アラビアオリックス
アラビアオリックス (Oryx leucoryx) は、哺乳綱偶蹄目(鯨偶蹄目とする説もあり)ウシ科オリックス属に分類される偶蹄類。
アラビアオリックス | |||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
アラビアオリックス Oryx leucoryx
| |||||||||||||||||||||||||||
保全状況評価[1][2] | |||||||||||||||||||||||||||
VULNERABLE (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) ワシントン条約附属書I
| |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||
学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Oryx leucoryx (Pallas, 1777)[3] | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
アラビアオリックス[3][4] | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Arabian oryx[3][4] |
分布
編集イエメン、イラク、エジプト(シナイ半島)、クウェート、シリアでは絶滅[1]。アラブ首長国連邦、イスラエル、オマーン、サウジアラビア、ヨルダンに再導入[1]。
形態
編集頭胴長(体長)160 - 178センチメートル[4]。肩高76 - 86センチメートル[3][4]。体重65 - 75キログラム[3][4][5]。全身の毛衣は白い[4]。これにより太陽光線を反射し、熱を吸収しづらくなると考えられている[5]。顔に黒褐色の斑紋が入る[3][4]。額と鼻面の暗色斑は繋がらず、眼の周囲と喉の暗色斑が繋がる[3]。体側面に黄褐色や黒褐色の帯模様が入る[3]。蹄上部を除く四肢は濃褐色や黒[3]。冬季になると黒くなり、寒い時に熱を吸収しやすくなると考えられている[5]。
生態
編集以前は石が多い砂漠に生息していた[3]。オスは単独で生活するか、若い個体のみで群れを形成する[4]。メスは8 - 10頭からなる小規模な群れを形成して生活する[4]。
多肉植物を食べるが、低木の若芽、地下茎、根、果実なども食べる[4]。
繁殖様式は胎生。春季から夏季になると1頭のオスと十数頭のメスからなる群れを形成し、時に100頭にもなる大規模な群れを形成する事もある[4]。オス同士はメスを巡って角を突きあわせて争う[4]。妊娠期間は約240日[4]。主に10月から翌5月に、1回に1頭の幼獣を産む[4]。授乳期間は約4か月半[4]。生後2 - 2年半で性成熟する[4]。
人間との関係
編集生息地では食用や薬用とされるだけでなく、毛皮が利用される事もあった[4]。
19世紀には激減し、アラビア半島を除いてみられなくなった[4]。1950年代になると道路が整備されたこともあり、自動車や飛行機から銃器を用いて狩猟されるようになった[4]。野生個体は、1972年に絶滅した[6]。1962年から野生個体3頭を捕獲(4頭を捕獲したが1頭は死亡)して世界各地で飼育されていた6頭とあわせた計9頭がアリゾナ州のフェニックス動物園に集めて飼育下繁殖され、1980年のオマーンをはじめとして飼育下繁殖個体の再導入が進められている[6]。2017年の時点では再導入された個体数は、安定しているか増加傾向にあると考えられている[1]。一方でオマーンでは1993年には個体数が400頭まで増加したとされるが、1999年には飼育目的の密猟により個体数が100頭まで減少した例がある[6]。オマーンの保護区はユネスコの世界遺産に認定されていたものの、保護区の約90 %を縮小し採掘調査を許可したこともあって、2007年に世界で初めて登録を抹消された世界遺産となった[1][7]。過放牧による生息地の破壊、干ばつによる影響も懸念されている[1]。サウジアラビアでも1998 - 2008年にかけて、干ばつにより個体数が減少した[1]。1975年のワシントン条約発効時から、ワシントン条約附属書Iに掲載されている[2]。
アラビアオリックスはアラブ首長国連邦、カタール、ヨルダン、バーレーン、オマーンなどのアラビア半島諸国で国獣に指定されている[8]。とくにカタールでは国の象徴としてしばしば用いられ、カタール航空のロゴ[9]や、カタールで開催された2006年アジア競技大会のマスコットもアラビアオリックスにもとづく[8]。
出典
編集- ^ a b c d e f g IUCN SSC Antelope Specialist Group. 2017. Oryx leucoryx. The IUCN Red List of Threatened Species 2017: e.T15569A50191626. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2017-2.RLTS.T15569A50191626.en. Downloaded on 19 May 2021.
- ^ a b UNEP (2021). Oryx leucoryx. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. [Accessed 19/05/2021]
- ^ a b c d e f g h i j k l 今泉吉典 「ブルーバック亜科の分類」『世界の動物 分類と飼育7 (偶蹄目III)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1988年、36 - 59頁。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 小原秀雄 「アラビアオリックス」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、154 - 155頁。
- ^ a b c Mark Stanley Price 「アラビアオリックス 極限生活のスペシャリスト」今泉吉晴訳『動物大百科4 大型草食獣』今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編、平凡社、1986年、132 - 133頁。
- ^ a b c 永戸豊野 「アラビアオリックス、再び危機に」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、43頁。
- ^ Arabian Oryx Sanctuary, UNESCO World Heritage Convention
- ^ a b Seven national animals from the Middle East and what they represent, Middle East Eye
- ^ Qatar Airways Logo, logos-world.net
- ^ 日橋一昭 「レイヨウ渡来考」『世界の動物 分類と飼育7 (偶蹄目III)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1988年、136 - 142頁。