アンドロメダー
アンドロメダー(古希: Ἀνδρομέδα, Andromedā)、あるいはアンドロメデー(古希: Ἀνδρομέδη, Andromedē)は、ギリシア神話の女性で、エチオピア王ケーペウスと王妃カッシオペイアとの間に生まれた王女である。長母音を省略してアンドロメダ、アンドロメデとも表記される。のちに星座となる。
ペルセウスの妻となり、ペルシア王家の祖となったペルセウス(ペルセース)、アルカイオス、ステネロス、ヘレイオス、メーストール、エーレクトリュオーン、ゴルゴポネーを生んだ[1]。
神話
編集アンドロメダーは母カッシオペイアが自らの美貌が神に勝ると豪語したことから、怒った神々によって怪物(ケートス)の生贄とさせられようとして、波の打ち寄せる岩に鎖で縛りつけられた。そこを、ゴルゴーンの三姉妹の一人、メドゥーサを退治してその首級を携えてきたペルセウスが通りかかった。ペルセウスは、怪物にメデューサの首を見せて石にし、アンドロメダーを救出した。アンドロメダーは後にペルセウスの妻となった[2]。その後、アテーナーが星座として天に召し上げた[3]。
系図
編集
影響その他
編集アンドロメダーの物語は日本・欧米ともによく知られている。アンドロメダーを描いた絵画が残り、アントニオ・ヴィヴァルディは「救われたアンドロメダ」というセレナータを作曲している。
アンドロメダーが生け贄になった時の状態は、裸体だった(裸にされて海岸に据えられた)という設定と、着衣だった(白い服の着用など。なお、この衣服も他のギリシア神話の人物と同じような形で、古代アフリカ人の衣服ではない)という設定がある。名画などでは前者の設定が多く、生け贄としての姿は全裸のものが多い。しかし、映画作品・星座物語(書籍・プラネタリウムなど)のストーリー・絵を伴うアンドロメダ座の星図では着衣であることが多い。夫となったペルセウスも全裸で描かれることがあるが、ペルセウスが着衣であっても、アンドロメダが全裸で描かれる絵画が複数確認できるのとは異なり、その逆(アンドロメダが着衣、ペルセウスが全裸)という描写は殆ど見られない(全くないかは不明)。
なお彼女は白人の姿で描かれることが多いが、エチオピア王国の王女ということから黒人と看做されるのが神話時代からの定説である[4]。 しかし古代の歴史学者には、紀元前の古代ギリシャ文学の内容から、エチオピア王国のアンドロメダは手を身体の左右に十字に広げ鎖で海辺の岩につながれた、白衣をまとったギリシャ系白人の姫、と定める者もいる[5][6]。
アンドロメダ型神話
編集英雄が、強力な怪物と戦って女性を救い出すという神話の定型の一つ。ペルセウス型神話、ペルセウス=アンドロメダ型神話ともいわれる。以下は例。
脚注
編集- ^ アポロドーロス、2巻4・3、4・5。
- ^ アポロドーロス、2巻4・3、4・4。
- ^ エラトステネス『星座論』、17。
- ^ 『ギリシア・ローマ神話』トマス・ブルフィンチ 角川書店
- ^ アフリカ・エチオピア王国のアンドロメダには、肌の白さを称えられた白人の乙女という矛盾があった。紀元前4世紀エウリピデス著作のソフォクレス(古代ギリシャ悲劇)のうち、多くの残存が残る失われた戯曲『アンドロメダ』からのテーマで、ケフェウス王はアンドロメダ姫の白い肌の色から王妃カシオペアの姦通を信じ、この理由でアンドロメダ姫はエチオピア王国の海の怪獣ケートスに捧げられることになっていた、という物語筋立てでの戯曲の断片多数が残る。西暦2世紀のフィロストラトス(ローマ帝国時代のソフィスト:プレゼンテーション方法弁論教師)はこの点について『この神話物語では、エチオピア人は、おそらくアンドロメダの両親も含めて、全て黒人で、他方、アンドロメダ自身は白人』である、とした。現在まで発掘された紀元前6世紀ギリシャ壺絵から西暦1世紀の古代ローマ帝国ポンペイ壁画まで、神話物語のアンドロメダ姫は白人のギリシャ人として描かれている。
- ^ Dragons, Serpents, and Slayers in the Classical and Early Christian Worlds: A Sourcebook, Daniel Ogden, 2013, p167, ISBN 0-19-9323-74-7, 9780199323746. (『原典史料集、古代と初期キリスト教時代のドラゴン、海蛇、退治する勇者達』, p.169, ダニエル・オグデン(この分野の代表的古代歴史学者、英国エクゼター大教授)、オックスフォード大プレス, 2013年)
外部リンク
編集- エラトステネスの星座物語 17. アンドロメダ座
関連項目
編集- アンドロメダ座
- ヤッファ - 神話のアンドロメダの岩があるとされる
- Damsel in distress - 「囚われの姫君」