アマルガム修復
アマルガム修復(アマルガムしゅうふく)とは、歯の修復に際して、修復材料にアマルガムを用いる修復法。日本では、1970年代まで歯科修復材料として頻繁に使われていたが、近年では水銀の害の問題が大きいため、あまり使用されていない。しかし、安価であることから未だに使用している国は多い。アマルガムが歯科修復材料として使われだしたのは1826年のフランスといわれる。
種類
編集銅アマルガムと、銀スズアマルガムがある。銅アマルガムは銅と水銀の合金に少量のスズまたは銀が添加されている。銅の殺菌性などにより活用されていたが、銅や水銀の溶出などの問題があり、現在は使用されていない。
現在使用されているのは、銀スズアマルガムで、銀とスズの合金に銅や亜鉛を添加した粉末を、水銀で練ったものである。下記は銀スズアマルガムの分類である。
形状による分類
編集金属粉末の形状により、3種類に分けられる。
- 削片状アマルガム
- 球状アマルガム
- 混合型アマルガム
組成による分類
編集金属粉末の組成により、大きく2種類に分けられる。
従来型アマルガム
編集練和により
Ag・Sn+Hg→Ag・Sn(γ相:未反応合金)+Ag・Hg(γ1相)+Sn・Hg(γ2相)
という反応によってアマルガムができる。γ2相は、う蝕に弱く、機械的性質も悪い。これが従来型アマルガムの弱点となっている。
無亜鉛型アマルガム
編集従来型アマルガムと比較して亜鉛が存在しないこと以外に違いはない。亜鉛は元々合金作製時の酸化防止などのメリットはあるが、窩洞充填の後は異常膨張を引き起こす原因となるため、通常の従来型アマルガムでは安定性が低下してしまう。無亜鉛型アマルガムは亜鉛を抜くことで安定性を確保した。
高銅型アマルガム
編集混合型
編集単一相型
編集長所
編集など
短所
編集など
適応
編集ほぼすべての窩洞に適用できるが、審美性が低いため通常前歯では用いない(ただし、裏側には用いられることがある)。I級窩洞が最も適応する。ただし、I級窩洞でも範囲が広い場合は金属インレー等を用いた方がよいと言われている。
手順
編集窩洞形成→隔壁の作製→練和→充填→バニッシング→隔壁の撤去→彫刻→咬合調整→(完全硬化待ち)→研磨
窩洞の形成
編集注意すべき点として
- 抵抗形態
- 辺縁の厚さを90°に近くするため、咬合面と隣接面の移行部ではリバースカーブを取らせる。
- 保持形態
- 箱形または内開き型とする。
- 鳩尾型等の形態で強化。
- 窩縁形態
- 窩縁斜面は作らない。
等がある。
隔壁の作製
編集II級窩洞や場合によってはI級窩洞においても、マトリックスバンド等で隔壁を用意し、固定する。
練和
編集合金粉末と水銀を必要量計量し、練和する。手練和と機械練和があるが、通常、機械練和を用いる。練和は不足しても多孔性になるなどし、機械的性質は落ちるが、過剰でも収縮が大きくなるなどの問題があるので、気をつける必要がある。
充填
編集アマルガムキャリアで窩洞に運び、圧接しながら充填を行う。この際、アマルガム泥に水分がつくと性質が低下する。
バニッシング
編集バニッシャーにより中央から辺縁に向け圧接、同時に余剰分を除去する。
隔壁の撤去
編集彫刻
編集周囲の歯とスムーズに移行する形態、また溝も彫刻する。
咬合調整
編集咬合紙等を利用し、咬合状態を調整する。
完全硬化待ち
編集この後数時間は食事をしてはならず、半日程度は硬い食物は避ける。完全硬化まで、最低24時間、可能ならば1週間程度経過させた後研磨を行う。
研磨
編集注水下、アマルガムの反応生成物ができないよう、高温高圧を避けながら研磨する。
脚注
編集出典
編集- ^ “アマルガム水銀中毒からの生還 口の中に潜む恐怖”. 単行本 .
関連項目
編集外部リンク
編集- 日歯学会発第57号に対する答申書 医療環境問題検討臨時委員会(P.13〜) I. 歯科用材料の使用に関わる医療ならびに自然環境への影響について 3. アマルガム