アレクサンドロス東征記

アレクサンドロス東征記』(Anabasis Alexandriギリシア語: Ἀλεξάνδρου ἀνάβασις Alexándrou anábasis)は、2世紀にアッリアノスにより書かれた、アレクサンドロス3世(アレクサンドロス大王)の東征の記録である。

ギリシャ語 anabasis は、海辺から内陸までの遠征を指すので(これに対し katabasis は「内陸から海辺への旅」を意味する)、原題の字義通りの意味は『アレクサンドロスの内陸への遠征』である。

著者アッリアノスは、アレクサンドロス3世の軍の指揮官で彼の後継者の一人であるプトレマイオス1世の書いたアレクサンドロス3世の伝記『アレクサンドロス大王伝』などの資料をもとに本書を記した。本書は、アレクサンドロス3世の遠征に関して現存する数少ない完全な報告書の一つであり、アレクサンドロス3世に関する評伝の中で最も重要なものと評されている。ただし、本書は軍事的記述を中心とする歴史書であり、アレクサンドロスの私生活やギリシャの政治における彼の役割などに関してはほとんど記載されていない。

構成

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Alexandri anabasis(1575年)

全7巻から成るが、ほとんどの写本で、第8巻・補巻・別巻といった位置付けで『インド誌』(: Ινδική ξυγγραφή)が付属されている[1]

第8巻
  • 『インド誌』
    • 第一部 - インドの自然と社会
      • インドス川(インダス川)以西の種族。ニュサの町の由来。
      • インドス川(インダス川)以東のインドについて。大きさ、インドス川(インダス川)とガンゲス川(ガンジス川)、パリンボトラ(パータリプトラ)。
      • ディオニュソスの伝説と、原始インド。
      • 非侵略的なインドの歴史。インドの葬制。最大の町パリンボトラ(パータリプトラ)について。
      • インド社会の7つの種姓(哲学者、農民、牧人、職人・商人、戦士、監督者、高官)。
      • インド動物誌 - 象、虎、大蟻、大蛇、毒蛇。
      • インドの風俗 - 衣服、化粧法、武器武具、馬具、乗り物、女性の貞操と結婚。
    • 第二部 - ネアルコスの沿岸航海
      • ヒュダスペス川畔での船団編成。インドス川(インダス川)水系の川下り開始。
      • インドス川(インダス川)河口からペルシア湾奥までの探査に対するアレクサンドロスの強い願望。艦隊指揮の任務を引き受けたネアルコス。
      • 艦隊の出航。アラビス川の河口に到達。コカラで食料調達。トメロス川河口で土着民と戦闘。
      • ガドロシア沿岸の「魚食民」の地を航行。モサルナに至る。
      • 「魚食民」について。
      • 鯨と遭遇。カルマニア沿岸に入る。
      • エリュトラ海(ペルシア湾)入り口(ホルムズ海峡)に差し掛かる。マケタ岬を望見。対岸バンダレ・アッバースに上陸休養。アレクサンドロスと再会。
      • ペルシア湾東岸沿いに航行。エウプラテス川(ユーフラテス川)河口に到達。
      • ティグリス川支流まで遡り、スーサへの渡河点で陸行軍と合流。全航程完結。
      • アラビア半島周航の地理的可能性について。

日本語訳

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  • 大牟田章 訳『アレクサンドロス大王東征記およびインド誌』 本文篇・註釈篇、東海大学出版会、1996年。 ISBN 4486013557
  • 大牟田章 訳『アレクサンドロス大王東征記 付インド誌』 (上・下)、岩波書店〈岩波文庫〉、1996年。 
  • オーレル・スタイン、フラウィオス・アッリアノス『アレクサンドロス古道』同朋舎出版、1985年。国立国会図書館書誌ID:12184077 ISBN 4-8104-0441-2
    • 本文中の表記は「アレクサンドロス遠征記」。以下の解説付き。
    • オーレル・スタイン 著「インダスに至るアレクサンドロスの道」
    • ウイリアム・ウッドソープ・ターン 著「バクトリアからインダスへ」

脚注

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  1. ^ 大牟田 1996b, p. 462, 『東征記・下』.
  2. ^ 大牟田 1996b, p. 349, 「訳者解説」『東征記・下』.
  3. ^ 現在のパキスタンハイデラバードないしはその北東75kmにあるバーマナバード。後者が有力[2]

参考文献

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脚注に未使用の資料。

関連項目

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外部リンク

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