イグナーツ・シュパンツィヒ
イグナーツ・シュパンツィヒ[1](Ignaz Schuppanzigh, 1776年7月20日[2] – 1830年3月2日)は、オーストリアのヴァイオリニスト。
イグナーツ・シュパンツィヒ Ignaz Schuppanzigh | |
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基本情報 | |
生誕 |
1776年7月20日 神聖ローマ帝国 オーストリア大公国、ウィーン |
死没 |
1830年3月2日(53歳没) オーストリア帝国、ウィーン |
ジャンル | クラシック |
職業 | ヴァイオリニスト |
シュパンツィヒはベートーヴェンの師、友人であり、アンドレイ・ラズモフスキー伯爵の私設弦楽四重奏団を率いた。シュパンツィヒと彼の四重奏団はベートーヴェンの弦楽四重奏曲、特に後期作品を多く初演している。彼が1808年の暮れに創設したラズモフスキー四重奏団は、プロの楽団としては初めての弦楽四重奏団だったと考えられている。この楽団が生まれるまで、四重奏曲はアマチュアやプロの音楽家が必要に応じて集まって演奏されるのが主であった。
生涯
編集シュパンツィヒはウィーンに生まれた。父はテレジア陸軍士官学校の教授を務める人物だった。当初はヴィオラを得意としていたシュパンツィヒは、21歳の誕生日を迎える前にヴィルトゥオーソ・ヴィオラ奏者、ヴァイオリニスト、そして指揮者となっていた。彼はベートーヴェンにヴァイオリンのレッスンを施しており、その後2人の友情はベートーヴェンの死まで続くことになった。
四重奏曲の演奏、作曲に関する伝統が移行期を迎えることになったことには、シュパンツィヒが四重奏の演奏に身を投じたことが大きく影響している。ベートーヴェン以前の時期には、四重奏曲は腕のいいアマチュアやプロの奏者の技量に頼り、数回のリハーサルを経て演奏されていた。ベートーヴェンの四重奏曲には技術的に困難な箇所が多く含まれていたため、入念なリハーサルを行わずに完全に演奏することは不可能だった。こうした困難さにはユニゾンで奏する複雑な走句、クロスリズム、ヘミオラ、そして音調に特別な注意を払うべき難しい和音などがあった。シュパンツィヒがベートーヴェンに対してある難渋なパッセージについて不平を口にすると、ベートーヴェンはこう応じたとされる。「音楽の女神が舞い降りた時、私が君のみじめなフィドルのことなど気にかけると思っていたのか」
ラズモフスキー四重奏団はベートーヴェン以外の作曲の作品の初演も手掛けている。シューベルトは弦楽四重奏曲第13番『ロザムンデ』をシュパンツィヒに献呈した。
シュパンツィヒは若年期にはハンサムであったと伝えられるが、後年は深刻な肥満体型となっていた。ベートーヴェンは彼の肥満をからかって「我がフォルスタッフ卿」と呼び、コミカルな短い合唱作品『シュパンツィヒはならず者だ』 (Schuppanzigh ist ein Lump)[注 1] WoO.100を作曲して彼に捧げた。この曲のスケッチはピアノソナタ第15番の自筆譜の余白に書き込まれている。伝えられるところによると、晩年のシュパンツィヒはあまりにも指が太くなりすぎたため、楽器を正確な音程で弾くことが出来なくなったという。彼は麻痺を患いウィーンで没した。
脚注
編集注釈
- ^ または Lob auf den Dicken(訳例:肥えし者を讃えん)
出典
- ^ カナ転写に際しては右記資料を参考にした。“Pronouncing Dictionary of Music and Musicians” (PDF). IOWA public radio. 2014年5月25日閲覧。
- ^ Lorenz, Michael. “Four more months for Ignaz Schuppanzigh”. 2014年5月25日閲覧。
参考文献
編集- “Schuppanzigh, Ignaz,In Constant von Wurzbach: Biographisches Lexikon des Kaiserthums Oesterreich. 32. Band. Wien 1876. Online-Version”. 2014年5月25日閲覧。
- Clemens Hellsberg, Ignaz Schuppanzigh. Leben und Wirken, Phil. Diss., Wien 1979.
- The String Quartet: A History by Paul Griffiths (1985: Thames & Hudson). ISBN 0-500-27383-9.
- The Beethoven Quartet Companion, edited by Robert Winter and Robert Martin (1994: University of California Press).
- Cobbett, Walter Willson, editor (1929). Cobbett's Cyclopedic Survey of Chamber Music. Oxford University Press
- The New Grove Dictionary of Music & Musicians (ed. Stanley Sadie, 1980)