おんな番外地 鎖の牝犬』(おんなばんがいち くさりのめすいぬ)は、1965年公開の日本映画。主演:緑魔子、監督:村山新治東映東京撮影所製作[1][2]東映配給。白黒映画[1][3]

おんな番外地 鎖の牝犬
監督 村山新治
脚本 舟橋和郎
出演者 緑魔子
浦辺粂子
原知佐子
春川ますみ
梅宮辰夫
音楽 冨田勲
撮影 林七郎
編集 田中修
製作会社 東映東京
配給 日本の旗 東映
公開 日本の旗 1965年10月15日
上映時間 86分
製作国 日本の旗 日本
次作 続・おんな番外地
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高倉健石井輝男コンビによる『網走番外地』『続 網走番外地』の好評につき、『網走番外地』の女性版として企画された[4] [5]。東映の"女囚もの"といえば、梶芽衣子の当たり役で知られる「女囚さそり」が有名であるが、同じ東映東京製作のこちらが元祖である。

あらすじ

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騙され弄ばれた男二人を殺傷し、七年の刑を言い渡され刑務所入りしたヒロインが、雑居房9人の女たちの触れあいに、女の歓び、哀しみを知る[2][6][7]

キャスト

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スタッフ

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製作

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東映が1965年に公開した『徳川家康』『飢餓海峡』と文芸大作がことごとく不入りに終わり[8]鶴田浩二高倉健主演の任侠映画が大当たりを続けるため[8]岡田茂東映京都撮影所(以下、東映京都)所長が"不良性感度"という言葉を盛んに使い始め[8][9][10]、「今の世情からみて、この安定ムードの中で、観客は極端に刺激を求めている。従って純精度の高いものはダメである。俳優にしろ純情スターはもう時代遅れだ。これからは不良性感度の強いものを作らなければいけない」と宣言し[8][10]、以降、東映の映画は東映京都・東映東京撮影所(以下、東映東京)を併せ[8]、この岡田理論である"不良性感度"の線上で企画・製作が行われることになった[8]。当時の東映東京所長は、岡田の盟友・今田智憲だったため[11][12]、東西撮影所で呼応した映画作りが行われることになり[8][11][12]、これを受け、東映東京で緑魔子主演で、新たに企画されたのが本作と『あばずれ[8]1964年以降、東映は西撮影所所長に企画の最終決定権が持たされていた[13]。今田智憲東映東京所長が当時、緑の自伝映画を作ろうとするほど緑に惚れ込んでいたため[14]、緑の主演企画が次々製作された[14]

キャスティング

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緑魔子は岡田茂が東映東京所長時代に企画した『二匹の牝犬』でデビューし[10]、東映東京は岡田が京都転勤後も『二匹の牝犬』を嚆矢とする風俗映画を緑魔子と梅宮辰夫を中心に製作の柱とした[10]

キネマ旬報データベース映連などのサイトでも倉橋トミ子役は三浦純子になっているが、当時の文献では倉橋トミ子役は城野ゆきとなっている[7]。『日本映画俳優全集・女優編』などの文献でも「城野ゆきは『おんな番外地 鎖の牝犬』でデビューした」と書かれている[15][16]。城野は同時期入社の大原麗子と共に[16]、"第二の佐久間良子"として東映東京の一押し新人女優として売り出された人で[16]、城野は続編では準主役に、『地獄の野良犬』(鷹森立一監督)では梅宮辰夫の相手役に格上げされた[16]。大原も高倉健主演の1966年ゴールデンウイーク映画『網走番外地 荒野の対決』で人気が出始めたことから[16]、梅宮辰夫・緑魔子コンビによる「夜の青春シリーズ」第7作「夜の青春シリーズ」『赤い夜光虫』で男優一押し新人・谷隼人とコンビで準主役に格上げされた[16]

撮影

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木下惠介監督が1964年の『香華』で、初潮の血のシーンを映したことがあったが[5]、本作は日本映画で初めて流産のシーンを撮影した[5]。内容は緑魔子扮する主人公が独居房内で流産し、畳の上でのたうちまわり、下腹部から流れ出た血で足と畳が血に染まる[5]。当時映倫が審査基準と厳しくしていたところで、ワイセツと断じるわけにもいかず、想定していない描写で規定にもなく映倫を困らせた[5]

作品の評価

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「凡調」と書かれた文献もあるが[6]、緑魔子の強烈な個性と特異な題材で、男女の愛憎を描き話題を集め、シリーズ化された[17]

おんな番外地シリーズ

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本作『おんな番外地 鎖の牝犬』を第一作とし続編『続・おんな番外地』と『可愛いくて凄い女』の計三作品が作られた[18]。『おんな番外地 鎖の牝犬』と『続・おんな番外地』は話が繋がっているが[18]、『可愛いくて凄い女』は緑魔子の役名も前二作から変わり、職業も美容師からスリへ変更[17]。また刑務所描写もない[17]

同時上映

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任侠男一匹

脚注

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  1. ^ a b おんな番外地 鎖の牝犬 - 日本映画情報システム
  2. ^ a b 伝説の美女、魅惑の独演 昭和の銀幕に輝くヒロイン〔第89弾〕緑魔子 ラピュタ阿佐ヶ谷
  3. ^ おんな番外地 鎖の牝犬”. 日本映画製作者連盟. 2020年5月9日閲覧。
  4. ^ 「タウン 東映"女囚シリーズ"のねらい」『週刊新潮』1965年8月21日号、新潮社、15頁。 
  5. ^ a b c d e 「映倫泣かせの『鎖の牝犬』」『週刊現代』1965年9月2日号、講談社、28頁。 
  6. ^ a b 「内外映画封切興信録 『鎖の牝犬』」『映画時報』1965年12月号、映画時報社、50頁。 
  7. ^ a b 「おんな番外地 鎖の牝犬」『近代映画』1965年11月号、近代映画社、234頁。 
  8. ^ a b c d e f g h 「総説東映、新路線確立に終始/製作・配給界 東映」『映画年鑑 1967年版』1967年1月1日発行、時事通信社、121-122、211、221-222頁。 
  9. ^ 岡田茂(東映京都撮影所長)・今田智憲(東映東京撮影所長)、聞く人・北浦馨「東映路線の今后の課題 『企画は流行性、スターは不良性感度 岡田・今田東西両所長がさぐる要素』」『映画時報』1965年11月号、映画時報社、29-33頁。 
  10. ^ a b c d 藤木TDC『アウトロー女優の挽歌 スケバン映画とその時代』洋泉社映画秘宝〉、2018年、14-17頁。ISBN 978-4-8003-1574-8 
  11. ^ a b 長部日出雄佐藤重臣品田雄吉虫明亜呂無、聞く人・北浦馨「日本映画の危機突破作戦 映画は滅びない、経営理念の変革こそ必要であるー」『映画時報』1965年12月号、映画時報社、12-14頁。 
  12. ^ a b 文化通信社 編『映画界のドン 岡田茂の活動屋人生』ヤマハミュージックメディア、2012年、326-334頁。ISBN 978-4-636-88519-4 
  13. ^ 「東映事業中心の多角経営を促進 東映、時代に則した新機構人事」『映画時報』1964年3月号、映画時報社、24-26頁。 「座談会日本映画界はどう進むべきか?―現代の経営路線に悩む各社―」『映画時報』1964年5月号、映画時報社、20-21頁。 渡邊達人『私の東映30年』渡邊達人、1991年、139-147頁。 井沢淳・瓜生忠夫大黒東洋士・高橋英一・大橋重勇・嶋地孝麿「〈特別座談会〉 日本映画製作批判 ーこれからの企画製作はいかに進めるべきか」『キネマ旬報』1965年7月上旬号、キネマ旬報社、16頁。 
  14. ^ a b 「緑魔子さんの自伝映画ができる?」『月刊平凡』1966年3月号、平凡出版、220頁。 
  15. ^ 『日本映画俳優全集・女優編』キネマ旬報社、1980年、361頁。 
  16. ^ a b c d e f 「不況克服に新人スター開発 各社救世主女優を待望」『週刊朝日』1966年6月3日号、朝日新聞社、114頁。 
  17. ^ a b c “東映映画 可愛くて凄い女”. 週刊映画ニュース (全国映画館新聞社): p. 6. (1966年9月3日) 
  18. ^ a b 「内外映画封切興信録 『続おんな番外地』」『映画時報』1966年6月号、映画時報社、46頁。 

外部リンク

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