][3]2012年メキシコ大統領選挙が、連邦選挙管理委員会によって有効と宣言されたのち次期大統領として発表された[2][3][4][5]。2012年12月1日に彼はフェリペ・カルデロン大統領から政権を引き継ぎ[2]、71年間にわたりメキシコを支配してきたPRIの党勢を回復させた[6][7]。
2011年9月に大統領選への出馬を表明し[8]、その4日後に知事を辞職した。同年の11月に正式に候補者の登録をした[9]。ペーニャ・ニエトの大統領選における得票率は38%で、立法府では過半数を持っていないものの、12年ぶりのPRIの大統領となった[10]。PRIは2000年に国民行動党 (PAN) に敗れるまでの71年間、一貫してメキシコを統治してきた政党であった[11][12]。
しかし、PRIの政権復帰を望まない国民も存在した[13]。メキシコ各地でペーニャ・ニエト政権に対する数千人規模のデモ行進が行われ、特にジョ・ソイ・132(私は132人目だ、の意)と呼ばれる学生運動では、選挙の不正とメディアの偏向報道に関する疑惑が追及された[14][15]。PRI政権時代の同党が汚職や抑圧、経済政策の失敗と不正選挙の象徴となっていたために抗議した人々もいた。そうした過去への回帰を意味するのではないかと、都市部を中心に多くのメキシコ人が危惧したのであった[16]。これに対して、ペーニャ・ニエトはそのような疑念を否定し、政府を民主的かつ近代的で、批判に対して開かれたものにすると公約した[17]。彼はまた麻薬戦争の継続や、犯罪者と協定を結ばないことを誓った[17]。
PAN政権では、与党が議会で多数派を占めていなかったため、改革を断行することができなかった。PRIは政権与党としての豊富な経験を訴え、有権者に十分な説得力を与えた[18]。選挙期間中の世論調査で、ペーニャ・ニエトは広範な支持を維持した[19]。彼はメキシコ経済の活性化[6]、民間部門との競争力を向上させるための国営石油会社ペメックスの完全民営化の認可[20]、さらに6年間に55,000人以上の死者を出した麻薬に関する暴力の減少を公約に掲げた[21]。ペーニャ・ニエトはメキシコシティとケレタロを結ぶメキシコ初の高速鉄道を建設するインフラ整備も公約に掲げ[22]、2014年に中国鉄建と中国南車とメキシコ企業で構成されたコンソーシアムが受注するもそのうちのメキシコ企業から大統領が献金を受けて大統領夫人が邸宅を購入したとする汚職疑惑が持ち上がり[23][24][25]、ペーニャ・ニエトは計画を無期限延期して中華人民共和国の企業に賠償金を支払うことになった[26]。在任中にはメキシコ麻薬戦争最大の大量殺人とされる2014年メキシコ・イグアラ市学生集団失踪事件も起き、国際的な批判にさらされた[27]。また、米国・メキシコ・カナダ協定に署名した。
-
2012年7月1日に行われた大統領選挙。
-
左から妻のアンヘリカ・リベラ、ペーニャ・ニエト、コスタリカのラウラ・チンチージャ大統領(2013年2月19日)
人物
編集- ペーニャ・ニエトの父ヒルベルト・エンリケ・ペーニャ・デル・マソ (Gilberto Enrique Peña del Mazo) は電気技術者、母マリーア・デル・ペルペトゥオ・ソコロ・オフェリア・ニエト・サンチェス (María del Perpetuo Socorro Ofelia Nieto Sánchez) は学校教師。2007年に前妻モニカ・プレテリーニ・サエンス (Mónica Pretelini Sáenz) が急死したが、2010年に女優のアンヘリカ・リベラと再婚し、2019年に離婚した。前妻との間に3人の子を儲けている他、愛人との間に作った2人の婚外子がいる。
- 2013年4月に来日している。
著作
編集出典
編集- ^ メキシコ基礎データ | 外務省 2014年2月15日閲覧。
- ^ a b c Thomet, Laurent (2012年8月31日). “Mexico's Pena Nieto declared president, rival calls rally”. Yahoo! News 2012年9月20日閲覧。
- ^ a b “About Us”. Electoral Tribunal of the Federal Judicial Branch. 2012年7月20日閲覧。
- ^ “Mexico: Allegations of Fraud Follow Peña Nieto”. The Daily Beast. (2012年11月30日) 2013年1月12日閲覧。
- ^ “Allegations of fraud continue to overshadow the Mexican Election Results”. BWNews.us. (2012年7月10日) 2013年1月12日閲覧。
- ^ a b Viette, Catherine (2012年7月2日). “PRI's Enrique Peña Nieto wins Mexican presidency”. w:France 24 2012年7月17日閲覧。
- ^ O'Boyle, Michael (2012年7月8日). “Mexican electoral officials confirm Pena Nieto win”. w:Reuters 2012年7月17日閲覧。
- ^ “Mexico's 2012 Presidential Favorite Announces Candidacy”. w:Fox News. (2011年9月21日) 2012年7月17日閲覧。
- ^ “Pena Nieto confirms Mexico 2012 presidential bid”. w:BBC News. (2011年11月28日) 2012年7月17日閲覧。
- ^ “Enrique Pena Nieto wins Mexican presidential election”. w:The Daily Telegraph (London). (2012年7月2日) 2012年7月17日閲覧。
- ^ Graham, Dave (2012年7月2日). “Enrique Pena Nieto, the new face of Mexico's old rulers”. Reuters 2012年7月17日閲覧。
- ^ Star, Pamela K. (2012年7月6日). “Enrique Peña Nieto: Mexico's new face”. w:Los Angeles Times 2012年7月17日閲覧。
- ^ “Mexico's election: The PRI is back”. w:The Economist. (2012年7月2日) 2012年7月7日閲覧。
- ^ “Thousands protest outcome of elections in Mexico”. Fox News. (2012年7月3日) 2012年7月17日閲覧。
- ^ “Protests target Peña Nieto in Mexico City”. Fox News. (2012年7月15日) 2012年7月17日閲覧。
- ^ Jackson, Allison (2012年7月1日). “Mexico elections: Voters could return Institutional Revolutionary Party to power”. Global Post 2012年7月7日閲覧。
- ^ a b Castillo, Eduardo E. (2012年7月2日). “Mexico returns former ruling party to power”. Yahoo! News 2012年7月17日閲覧。
- ^ Rama, Anahi (2012年7月2日). “UPDATE 4-Mexico's Pena Nieto to push for quick reforms”. w:Chicago Tribune 2012年7月18日閲覧。
- ^ Rosenberg, Mica (2012年6月26日). “Mexico's Pena Nieto with big poll lead before election”. w:Reuters 2012年7月18日閲覧。
- ^ Gutierrez, Miguel (2012年4月9日). “Mexico's front-runner sees possible Pemex listing”. w:Reuters 2012年7月17日閲覧。
- ^ Ioan Grillo (2012年7月5日). “Drug war fury awaits Mexico's Pena Nieto”. w:Yahoo! News 2012年7月17日閲覧。
- ^ “Mexico tenders for high-speed train linking capital and Queretaro”. ロイター. (2014年7月28日) 2018年8月23日閲覧。
- ^ “暴力が止まらないメキシコと疑惑の大統領”. ニューズウィーク. (2014年12月5日) 2018年8月23日閲覧。
- ^ “メキシコ高速鉄道が“無期限”延期に=中国系ジョイントベンチャーの贈賄疑惑―中国メディア”. Record China. (2015年2月2日) 2018年8月23日閲覧。
- ^ “メキシコの高速鉄道プロジェクトに汚職か、入札やり直しへ―中国メディア”. Record China. (2014年11月10日) 2018年8月23日閲覧。
- ^ “中国受注のメキシコ高速鉄道、計画の「無期限延期」に賠償金=中国”. サーチナ. (2016年5月25日) 2018年8月23日閲覧。
- ^ “「学生43人の遺体を焼いて川に」容疑者供述におののくメキシコ”. AFPBB. (2014年11月9日) 2019年1月31日閲覧。
外部リンク
編集- メキシコ大統領府
- エンリケ・ペーニャ・ニエト バルセロナ国際交流センター (CIDOB)
- メキシコのペーニャ・ニエト、7つの改革を提案 CNNメキシコ
- メキシコ:制度的革命党のエンリケ・ペーニャ・ニエト候補が大統領選に勝利 ハフィントン・ポスト
公職 | ||
---|---|---|
先代 フェリペ・カルデロン |
メキシコ合衆国大統領 第57代:2012年 - 2018年 |
次代 アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール |