ウダイカンバ
ウダイカンバ(鵜松明樺[3]、学名: Betula maximowicziana)は、カバノキ科カバノキ属の落葉高木。山地に生える。別名、サイハダカンバ[1]、マカバ(真樺)、マカンバとも呼ばれる。
ウダイカンバ | |||||||||||||||||||||||||||
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分類(APG III) | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Betula maximowicziana Regel (1868)[1][2] | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
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和名 | |||||||||||||||||||||||||||
ウダイカンバ | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
monarch birch |
名前
編集樹皮は少々濡れても燃えることから松明にも用いられ、鵜飼いの松明(鵜松明)から転じてウダイという名が付けられたとされる。アイヌ語で「本当の樺の皮が採れる木」という意味でシタッニとも呼ばれていた。樹皮は、北海道ではガンピと呼ばれて靴底や焚き付けに使われてきたが、高級紙の原材料であるガンピ(ジンチョウゲ科ガンピ属の落葉低木)とは異なることに注意[4]。
分布と生育環境
編集北海道と福井県・岐阜県以北の本州に分布する[3]。ウダイカンバは遺伝子的には北海道から東北北部に分布する北部集団、東北南部から本州中部に分布する南部集団の2つに分けられるといい、北上山地などには両者の混在する地域があるという[5]。
形態
編集落葉広葉樹の高木で、樹高は30メートル (m) 、胸高直径1 mに達する。樹皮は灰白色で横に長い筋が目立つ[3]。樹皮はシラカンバにもやや似るが、より黒ずんだ印象で幹回りも太く、横に剥がれる[3]。若い枝は暗紫褐色で、短枝が発達する[3]。葉は広卵形。花期は5 - 6月[3]。冬芽は互生し、雄果序以外は鱗芽で、芽鱗は4 - 5枚つく[3]。雄花序の冬芽は裸芽で、枝先につき、雌花序の冬芽は短枝の先につく[3]。葉痕は半円形で、維管束痕が3個つく[3]。
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樹形
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樹皮は横方向の筋が目立つ
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葉
生態
編集大木は急斜面の上部で土壌がB型の場所に多いという[6]
陽樹。山火事跡地や伐採跡地など何らかの原因で無立木地になったところに侵入して素早く成長する。ウダイカンバは埋土種子を形成し土壌中に大量の休眠した種子を蓄え[7] 好適な条件になるのを待っている。5年間埋土したものであっても50%以上の種子が発芽するという報告もある[8]。このような状態では地表の土壌やササを除去してやるだけで大量に発芽してくるという[9][10]
大型の蛾であるクスサン (Caligula japonica)は様々な植物の葉を食べるが、シラカンバと比較したときにウダイカンバを食べたほうが体重の増加がよく餌資源として魅力的であるという報告がある[11]
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クスサンの終齢幼虫
人間との関係
編集素材としてねじれが少なく強度も高く加工しやすいことなどから、広く住宅建材、家具、楽器などの原材料に利用。変わったところではピアノのハンマー、第二次世界大戦末期には航空機のプロペラにも採用された[12]。
ウダイカンバは、材質的に心材(年輪の中心付近)が淡い赤みを帯びた褐色であり、見栄え次第では高額で取引されるなど珍重されてきた。その色合いから家具業界では敢えてサクラと呼ぶこともある[13]。一方、ウダイカンバの中でも褐色の心材の割合が低く白色気味の辺材(樹皮に近い部分)が多い木材は、そのコントラストから鳥類のメジロの名をかけてメジロカンバもしくはメジロカバと呼び分けられ、木目で評価される突板などに使われていたが、一般的なウダイカンバと比較すると安い価格で流通するケースも見られた。しかし21世紀に入り、天然林の伐採量の減少から流通量も減少したこと、風合いも評価されるようになったことから高級材として扱われている[14][出典無効]。
脚注
編集- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula maximowicziana Regel ウダイカンバ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
- ^ a b Betula maximowicziana Tropicos
- ^ a b c d e f g h i 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 132
- ^ 渡辺資仲「ガンピ」『新版 林業百科事典』第2版第5刷 p128 日本林業技術協会 1984年
- ^ 津田吉晃 (2014) 日本の森林樹木の地理的遺伝構造(4)ウダイカンバ(カバノキ科カバノキ属). 森林遺伝育種3(1), p.23-29. doi:10.32135/fgtb.3.1_23
- ^ 真田悦子・塩崎正雄 (1988) ウダイカンバ大径木の生育立地(会員研究発表講演). 日本林学会北海道支部論文集36. doi:10.24494/jfshb.36.0_146
- ^ 渡辺一郎・滝谷美香・大野泰之 (2006) 厚真町広葉樹二次林での植生と埋土種子相の関係(会員研究発表論文). 日本森林学会北海道支部論文集54, p.30-32. doi:10.24494/jfsha.54.0_30
- ^ 水井憲雄 (1993) 林床に5年間埋めた広葉樹種子の発芽力(会員研究発表論文). 日本林学会北海道支部論文集41, p.187-189. doi:10.24494/jfshb.41.0_187
- ^ 後藤晋・津田智 (2007) ウダイカンバ二次林の資源保続に向けた地はぎ処理の試み. 日本森林学会誌89(2), p.138-143. doi:10.4005/jjfs.89.138
- ^ 杉田久志・猪内次郎・昆健児・岩根好伸・田口春孝・大石康彦 (2008) 強度間伐および重機による地表撹乱を行ったカラマツ人工林におけるウダイカンバの更新と成長. 東北森林科学会誌13(1), p.8-15. doi:10.18982/tjfs.13.1_8
- ^ 菊池伸哉・松木佐和子 (2010) クスサン幼虫の樹種選好特性 —北海道と岩手県のクスサン個体群における事例—. 東北森林科学会誌15(2), p.64-67. doi:10.18982/tjfs.15.2_64
- ^ “マカバ”. 木材図鑑 (木材博物館) 2014年11月12日閲覧。
- ^ “マカンバ”. 木材図鑑・マカンバ (府中家具協同工業組合) 2014年11月12日閲覧。
- ^ “13本で90万円!高級木メジロカバ違法伐採 容疑で4人逮捕”. 共同通信社. (2011年11月21日) 2014年11月12日閲覧。
参考文献
編集- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、132頁。ISBN 978-4-416-61438-9。