これから出る本

日本で出版された日本語の情報誌

『これから出る本』(これからでるほん)は、1976年(昭和51年)5月から2023年(令和5年)12月にかけて日本書籍出版協会が刊行していた情報誌である[1]。同協会に加盟している出版社の近刊情報が掲載されていた[2]

沿革

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出版物の普及・増売・流通の円滑化等を目的として、1976年5月に創刊[1]。以来、年に23回刊行され、全国の主要な書店店頭で無料配布された[3][4][註 1]。しかし、2023年12月号をもって休刊となった[1]。休刊の背景について、永江朗は2023年12月の論考にて以下のように述べている[4]

インターネットの登場と普及が状況を変えた。現在は日本出版インフラセンター(JPO)の出版書誌データベース「Books」が、既刊と近刊情報のほとんどを網羅している。書協加盟出版社に限らず、流通に不可欠なISBNコードをつけた本は発売日ごとに全点掲載されている。筆者自身も、Booksや「版元ドットコム」「ブクログ」などのサイトで近刊情報を集めるようになった。さびしいが「これから出る本」の休刊もしかたない[4]

内容

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日本書籍出版協会に加盟している出版社の近刊情報が掲載された[2]。その他にも、短い内容紹介や、対象読者層なども記された[2]。なお、刊行前の書籍の情報は、実際の刊行時に変更となることもあったという[6]。これについて、日外アソシエーツの森岡浩は以下のように述べている[6]

確かに、刊行前から日本書籍出版協会の「これから出る本」(近刊情報誌。月2回発行)や、各版元が主に書店からの予約受注目的で流すチラシなど、多くの情報が流れる。しかし、それらはあくまで「予定」である。そして、往々にして予定は変更される。タイトルが変わる、副題が変わる、というのは日常茶飯事。ページ数や刊行日が変わることもあれば、中には著者が変わるという大胆なものもある。究極の変更として「刊行されない」ということもある[6]

評価

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『週刊新刊全点案内』『トーハン週報』『新刊急行ベル』とならび、有用な出版情報誌として評価された[2]。『これから出る本』は図書館等の選書に用いられており、たとえば慶應義塾大学理工学情報センターの佐藤和貴は1983年の論考にて「和書については、日販の『出版情報』を選書の道具として使い、更に『これから出る本』にも注意を払っている」と述べている[7]。また、本書は読書家からも愛好され、永江朗は「書影もなく、大仰なあおり文句もない地味な情報誌だったが、読書家にとっては便利で貴重な道具だった。というのも、取次による配本システムが発達した日本では、出版社は刊行前のプロモーションにあまり力を入れてこなかった。プロモーションせずとも現物が全国の書店に配本されたからである」と評している[4]

一方、野村総合研究所の山田奨は「『これから出る本』(半月刊)はほとんど役に立たない。まず発売時期が月の上旬か下旬かの見当がつくだけで、発売日が確定できない。より不都合なことに掲載データがあまり正確ではない」と批判している[8]

脚注

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注釈

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  1. ^ 刊行の頻度については「年に23回」とする資料と「月に2回」とする資料がある[4][5]

出典

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  1. ^ a b c カレントアウェアネス・ポータル (2023年11月29日). “近刊情報誌『これから出る本』、2023年12月下期号をもって休刊”. カレントアウェアネス・ポータル. 2024年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月1日閲覧。
  2. ^ a b c d 岸田和明 編『図書館情報資源概論』2020年、106頁。ISBN 978-4-88367-338-4 
  3. ^ 津田義臣「一次資料の手配・入手・分析/加工(<短期入門講座>サーチャーとしての基礎講座(5)(最終回))」『情報の科学と技術』第38巻第9号、1988年、527頁、doi:10.18919/jkg.38.9_525 
  4. ^ a b c d e 永江朗 (2023年12月15日). “出版業界事情:47年続いた近刊図書情報誌『これから出る本』が休刊 永江 朗”. 週刊エコノミスト Online. 2024年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月1日閲覧。
  5. ^ 西垣幸雄「企業ライブラリーのデザインを考える : 新日本製鐵(株)総合技術センターの図書館設立とその運用体制事例 (<特集> ライブラリー・デザイン)」『情報の科学と技術』第42巻第12号、1992年、1146頁、doi:10.18919/jkg.42.12_1144 
  6. ^ a b c 森岡浩「「BOOK」データベースの起死回生:時代に求められる書誌情報を追って」『情報管理』第59巻第7号、2016年、458-459頁、doi:10.1241/johokanri.59.457 
  7. ^ 佐藤和貴「慶應義塾大学理工学情報センターの現況」『大学図書館研究』第22巻、1983年、136頁、doi:10.20722/jcul.734 
  8. ^ 山田奨「情報収集の戦略的アプローチ (<特集>企業と情報 )」『情報の科学と技術』第40巻第4号、1990年、245頁、doi:10.18919/jkg.40.4_244 

外部リンク

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