アマゾンの戦い (ルーベンス)
『アマゾンの戦い』(アマゾンのたたかい、独: Die Amazonenschlacht、英: The Battle of the Amazons)、または『アマゾノマキア』(英: Amazonomachy)は、フランドルのバロック期の巨匠ピーテル・パウル・ルーベンスが1618年ごろ[1]、板上に油彩で制作した絵画である。古代ギリシア軍と、女性だけの戦士のアマゾン軍との神話上の戦闘を描いている[2][3]。デュッセルドルフ絵画館にあった作品である[2][4]が、1806年以来、ミュンヘンのアルテ・ピナコテークに所蔵されている[2][3][4]。
ドイツ語: Die Amazonenschlacht 英語: The Battle of the Amazons | |
作者 | ピーテル・パウル・ルーベンス |
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製作年 | 1618年ごろ |
素材 | 板上に油彩 |
寸法 | 121 cm × 165.5 cm (48 in × 65.2 in) |
所蔵 | アルテ・ピナコテーク、ミュンヘン |
作品
編集この作品においては、レオナルド・ダ・ヴィンチ作『アンギアーリの戦い』が重要な役割を果たしている[2]。ルーベンスはレオナルドの作品にもとづいた複製を制作していた[5]。さらに、本作の構図は、直接的にティツィアーノの『カドーレの戦い』 (1577年焼失) にもとづいている[3]。その他、ギリシア軍とアマゾン軍の戦闘を表現している古代の石棺の浮彫も本作に影響を与えている[3]。
橋を中心にして人馬が渦巻き状に密集し、激烈な戦いが繰り広げられており、とりわけ橋の右手から水面に落下するアマゾン軍と馬の表現はすさまじい[3]。ギリシア軍が左から押し寄せており、彼らが勝者となるであろう。緊迫した主題に、素早く流れるような絵画様式が対応している。力強い筆致で、ルーベンスは川から上がる水しぶき、たなびく馬のたてがみ、攻撃しようとする兵士の動きの力を表現した[4]。 ドイツの美術史家ハインリヒ・ヴェルフリンは、瞬間的運動を視覚に忠実に再現しようとする傾向をバロック美術の重要な特質として指摘しているが、本作は本来非時間的な芸術である絵画に運動の印象が可能な限り表現された例といえるだろう[3]。
この絵画は以前、アントウェルペンの富裕な商人コルネリス・ファン・デル・ヒーストのコレクションにあり、1630年代にヴィレム・ファン・ハーヒトが制作したファン・デル・ヒーストの画廊の絵画に見ることができる[3]。
ギャラリー
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ルーベンス『アンギアーリの戦い』 (レオナルド・ダ・ヴィンチの作品にもとづく模写)、1630年
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ルーベンス『カドーレの戦い』 (ティツィアーノの作品にもとづく模写)、17世紀前半
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ヴィレム・ファン・ハーヒト『コルネリス・ファン・デル・ヒーストの画廊』、1628年
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ヴィレム・ファン・ハーヒト『カンパスプを描くアペレス』、1630年
脚注
編集- ^ Peter Paul Rubens, Battle between horsemen オランダ美術史研究所
- ^ a b c d C.H.Beck 2002年、95頁。
- ^ a b c d e f g 山崎正和・高橋裕子 1982年、82貢。
- ^ a b c “Peter Paul Rubens (1577-1640) Die Amazonenschlacht, um 1618”. アルテ・ピナコテーク公式サイト (英語). 2024年8月12日閲覧。
- ^ M. Jaffé, Rubens è un italiano, in Rubens. Catalogo completo. Milano, Rizzoli, 1987, pp. 66–84. ISBN 881725701X.
参考文献
編集- C.H.Beck『アルテ・ピナコテーク ミュンヘン』、Scala Pulblishers、2002年刊行 ISBN 978-3-406-47456-9
- 山崎正和・高橋裕子『カンヴァス世界の大画家13 ルーベンス』、中央公論社、1982年刊行 ISBN 978-4-12-401903-2