アンカーストア
アンカーストア(英語: anchor store、アンカー・ストアとも表記)は、ショッピングセンターやショッピングモールにおいて、集客の中核となる最も大規模な小売店舗のことであり、通常は百貨店か、おもな小売りチェーンの大規模店舗である[1]。ただし、場合によっては、飲食店や娯楽施設がアンカーストアとされることもある[1]。
同様の意味で用いられる表現としては、アンカーテナント[2]、キーテナント[3]、メインテナント、マグネットストア[4]などがあり、英語では「ドロー・テナント (draw tenant)」ともいう。日本語のアンカー店[5]、核店舗、核テナントも同義とされる[4]。また文脈によっては単にアンカーと称することもある[5]。
これとは別に、ショッピングセンターとは無関係に、多数の店舗を展開するチェーンにおいて比較的少数の特に重要な店舗を、アンカーストア、アンカー店と称することがある[6]。
アメリカ合衆国のショッピングセンターにおけるアンカーストア
編集ショッピングセンターがいちはやく20世紀半ばから発達したアメリカ合衆国では、20世紀末の段階で、ショッピングセンターの中核となるアンカーストアの有無や、地元資本ではなく全国的なチェーンがアンカーストアとして出店するか否かが、ショッピングセンターの経営を左右すると考えられるようになっていた[7]。アンカーストアは、当初はシアーズ・ローバックに代表される百貨店であったが、百貨店業態の衰退とともに、他の大型店舗をアンカーストアに据える動きも出てきている[5][7]。
魅力的なアンカーストアの出店は、ショッピングセンターの成功を左右するため、デベロッパーはアンカーストアに対して、他のテナントよりも有利な出店条件を提示することが一般的であるとされる[8]。また、他の比較的小規模なテナントは、特定のアンカーストアが撤退した場合に応じた内容を契約に盛り込むことを求めることがしばしばある[9]。
大規模なショッピングセンターの場合には、アンカーストアが複数おかれることもあり、2つのアンカーストアがある場合は、施設の両端に配置されることがよくある[9]。1992年に開業した、世界最大級の規模をもつモール・オブ・アメリカは、四角形に近い巨大な施設の四隅に、シアーズ、ノードストローム、メイシーズ、ブルーミングデールズと4つの百貨店をアンカーストアとして配置していたが[10]、このうちブルーミングデールズは2012年に撤退した[11]。このように、もともと複数のアンカーストアを配していたショッピングセンターの中には、その一部が撤退した状態で営業を継続している例も増えている[5]。
アメリカ合衆国などにおいてアンカーストアとされることがよくある例としては、百貨店であるシアーズ[5][7]、メイシーズ[5][9]、ノードストローム[9]、フォン・マウアー[9]、J.C.ペニー[5][9]、ロード・アンド・テイラー[9]、ニーマン・マーカス[5]、サックス・フィフス・アベニュー[5]、ヤンカース、コールズ、バーグナーズ、ディラーズ、カーソンズ、ハーバーガーズ、エルダー・ビアマン、ボストンストア、ベルク、ブルーミングデールズ、ザ・ボントンや、スポーツ用品などを扱うディックス・スポーティング・グッズ、バス・プロ・ショップスなどがある。かつて存在した同様の例としては、百貨店ではモンゴメリー・ワード、マーヴィンズ、イートンズ(カナダの百貨店)、ラザルス、フォーリーズ、マーシャル・フィールズ、ヘクツ、パリジャン、ザンガー=ハリスなどがあり、スポーツ用品店ではギャリアンズがある。
日本のショッピングセンターにおけるアンカーストア
編集日本では、ショッピングセンターの規模によって、アンカーストア(核店舗)の業態も異なるものとされており、最も小規模なネイバーフッド・ショッピングセンター(住宅街などで展開されているショップ)ではスーパーマーケットやドラッグストア、これより一段階規模が大きいコミュニティ・ショッピングセンターではディスカウントストア、ゼネラルマーチャンダイズストアなどがアンカーストアとなり、さらに大きいリージョナル・ショッピングセンター以上の規模となると、百貨店や大型専門店がこれに加わるとされる[12]。
チェーン店におけるアンカーストア
編集アンカーストア、アンカー店は、ショッピングセンターとは無関係に、多数の店舗を展開するチェーンにおいて比較的少数の特に重要な店舗を指す表現として用いられることがある[6]。
脚注
編集- ^ a b “新規開拓用語集 アンカーストア”. 新規開拓.com/株式会社セルプス. 2018年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年5月4日閲覧。
- ^ “寄稿論文 SCのアンカーテナントとは何か” (PDF). ダイナミックマーケティング社. 2016年5月4日閲覧。 - 初出は、SC JAPAN TODAY 2013年12月号。
- ^ 西山貴仁 (2021年4月14日). “ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営21 SCの定義や「あるべき論」からの脱却が、コロナ後を生き抜くのに重要な理由”. DIAMOND Chain Store オンライン. 2022年4月27日閲覧。
- ^ a b “新規開拓用語集 テナント”. 新規開拓.com/株式会社セルプス. 2017年11月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年5月4日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i “20年以内に全米ショッピングモールの半数が消滅する”. フランチャイズタイムズジャパン. 2016年5月5日閲覧。
- ^ a b “トミーヒルフィガー心斎橋店オープン 世界24店舗目のアンカーストア 西条真義社長「日本は今後も重要な市場」”. Apparel Business Magazine/繊維流通研究会. 2016年5月5日閲覧。 “今回の心斎橋店についてトミーヒルフィガージャパンの西条真義社長は「日本は今後も極めて重要な市場」と前置きし、「西日本でも屈指の集客力を持つ心斎橋にアンカー店をオープンすることはマーケティング的にも意味がある。...”
- ^ a b c Stoffel, Jennifer (1988年8月7日). “WHAT'S NEW IN SHOPPING MALLS; Putting a Bloomingdale's In Towns Big and Small”. The New York Times 2016年5月4日閲覧。
- ^ 原田英生『アメリカの大型店問題:小売業をめぐる公的制度と市場主義幻想』、29-31頁。 Google books
- ^ a b c d e f g “Anchor Store”. Shopify. 2016年5月4日閲覧。
- ^ “Mall of America Map Printable”. chainimage. 2016年5月4日閲覧。
- ^ Stych, Ed (2012年1月4日). “Mall of America losing anchor store Bloomingdale's”. Minneapolis/St.Paul Business Journal 2016年5月4日閲覧。
- ^ 山口正浩『スーパー合格販売士検定2級重要過去問題傾向の分析と合格対策』、63頁。 Google books