いちえふ 福島第一原子力発電所労働記

いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』(いちえふ ふくしまだいいちげんしりょくはつでんしょろうどうき)は、竜田一人(仮名)による漫画作品。日本の出版社である講談社発行の『モーニング』ならびに『週刊Dモーニング』2013年48号(2013年10月31日発売)より2015年45号(2015年10月8日発売)まで不定期連載された。

いちえふ
福島第一原子力発電所労働記
ジャンル ルポ漫画
漫画
作者 竜田一人
出版社 講談社
掲載誌 モーニング
週刊Dモーニング
レーベル モーニングKC
発表号 2013年48号 - 2015年45号
発表期間 2013年10月31日 - 2015年10月8日
巻数 全3巻
その他 不定期連載
テンプレート - ノート

なお、表題のいちえふとは福島第一原子力発電所の作業員および周辺住民による通称「1F」である。

概要

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作者である竜田一人(仮名)は、自称「売れない漫画家」であったが、東日本大震災を機に大学卒業後以来から長年勤めていた会社を辞め、被災地のためになる仕事に就くことを決意。紆余曲折の末、2012年6月[注 1]から約半年[注 2][注 3]に渡り、福島第一原子力発電所で作業員として従事した。

この経験を元にしたルポルタージュ漫画作品『いちえふ 〜福島第一原子力発電所案内記〜』(いちえふ ふくしまだいいちげんしりょくはつでんしょあんないき)を執筆。ほかの編集プロダクションで進んでいた企画が没になったため持ち込みを行う[1]。最初の既に「福島の視察に行った人が鼻血を出した」といったような自身の体験と比較すると明らかにデマの内容の漫画を掲載した出版社に反応を見る意味で持ち込んだら、門前払いとなった[2]。次いで『モーニング』に電話で連絡を行う。電話を受けた『モーニング』編集の篠原健一郎もあまり期待もしていなかったが、福島第一作業員という取材先としての希少性と、なにかのネタになるかもしれないと面会を受けた[1]。篠原自身は持ち込み原稿そのままでもイケるとの判断を出したが、編集長を説得する材料として『〜案内記〜』を漫画新人賞である第34回MANGA OPENにエントリー[2]。これが大賞受賞となり、『モーニング』、『週刊Dモーニング』2013年44号(2013年10月4日発売)に掲載されることになる。この号は、通常以上に売上が増え、掲載当日に共同通信から取材の申し込みが行われるなど海外メディアからも取材が殺到した[1][3][4]

この反響を受け、『モーニング』、『週刊Dモーニング』2013年48号から『労働記』としての連載が決定した。キャッチコピーとして「フクシマの真実を暴く漫画ではない」と付けられている。これは雑誌掲載時に担当編集者が付けたものであり、作者自身も本作品は真実ではなく自身の見聞、体験を描くことを目的としている[5]

連載をまとめたコミックス1巻が2014年4月23日に発売されたが、新人漫画家としては異例の初版15万部の発行であった[6]

また、NHKの『クローズアップ現代「いま福島を描くこと 〜漫画家たちの模索〜」』(2014年6月2日放送)[注 4]でも「個人を特定しない」という条件にて竜田は取材に応じている[7]

日本財団が主催する『これも学習マンガだ!〜世界発見プロジェクト〜』にて、2015年10月6日に発表された「学びにつながるマンガ100冊」の1冊(社会部門)に本作が選定されている[8][9]

2015年後半から2016年にかけて、スペイン、フランス、ドイツ、イタリア、台湾で現地語版が販売される[10][11]。英語版は左右逆開きになるための編集作業があったため、2017年と遅れて販売された[2]

2017年時点では招かれて毎日ホール東京都千代田区一ツ橋)や南相馬市で講演を行っている[12][13]。今後も福島第一原子力発電所での作業に従事したいという思いから講演は覆面で行われている[12][13]。歌でも記録を残したいとの自身の想いから、講演中に震災と原発事故後の浜通りをテーマとし、自身で作詞作曲した歌を披露している[12][13]

武田徹は「平成という時代を考えるための本7冊」の中の1冊に本作を選んでおり、「凡百の事故後ルポを凌ぐ臨場感、存在感を示した」と評している[14]

登場人物

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竜田一人の署名が書かれたサーベイメーター(2015年12月12日三重大学教育学部教授奥村晴彦により撮影)
竜田一人(たつた かずと)
本作の作者にして主人公。仮名であることが明言されている。名前はJR東日本常磐線竜田駅から[15]。他の登場人物(いずれも仮名)も常磐線の駅名から採られている。
作中の経歴は上記#概要の通り。

書籍情報

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脚注

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注釈

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  1. ^ 竜田自身は2011年夏から福島第一原子力発電所作業員としての仕事を探していたが、東京在住である竜田が実際に福島第一での職に就くまでには、1年を要している。
  2. ^ 勤めていた下請け会社の定めた年間被曝限度量を超過したため、作業員としての従事ができなくなった。
  3. ^ コミックス2巻において、2014年度も従事していたことを述べている。
  4. ^ 同日の放送分では、『美味しんぼ』で問題になった鼻血描写と風評被害の問題にも言及している[7]

出典

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  1. ^ a b c 「原発の中も外の会社とそれほど変わらない」~漫画「いちえふ」作者・竜田一人氏インタビュー〜”. BLOGOS (2015年3月11日). 2016年5月30日閲覧。
  2. ^ a b c 竜田一人、『いちえふ』デビュー前の秘話を語る 放射線に関するデマ掲載の出版社に売り込んだ真意”. ログミー (2017年7月10日). 2018年4月11日閲覧。
  3. ^ 漫画『いちえふ』作者が語る「福島第一原発の真実」”. 週刊大衆 (2014年5月31日). 2017年8月31日閲覧。
  4. ^ 「いちえふ」福島第一原発の作業員が描く渾身のルポ漫画 「モーニング」で48歳新人がデビュー”. The Huffington Post (2013-10-03日). 2017年8月31日閲覧。
  5. ^ “福島をどう描くか:第1回 漫画「いちえふ 福島第一原子力発電所労働記」 竜田一人さん”. 毎日新聞. (2014年5月22日). http://mainichi.jp/feature/news/20140522mog00m040007000c8.html 2017年8月31日閲覧。 
  6. ^ “あぶくま抄”. 福島民報. (2014年5月9日). オリジナルの2014年5月9日時点におけるアーカイブ。. https://archive.fo/WKfBM 
  7. ^ a b いま福島を描くこと 〜漫画家たちの模索〜”. NHK クローズアップ現代 (2014年6月2日). 2014年8月1日閲覧。
  8. ^ あさきゆめみしから寄生獣まで! 勉強の役に立つ「学習マンガ」ベスト100冊が決定!”. マイナビ (2015年10月10日). 2015年11月9日閲覧。
  9. ^ これも学習マンガだ!〜世界発見プロジェクト〜:社会”. 2015年11月9日閲覧。
  10. ^ 「『被曝で白血病』はデマ」「よくなった部分も伝えて」 ルポ漫画「いちえふ」作者の竜田一人さん、原発報道に疑義”. 産経ニュース (2015年11月9日). 2016年5月30日閲覧。
  11. ^ ルポ漫画「いちえふ」最新刊発売 原発作業描く”. 共同通信 中日新聞 (2015年10月27日). 2015年11月9日閲覧。
  12. ^ a b c 斗ケ沢秀俊 (2017年7月11日). “「福島の今を知る」 「いちえふ」作者・竜田さん講演”. 毎日新聞東京版. https://mainichi.jp/articles/20170711/ddl/k13/040/011000c 2017年8月31日閲覧。 
  13. ^ a b c “正確な情報発信必要 「いちえふ」漫画家・竜田さん、福島県で講演”. 福島民友. (2017年8月17日). http://www.minyu-net.com/news/news/FM20170817-196540.php 2017年8月31日閲覧。 
  14. ^ 宮崎勤から元少年Aまで「諍いの時代」を象徴する7冊”. BLOGOS (2017年8月22日). 2018年4月11日閲覧。
  15. ^ コミックス1巻に記載あり。

関連

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外部リンク

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