アンドロメダ座オメガ星
アンドロメダ座ω星(アンドロメダざオメガせい、ω Andromedae、ω And)は、アンドロメダ座の方角に約93光年離れた位置にある連星系である。19世紀から多重星として知られてきたが、中心の5等星が特徴の似た2つの恒星からなる連星であることがわかってきた[1]。
アンドロメダ座ω星 ω Andromedae | ||
---|---|---|
星座 | アンドロメダ座 | |
見かけの等級 (mv) | 4.83[1] | |
位置 元期:J2000.0 | ||
赤経 (RA, α) | 01h 27m 39.3811365238s[2] | |
赤緯 (Dec, δ) | +45° 24′ 24.073194122″[2] | |
視線速度 (Rv) | 14.83 km/s[3] | |
固有運動 (μ) | 赤経: 357.325 ミリ秒/年[2] 赤緯: -110.565 ミリ秒/年[2] | |
年周視差 (π) | 34.9441 ± 0.1873ミリ秒[2] (誤差0.5%) | |
距離 | 93.3 ± 0.5 光年[注 1] (28.6 ± 0.2 パーセク[注 1]) | |
絶対等級 (MV) | 2.6[注 2] | |
アンドロメダ座ω星の位置(丸印)
| ||
物理的性質 | ||
質量 | 主星: 0.960 ± 0.049 M☉[3] 伴星: 0.860 ± 0.051 M☉[3] | |
自転速度 | 主星: 48.5 km/s[1] 伴星: 43 km/s[1] | |
スペクトル分類 | F3 V + F5 V[1] | |
光度 | 8.0123 L☉[4] | |
表面温度 | 6,550 ± 80 K[5] | |
色指数 (B-V) | 0.42[1] | |
色指数 (U-B) | -0.01[1] | |
金属量[Fe/H] | -0.09(太陽比)[5] | |
年齢 | 2.3 ×109 年[5] | |
軌道要素と性質 | ||
軌道長半径 (a) | 0.038 ± 0.001 秒[3] | |
離心率 (e) | 0.142 ± 0.012[3] | |
公転周期 (P) | 254.9003 ± 0.1960 日[3] | |
軌道傾斜角 (i) | 62.49 ± 2.10 度[3] | |
他のカタログでの名称 | ||
アンドロメダ座48番星, ADS 1152, BD+44 307, CCDM J01277+4524A, FK5 1040, HD 8799, HIP 6813, HR 417, LTT 10517, SAO 37228[2] | ||
■Template (■ノート ■解説) ■Project |
位置
編集アンドロメダ座ω星は、アンドロメダ銀河の北東およそ9度の位置にみられる。アンドロメダ座の中では目立つ恒星ではないが、見かけの等級は肉眼でみえる明るさの4.83である[1]。ガイア衛星が測定した年周視差に基づいて、太陽系からの距離を計算すると、約93.3光年である[2]。
星系
編集重星
編集アンドロメダ座ω星は、重星カタログにおいてAからDの4つの恒星が分解できる多重星とされている[6]。発見したのはいずれもシャーバーン・バーナムで、1872年に離角が5秒のCとDの二重星がアンドロメダ座ω星から2分離れた位置にあることを発見、1881年にアンドロメダ座ω星から2秒離れた位置にBを発見した。CとDはいずれも10等星で、当初からアンドロメダ座ω星 (A) とは見かけ上の関係と考えられていた[1]。Bは12等星で、アンドロメダ座&omega星 (A) とは長周期連星とする見方と、見かけ上の関係とする見方がある[7][3]。
連星
編集アンドロメダ座ω星 (A) が、視覚的に分離できない連星であることが、2010年代になって明らかになってきた[1][3]。
元々、アンドロメダ座ω星のスペクトル型は、F型準巨星であるとみられていた[8]。絶対等級が、主系列星である場合より4分の3等級程明るかったからである。しかし、後発の分類では主系列星とされ、また、絶対等級の明るさは単独星でないことで説明できる、という主張もあった[1]。
アンドロメダ座ω星のスペクトルは、連星であることを示す吸収線の二重の谷や、視線速度の変化はみられなかった[9]。ただし、吸収線の輪郭には、単独成分の場合と一致しないくぼみがみられた。その後、オート=プロヴァンス天文台の91cm望遠鏡による高分散分光観測を重点的に行った結果、吸収線の輪郭にみられるくぼみは、幅の広い2本の吸収線が重なり合った結果と考えるのが妥当との結論に至り、アンドロメダ座ω星のスペクトルは、2つの恒星が合わさったものと考えられるようになった[1]。更に、ウィルソン山天文台の光学干渉計による観測から、連星の離角と方位角及びその時間変化を推定した結果、連星であることは確実となった[3]。
アンドロメダ座ω星 (A) 系を形成する2つの恒星は、スペクトル型がF3 VとF5 Vというよく似たF型主系列星と考えられる[1]。公転周期は約255日で、質量は大きい方が太陽の9割から太陽程度、小さい方が太陽の8割から9割程度と推定される[3]。
運動星団
編集アンドロメダ座ω星は、オリン・エッゲンによってヒアデス運動星団の一員であるとされ、輝星星表にもそう記載されている[10][11]。しかしその後、アンドロメダ座ω星の空間速度に、ヒアデス運動星団とのずれがみつかり、この関係は疑わしいとされ、ヒッパルコス衛星の観測結果を受けたヒアデス運動星団の構成星の一覧には、アンドロメダ座ω星は記載されていない[12][13]。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c d e f g h i j k l m Griffin, R. F. (2011-08), “Spectroscopic binary orbits from photoelectric radial velocities - Paper 219: omega Andromedae, HD 25768, HD 42994, and HD 215977”, The Observatory 131 (4): 225-248, Bibcode: 2011Obs...131..225G
- ^ a b c d e f g “ome And -- Double or multiple star”. SIMBAD. CDS. 2020年4月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k Farrington, C. D.; et al. (2014-09), “Separated Fringe Packet Observations with the CHARA Array. II. ω Andromeda, HD 178911, and ξ Cephei”, Astronomical Journal 148 (3): 48, Bibcode: 2014AJ....148...48F, doi:10.1088/0004-6256/148/3/48
- ^ Heller, René; Hippke, Michael; Kervella, Pierre (2017-09), “Optimized Trajectories to the Nearest Stars Using Lightweight High-velocity Photon Sails”, Astronomical Journal 154 (3): 115, Bibcode: 2017AJ....154..115H, doi:10.3847/1538-3881/aa813f
- ^ a b c Casagrande, L.; et al. (2011-06), “New constraints on the chemical evolution of the solar neighbourhood and Galactic disc(s). Improved astrophysical parameters for the Geneva-Copenhagen Survey”, Astronomy & Astrophysics 530: A138, Bibcode: 2011A&A...530A.138C, doi:10.1051/0004-6361/201016276
- ^ Dommanget, J.; et al. (2002), “Catalogue of the Components of Double and Multiple Stars”, VizieR On-line Data Catalog: I/274
- ^ Mason, Brian D.; et al. (2019-10), “The Washington Visual Double Star Catalog”, VizieR On-line Data Catalog: B/wds, Bibcode: 2019yCat....102026M
- ^ Herbig, George H.; Spalding, John F., Jr. (1955-01), “Axial Rotation and Line Broadening in Stars of Spectral Types F0-K5”, Astrophysical Journal 121: 118-143, Bibcode: 1955ApJ...121..118H, doi:10.1086/145969
- ^ Abt, H. A.; Levy, S. G. (1976-03), “Multiplicity among solar-type stars”, Astrophysical Journal Supplement Series 30: 273-306, Bibcode: 1976ApJS...30..273A, doi:10.1086/190363
- ^ Eggen, Olin J. (1960), “Stellar groups, VII. The structure of the Hyades group”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 120: 540-562, Bibcode: 1960MNRAS.120..540E, doi:10.1093/mnras/120.6.540
- ^ Hoffleit, D.; Warren, W. H., Jr. (1995-11), “Bright Star Catalogue, 5th Revised Ed.”, VizieR On-line Data Catalog: V/50, Bibcode: 1995yCat.5050....0H
- ^ Breger, Michel (1968-10), “Abundance Homogeneity and Absolute Magnitudes of the Hyades Moving Group”, Publications of the Astronomical Society of the Pacific 80 (476): 578-588, Bibcode: 1968PASP...80..578B, doi:10.1086/128692
- ^ Perryman, M. A. C.; et al. (1998-03), “The Hyades: distance, structure, dynamics, and age”, Astronomy & Astrophysics 331: 81-120, Bibcode: 1998A&A...331...81P
参考文献
編集- R. バーナム Jr. 著、斉田博 訳『星百科大事典 改訂版』地人書館、1988年2月10日、68頁。ISBN 4-8052-0266-1。