アポストロフィー
アポストロフィー(英: apostrophe) は、アポストロフィ、アポストロフ(独: Apostroph、仏: apostrophe)とも呼び、欧文の約物の一つで、単語中(冒頭、途中、最後)で使われる記号である。コンマと同形であるが、コンマがベースライン上に打たれるのに対し、アポストロフィーは文字の上端に打たれる。
また、英語のシングルクォーテーションの特に閉じ形と同形とするフォントもある。類似の記号としてプライム、アキュート・アクセントなどがあるが、それぞれ別のものである。古くは省略符[1]と訳す文献もあった。
省略の表示
編集英語
編集英語では、音の省略に伴い文字を省略したことを表す。しばしば複数の単語が一語に綴られるのに伴う。所有を表す接語の -'s は、古英語の所有格語尾 -es に由来し、アポストロフィーは省略を表した。現代英語では、所有の接語と複数語尾が同じ音になったため、正書法ではそれぞれ -'s, -s と書き分ける。複数形の所有は、-s' で表される。
- the cat's (the cat + -'s)
- the cats (the + cats)
また、be動詞 および助動詞 (have, will) の接語形にもアポストロフィーを用いる。
- I'm ← I am
- you're ← you are
否定の not の接尾辞形には n't を用いる。不規則動詞でも同じ。
- aren't ← are not
- can't ← cannot
- don't ← do not
その他、音が省略された場合に、表記を発音に一致させるためアポストロフィーが使われる。
- 'cause ← because
- ev'ry ← every
- fo'c's'le または f'cle ← forecastle
- o'clock ← of the clock
- 'tis ← it is
また、省略表記を表すためにアポストロフィーを用いる[2]。この場合、発音は省略する前のままである。なお一般に語末の省略には終止符を用いる。
ドイツ語
編集ドイツ語でも音の省略に伴い文字を省略したことを表す。
- ist's ← ist es
- hab' ← habe
フランス語
編集- l'ami ← le ami
- j'aime ← je aime
- c'est ← ce est
また、省略に由来する語にも用いる。
- aujourd'hui ← au jour de hui
エスペラント
編集エスペラントでも音の省略に伴い文字を省略したことを示す。名詞語尾 -o を省略する場合や、母音で終わる前置詞の後ろにある定冠詞の母音 a を省略する場合に使われる。
- 名詞語尾 -o の省略
省略してもアクセントの位置は変わらない。対格や複数の名詞、-o で終わる相関詞は省略できない。- apostrof' ← apostrofo
- poezi' ← poezio
- 定冠詞末尾の a の省略
- de l' ← de la
- ĉe l' ← ĉe la
- je l' ← je la
- tra l' ← tra la
- pri l' ← pri la
- pro l' ← pro la
- その他
- dank'al ← danke al, danko al 「~のおかげで」 - 前置詞のように使う
- un', du, tri ← unu, du, tri 「いち、に、さん」- 声を出して数える場合などに、リズム合わせのため省略する
その他
編集発音の表示
編集区切りの表示
編集- 英語で、文字や数詞の複数を表す s の前にアポストロフィーが置かれる。
- a's(文字「a」の複数)
- 50's(数「50」の複数)
- オランダ語では、複数を表すために使われる場合がある。
- foto's
- taxi's
fotos, taxis のように綴ると綴りと発音の関係から語末の母音が閉母音となり、単数形と発音が異なってしまうためである。
類似の記号
編集プライム
編集日本ではダッシュと呼ぶことが多いが、別物である。
ハーチェク
編集- ダイアクリティカルマークの一種で、スロバキア語やチェコ語で、口蓋音を表すために、文字によりアポストロフィーに類似した記号が用いられる(「ˇ」を使用することもある)。
オキナ
編集- ʻ(オキナ、U+02BB)は、ハワイ語の声門破裂音を表すために用いられる。アポストロフィーで代用されることもあるが、正確な字形は異なり、上付きの6に似た形をしている。左シングルクォーテーションマークにも似ているが、クォーテーションマークが記号であるのに対し、オキナは文字である。
シングルクォート
編集- 引用符の一種で、間に文字列を挟むことにより引用符として用いる。アポストロフィーで挟むことにより代用することもある。
符号位置
編集プログラムコードやテキストエディタなどではU+0027
が使われるが、ユニコードコンソーシアムはU+2019
を推奨しており、英文ワードプロセッサなどではU+2019
が使われることが多い。
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
---|---|---|---|---|
' | U+0027 |
1-2-15 |
' ' |
アポストロフィ APOSTROPHE[表 1] |
' | U+FF07 |
1-2-15 包摂 |
' ' |
全角アポストロフィ FULLWIDTH APOSTROPHE[表 2] |
ʼ | U+02BC |
- |
ʼ ʼ |
MODIFIER LETTER APOSTROPHE[表 3] |
’ | U+2019 |
1-1-39 |
’ ’ |
右シングル引用符、右シングルクォーテーションマーク RIGHT SINGLE QUOTATION MARK[表 4][表 5] |
出典
- ^ “C0 Controls and Basic Latin” (PDF) (英語). ユニコードコンソーシアム. 2014年8月30日閲覧。 “2019 ’ is preferred for apostrophe”
- ^ “Halfwidth and Fullwidth Forms” (PDF) (英語). ユニコードコンソーシアム. 2022年8月31日閲覧。 “≈ <wide> 0027 '”
- ^ “Spacing Modifier Letters” (PDF) (英語). ユニコードコンソーシアム. 2022年8月31日閲覧。 “glottal stop, glottalization, ejective / 2019 ’ is the preferred character for a punctuation apostrophe”
- ^ “General Punctuation” (PDF) (英語). ユニコードコンソーシアム. 2014年8月30日閲覧。 “this is the preferred character to use for apostrophe”
- ^ moji_memo (id:NAOI) (2008年11月28日). “Unicodeのアポストロフィとシングル引用符”. 帰ってきた💫Unicode刑事〔デカ〕リターンズ. 2022年8月31日閲覧。 “〔Unicodeでは〕「句読点アポストロフィ」と「右シングル引用符」を区別していないこととなる”
脚注
編集参考文献
編集- 峰尾都治、内館忠蔵『英語の発音とアクセントの研究』東京・高岡本店、1924年。doi:10.11501/917074 。2020年3月10日閲覧。