エロル伯爵
エロル伯爵(英語: Earl of Erroll)は、スコットランド貴族の伯爵位の一つである。1452年にヘイ氏族のウィリアム・ヘイが叙位されたのに始まる。
エロル伯爵 Earl of Erroll | |
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創設時期 | 1452年6月12日 |
創設者 | ジェームズ2世 |
貴族 | スコットランド貴族 |
初代 | ウィリアム・ヘイ |
現所有者 | マーリン・ヘイ(24代エロル伯) |
相続人 | ハリー・ヘイ(ヘイ卿) |
相続資格 | 授与者の直系の男子・女子問わず(heirs general of the body of the grantee) |
付随称号 | ヘイ卿 (モンクリフの)準男爵 |
邸宅 | ウッドバリー・ハウス |
旧邸宅 | ニュー・スレインズ城 |
国務大官スコットランド大司馬職を世襲。 |
かつての国務大官の一つスコットランド大司馬職を世襲し続けている[1][2]。その歴史の古さから私設紋章官(Private Officer of Arms)を有する数少ない貴族であり、スレインズ紋章官補がその役割を担う[1]。
歴史
編集スコットランドのヘイ氏族(Clan Hay)は、1160年頃の記録に初めて登場するスコット=ノルマン人の騎士Guillaume de la Hayeの子孫である[3]。
エロル伯爵家の先祖となるギルバート・ド・ラ・ヘイ(Gilbert de la Hay, 生年不詳-1333)は、キノール伯爵家の先祖であるウィリアム・ド・ル・ヘイの兄にあたる。ウィリアムにはスコットランド王アレグザンダー3世の了承のもと、弟から2つのカルケートの土地が譲られた[3]。
その子孫のウィリアム・ド・ラ・ヘイ(William de la Hay.生年不詳-1437)は、1428年のロード・オブ・パーラメントとバロンを区別する法律により、1429/30年3月以前にスコットランド貴族爵位のヘイ卿(Lord Hay)に叙せられた[4]。
その孫で2代ヘイ卿を継承したウィリアム・ヘイ(生年不詳-1462頃)は、1452年6月12日にスコットランド貴族爵位のエロル伯爵(Earl of Erroll)に叙位され、同月末にエロル伯領とスレインズ卿領を与えられた[5][2]。
その子孫である11代エロル伯ギルバート・ヘイ(1631-1674)は、清教徒革命(イングランド内戦)中王党派として行動し、王政復古後の1666年、スコットランド法に規定されるスコットランド貴族の特殊な制度である再交付(regrant)によって自ら爵位の継承者を決める権限を与えられ、1674年に三従兄弟[注釈 1]のジョン・ヘイとその男子相続人、もしくは女子相続人を継承者に指名している[6][2]。
これにより11代伯の死後、ジョン・ヘイが12代伯を継承。彼の死後はその息子チャールズ・ヘイ(c. 1677/1680-1717)が13代伯を継承したが、子供のない13代伯の死後、12代伯の娘メアリー(-1758)が14代伯を継承した。彼女にも子供はなかったため、彼女の死後はその妹マーガレットの娘アンと第4代キルマーノック伯爵ウィリアム・ボイドの間の子であるジェイムズ(1726–1778)が15代伯を継承した。彼の父である4代キルマーノック伯はジャコバイトに加担したことで大逆罪により処刑のうえ爵位剥奪となったのでキルマーノック伯位は継承されなかったが(父の保有していたキルマーノックの土地は継承した)、母方からエロル伯爵位を継承した形だった。継承に際して姓名をボイドからヘイに改めた[7][2]。
18代エロル伯ウィリアム・ヘイ(1801–1846)は、1831年6月17日に連合王国貴族のエア州におけるキルマーノックのキルマーノック男爵(Baron Kilmarnock, of Kilmarnock in the County of Ayr)に叙位された[8][2]。
22代エロル伯ジョスリン・ヴィクター・ヘイ(1901–1941)は、イギリス植民地ケニアで快楽主義的な生活を送っていたが、迷宮入り殺人事件「エロル事件」の被害者となったことで知られる[9][10]。 彼の死後、エロル伯位とヘイ卿位は娘のダイアナ(1926–1978)が継承したが[11]、男系男子に限定される連合王国貴族のキルマーノック男爵位は弟のギルバートに継承された(ギルバートはこれを機に姓名をボイドに改姓している[12])。
23代エロル女伯を継承したダイアナは、第11代準男爵サー・イアン・モンクリフと結婚した。その間の子マーリン・セレルド・ヴィクター・ギルバート・ヘイ(1948-)は、1978年に死去した母から第24代エロル伯位と第25代ヘイ卿位を、1985年に死去した父から第12代(モンクリフの)準男爵位を継承した。2021年現在の当主も彼である[2][13]。
現当主の保有爵位/準男爵位
編集ヘイ卿 (1429年/1430年)
編集- 初代ヘイ卿ウィリアム・ド・ラ・ヘイ (-1437)
- ギルバート・ヘイ (-1436)
- 第2代ヘイ卿ウィリアム・ヘイ (-1462頃)
- 1452年、エロル伯爵に叙爵
エロル伯爵 (1452年)
編集- 初代エロル伯ウィリアム・ヘイ (-1462頃)
- 2代エロル伯ニコラス・ヘイ (-1470)
- 3代エロル伯ウィリアム・ヘイ (-1507)
- 4代エロル伯ウィリアム・ヘイ (-1513)
- 5代エロル伯ウィリアム・ヘイ (1495頃-1522)
- 6代エロル伯ウィリアム・ヘイ (1521頃–1541)
- 7代エロル伯ジョージ・ヘイ (-1573)
- 8代エロル伯アンドルー・ヘイ (-1585)
- 9代エロル伯フランシス・ヘイ (1564頃-1631)
- 10代エロル伯ウィリアム・ヘイ (1590s-1636)
- 11代エロル伯ギルバート・ヘイ (1631-1674)
- 12代エロル伯ジョン・ヘイ (bef. 1672-1704)
- 13代エロル伯チャールズ・ヘイ (c. 1677/1680-1717)
- 14代エロル女伯メアリー・ヘイ (-1758)
- 15代エロル伯ジェイムズ・ヘイ (1726–1778)
- 16代エロル伯ジョージ・ヘイ (1767–1798)
- 17代エロル伯ウィリアム・ヘイ (1772–1819)
- 18代エロル伯ウィリアム・ジョージ・ヘイ (1801–1846)
- 19代エロル伯ウィリアム・ハリー・ヘイ (1823–1891)
- 20代エロル伯チャールズ・ゴア・ヘイ (1852–1927)
- 21代エロル伯ヴィクター・アレグザンダー・セレルド・ヘイ (1876–1928)
- 22代エロル伯ジョスリン・ヴィクター・ヘイ (1901–1941)
- 23代エロル女伯ダイアナ・デニス・ヘイ (1926–1978)
- 24代エロル伯マーリン・セレルド・ヴィクター・ギルバート・ヘイ (1948-)
- 法定推定相続人は、現当主の長男ヘイ卿ハリー・トマス・ウィリアム・ヘイ (1984-)
系図
編集ヘイ卿 | |||||||||||||||||||||
初代ヘイ卿 ウィリアム・ヘイ (不詳-1437) | |||||||||||||||||||||
ギルバート・ヘイ (不詳-1436) | |||||||||||||||||||||
1452年エロル伯 | |||||||||||||||||||||
初代エロル伯 2代ヘイ卿 ウィリアム・ヘイ (不詳-1462頃) | |||||||||||||||||||||
2代エロル伯 3代ヘイ卿 ニコラス・ヘイ (不詳-1470) | 3代エロル伯 4代ヘイ卿 ウィリアム・ヘイ (不詳-1507) | ||||||||||||||||||||
4代エロル伯 5代ヘイ卿 ウィリアム・ヘイ (不詳-1513) | トマス・ヘイ (不詳-1513) | ||||||||||||||||||||
5代エロル伯 6代ヘイ卿 ウィリアム・ヘイ (1495頃-1522) | 7代エロル伯 8代ヘイ卿 ジョージ・ヘイ (不詳-1573) | ||||||||||||||||||||
6代エロル伯 7代ヘイ卿 ウィリアム・ヘイ (1521頃–1541) | 8代エロル伯 9代ヘイ卿 アンドルー・ヘイ (不詳-1585) | ||||||||||||||||||||
9代エロル伯 10代ヘイ卿 フランシス・ヘイ (c.1564-1631) | ジョージ・ヘイ (生没年不詳) | ||||||||||||||||||||
10代エロル伯 11代ヘイ卿 ウィリアム・ヘイ (不詳-1636) | アンドルー・ヘイ (不詳-1672頃) | ||||||||||||||||||||
11代エロル伯 12代ヘイ卿 ギルバート・ヘイ (1631–1674) | 12代エロル伯 13代ヘイ卿 ジョン・ヘイ (不詳-1704) | ||||||||||||||||||||
13代エロル伯 14代ヘイ卿 チャールズ・ヘイ (不詳–1717) | 14代エロル女伯 15代ヘイ女卿 メアリー・ヘイ (不詳-1758) | マーガレット・リヴィングストン (不詳-1707頃) m.5代リヴィングストン伯 | |||||||||||||||||||
キルマーノック伯 ボイド家から | |||||||||||||||||||||
4代キルマーノック伯 ウィリアム・ボイド (1705–1746) | アン・ボイド (不詳-1747) | ||||||||||||||||||||
1746年キルマーノック伯剥奪 | |||||||||||||||||||||
15代エロル伯 16代ヘイ卿 ジェイムズ・ヘイ (不詳-1636) | |||||||||||||||||||||
16代エロル伯 17代ヘイ卿 ジョージ・ヘイ (1767–1798) | 17代エロル伯 18代ヘイ卿 ウィリアム・ヘイ (1772–1819) | ||||||||||||||||||||
1831年キルマーノック男爵 | |||||||||||||||||||||
18代エロル伯 19代ヘイ卿 初代キルマーノック男爵 ウィリアム・ヘイ (1801–1846) | |||||||||||||||||||||
19代エロル伯 20代ヘイ卿 2代キルマーノック男爵 ウィリアム・ヘイ (1823–1891) | |||||||||||||||||||||
20代エロル伯 21代ヘイ卿 3代キルマーノック男爵 チャールズ・ヘイ (1852–1927) | |||||||||||||||||||||
21代エロル伯 22代ヘイ卿 4代キルマーノック男爵 ヴィクター・ヘイ (1876–1928) | |||||||||||||||||||||
22代エロル伯 23代ヘイ卿 5代キルマーノック男爵 ジョスリン・ヘイ (1901–1941) | 6代キルマーノック男爵 ギルバート・ボイド (1903–1975) | ||||||||||||||||||||
キルマーノック男爵ボイド家へ | |||||||||||||||||||||
モンクリフ準男爵家 | |||||||||||||||||||||
23代エロル女伯 24代ヘイ女卿 ダイアナ・ヘイ (1926–1978) | 11代準男爵 イアン・モンクリフ (1919-1985) | ||||||||||||||||||||
24代エロル伯 25代ヘイ卿 12代準男爵 マーリン・ヘイ (1948–) | |||||||||||||||||||||
ヘイ卿(儀礼称号) ハリー・ヘイ (1984–) | |||||||||||||||||||||
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b スレイター, スティーヴン 著、朝治 啓三 訳『【図説】紋章学事典』(第1版)創元社、2019年9月30日、173頁,184頁頁。ISBN 978-4-422-21532-7。
- ^ a b c d e f g Heraldic Media Limited. “Erroll, Earl of (S, 1452)” (英語). Cracroft's Peerage The Complete Guide to the British Peerage & Baronetage. 2019年12月1日閲覧。
- ^ a b Paul, James Balfour (1906). The Scots Peerage: Volume 3. D. Douglas. pp. 557–558.
- ^ Lundy, Darryl. “Sir William de la Haye, 1st Lord Hay” (英語). thepeerage.com. 2019年12月1日閲覧。
- ^ Lundy, Darryl. “William Hay, 1st Earl of Erroll” (英語). thepeerage.com. 2019年12月1日閲覧。
- ^ Lundy, Darryl. “Gilbert Hay, 11th Earl of Erroll” (英語). thepeerage.com. 2019年12月1日閲覧。
- ^ Lundy, Darryl. “James Hay, 15th Earl of Erroll” (英語). thepeerage.com. 2019年12月1日閲覧。
- ^ Lundy, Darryl. “William Hay, 1st Earl of Erroll” (英語). thepeerage.com. 2019年12月1日閲覧。
- ^ ウィルソン 1994, p. 180-183.
- ^ ゴーテ & オーデル 1986, p. 106-107.
- ^ Lundy, Darryl. “Diana Denyse Hay, Countess of Erroll” (英語). thepeerage.com. 2019年12月1日閲覧。
- ^ Lundy, Darryl. “Gilbert Allan Rowland Boyd, 6th Baron Kilmarnock” (英語). thepeerage.com. 2019年12月1日閲覧。
- ^ a b Lundy, Darryl. “Merlin Sereld Victor Gilbert Hay, 24th Earl of Erroll” (英語). thepeerage.com. 2019年12月1日閲覧。
参考文献
編集- ゴーテ, JHH、オーデル, ロビン 著、河合修治 訳『殺人紳士録』河合総合研究所、1986年。
- ウィルソン, コリン 著、中山元、二木麻里 訳『殺人の迷宮』青弓社、1994年。