たこわさび
たこわさびは、タコを用いた日本の食品(海産物加工品)の一つである。イイダコなどのタコを生のまま[1]、ワサビ、酒、塩麹、調味料などとともに和えて塩辛にしたもの[2]。略して「たこわさ」ともいう[3]。
概要
編集特徴
編集歯応えあるタコの食感に加え、ワサビの辛味と豊かな風味の調和が特徴で[4]、酒の肴として最適とされ[5]、枝豆と並ぶ居酒屋の定番メニューともいわれる[3]。解凍してすぐ食べられる冷凍食品もあるため、居酒屋のお通しとしても愛用されている[6]。栄養面ではタンパク質が豊富で低カロリーであり、肝臓の働きを活発にし胃を保護してアルコールの吸収を穏やかにするとして、酒の肴に適しているとの意見もある[7]。
商品開発
編集三重県三重郡菰野町に本社を置く食品メーカーのあづまフーズ株式会社が「たこわさび」[8][9]として商品化したものが最初である[10][11]。そのため同社では「元祖たこわさび」と称している[8][10]。
あづまフーズでは「イカの塩辛は昔からあるのに、なぜタコの塩辛はないのか?」という動機から、タコの内臓(ワタ)を使用せず食べやすく塩辛に仕上げた商品「たこ生造り」を開発し販売していた[10]。この商品が売れたことから、三重県四日市市の同社工場では、タコを使用したさらなる新商品の開発を試みていた[10][11]。1992年(平成4年)の初夏、同社の営業部長(当時)が「たこ生造り」をボウルに入れ、偶然目に留まった茎ワサビと混ぜてみた。当初、色合いなどに難色が示されていたが社員らで試食したところ美味であったため商品化することとし、「たこわさび」の商品名で市販される運びとなったものである[10][11][10][11]。
普及
編集日本国内
編集そして1992年の新商品展示会で、外食チェーンストアを運営するモンテローザの大神輝博社長の目に留まり、翌1993年(平成5年)にモンテローザ運営の居酒屋「白木屋」で正式メニューとして採用された[12]。さらに1990年代の居酒屋ブームに乗って日本全国の居酒屋に広まることとなった[5][13]。
2000年(平成12年)の居酒屋人気メニューのアンケートで第1位[5]、2012年(平成24年)の情報番組『ZIP!』(日本テレビ)での「女子が好きな“オジサン系おつまみ”ランキング」でも第1位を獲得[4]。同年にバラエティ番組『もしものシミュレーションバラエティー お試しかっ!』(テレビ朝日)で紹介された白木屋の人気メニューベスト10では第3位[14]、2015年(平成27年)のgooランキング「日本酒にぴったりな『つまみ』ランキング」では第2位に選ばれている[2]。
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居酒屋でつまみとして提供されるたこわさび
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飲食店のたこわさび(パセオにて)
日本国外
編集日本国外でもアジアをはじめとする海外市場に定着しており、アメリカでの居酒屋やラーメンなどの日本食ブームに伴い、日本食レストランのメニューにも加わり始めている[5]。アメリカ人にとっては不思議な食べ物ながら、一度食べると「病みつきになる」との声もある[15]。
日本のたこわさびと違う点としては、あづまフーズでは生魚の苦手な人々の多い北アメリカ向けに、生ダコではなく茹でダコを使用したたこわさびも開発・販売している[5]。また欧米の食文化を考慮した食べ方も考案され、カナダのバンクーバーにある日本食レストランでは、たこわさびの小鉢に海苔を添え、たこわさびを海苔で包むことでナチョスのようなスナック感覚で食べられるよう工夫することで好評を博し、この食べ方は他店にも普及して人気を呼んでいる[5]。
商品開発について
編集テレビ朝日のバラエティ番組『シルシルミシルさんデー』[13]や、海外タブロイド紙の『日刊サン』[5]が「たこわさび」を取り上げた際に、「あづまフーズで失敗をした社員への『罰ゲーム』として作られた」「それが意外にも美味であったため商品化された」と報道した[13][5]。これを受けて「罰ゲーム」という噂がまとめサイトなどで面白おかしく拡散されたものが、エキサイトなどのポータルサイトにも転載されることで広まっていった[16]。
さらに「発祥は罰ゲーム」と報じたバラエティ番組やタブロイド紙を出典として、ウィキペディア日本語版(以下「Wikipedia」)の「たこわさび」の記事にも「失敗をした社員への罰ゲームとして作られた」と記述されていた[11]。そしてそのWikipediaの記述を元にしたツイートが2021年(令和3年)12月16日にTwitterで投稿され、多数リツイートされて「バズる」状態となり、広く拡散される事態となった[11]。
このため、オンラインメディアの『ハフポスト』があづまフーズに対して取材を行い、翌12月17日に「『たこわさは罰ゲームから生まれた』と情報拡散、本当なのか? 製造会社に聞いてみた」と題した記事を掲載した[11]。あづまフーズはハフポストの取材に対し「罰ゲームではない。遊び心で混ぜてみたのは事実だが、その部分が誇張されたのかもしれない」と回答し[11]、「罰ゲーム」という点についてはマスメディアによる脚色であるとして明確に否定した[11]。
また、あづまフーズ公式note「元祖たこわさび」では、当該ツイートに先立ち同年9月14日に「誕生から30年、今明かされるたこわさ誕生秘話」として、同社でたこわさびが商品化されるまでの経緯を詳細に伝えている[10]。
脚注
編集- ^ 伊藤和泰 (2012年8月6日). “狙いは新興国 / あづまフーズ - 業務用水産加工品”. 日刊工業新聞 (日刊工業新聞社): p. 5
- ^ a b “日本酒にぴったりな「つまみ」ランキング”. gooランキング. NTTレゾナント (2015年3月9日). 2015年7月14日閲覧。
- ^ a b “おいしい復興 南三陸から巻き起こる「たこわさ革命」”. 東北復興しんぶん (HUG). (2012年10月30日) 2015年7月15日閲覧。
- ^ a b “おじさん系おつまみ大好き女子が急増”. ZIP!. 日本テレビ放送網 (2012年6月27日). 2015年7月15日閲覧。
- ^ a b c d e f g h “たこわさび”. Bi-DAILYSUN. (2014年7月11日) 2015年7月15日閲覧。
- ^ 斎藤健一郎 (2012年6月10日). “「お通し」って誰のため? 居酒屋でカンパイ、その時に”. 朝日新聞 東京朝刊 (朝日新聞社): p. 35
- ^ “「おうちが一番! ヘルシーごはん」肝臓にやさしく”. 北日本新聞 朝刊 (北日本新聞社): p. 13. (2009年10月22日)
- ^ a b 元祖たこわさび あづまフーズ株式会社
- ^ 商品紹介 - たこわさび あづまフーズ株式会社
- ^ a b c d e f g 誕生から30年、今明かされるたこわさ誕生秘話 あづまフーズ株式会社 公式note「元祖たこわさび」2021年9月14日
- ^ a b c d e f g h i “「たこわさは罰ゲームから生まれた」と情報拡散、本当なのか? 製造会社に聞いてみた”. ハフポスト日本語版 (2021年12月17日). 2021年12月17日閲覧。
- ^ “明日から使えるおトク情報トレーニング トクトレ!”. がっちりアカデミー!!. TBSテレビ (2011年3月4日). 2015年7月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月13日閲覧。
- ^ a b c “白木屋”. 知って見て得する情報バラエティ シルシルミシル. テレビ朝日 (2009年12月2日). 2015年7月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月14日閲覧。
- ^ “全て当てるまで帰れま10「白木屋」編”. もしものシミュレーションバラエティー お試しかっ!. テレビ朝日 (2012年10月29日). 2015年7月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月15日閲覧。
- ^ 田島波留ほか (2011年10月11日). “米国で日本居酒屋が人気「創造的な総菜に感動」”. サーチナニュース (サーチナ). オリジナルの2015年7月17日時点におけるアーカイブ。 2015年7月17日閲覧。
- ^ つまみの定番『たこわさ』は罰ゲームが発祥? 簡単自作レシピも紹介(TSURI NEWS) エキサイトニュース、2020年7月3日、2021年12月17日閲覧。