イーコール(古希: ἰχώρ, Īchōr[1])は、ギリシア神話に登場する神もしくは不老不死者の血(霊液)である。長母音を省略してイコルとも表記される。医学用語では膿漿を指すことも有る[2]。
古代ギリシアの詩人ホメーロスの叙事詩『イーリアス』中に2回登場し[3]、ディオメーデースが女神アプロディーテーに傷を負わせた時(原文の5章 339‐342の間)と、血を拭う時(416 「ἰχῶ」の形で、「しかく宣んして双の手をのし透明の血を拭ひ、之を癒やせば忽ちにアプロヂ,テーの苦は輕し。」[4])に使われた。
πρυμνὸν ὕπερ θέναρος· ῥέε δ᾽ ἄμβροτον αἷμα θεοῖο
ἰχώρ, οἷός πέρ τε ῥέει μακάρεσσι θεοῖσιν·
οὐ γὰρ σῖτον ἔδουσ᾽, οὐ πίνουσ᾽ αἴθοπα οἶνον,
τοὔνεκ᾽ ἀναίμονές εἰσι καὶ ἀθάνατοι καλέονται·
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アプロヂ,テーの血を流す、そは透明の清き液、
そは慶福のもろ/\の神明の身に宿る液、
神明素より麺麭(めんぱう)を喫きせず、葡萄の酒飮まず。
(故に人間の血に非ず、故に不滅の身と呼ばる)
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—『イーリアス』5章 339‐342[5]
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—土井晩翠訳[4]
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また、クレーテー島の神話に登場する神造の巨人タロースの体にも流れている。
- ^ Of uncertain etymology; Robert S. P. Beekes has suggested that is a foreign word (Etymological Dictionary of Greek, Brill, 2009, pp. 607–8).
- ^ Ichorの意味・使い方(英和辞典 Weblio辞書)
- ^ Kirk, note au vers 416 du chant V, p. 104.
- ^ a b イーリアス(ホメーロス作 土井晩翠訳 青空文庫)
- ^ Wikisouce:イーリアス原文