2022 FIFAワールドカップ・決勝

2022 FIFAワールドカップ決勝戦(2022 FIFAワールドカップのけっしょうせん)は、2022年12月18日(カタールの建国記念日)に、カタールルサイルにあるルサイル・アイコニック・スタジアムで行われた、22回目のFIFAワールドカップの決勝。

2022 FIFAワールドカップ・決勝
大会名 2022 FIFAワールドカップ
PK戦4-2によりアルゼンチンが優勝
開催日 2022年12月18日 (2022-12-18)
会場 ルサイル・アイコニック・スタジアム(ルサイル)
最優秀選手 アルゼンチン リオネル・メッシ[1]
主審 ポーランド シモン・マルチニアク
観客数 88,966人
天気 所により曇り
2018
2026
試合後のブエノスアイレスでの祝いの様子

背景 編集

ファイナリスト 編集

決勝に駒を進めたのはアルゼンチンフランスの2チーム。アルゼンチンは2014年ブラジル大会以来2大会ぶり6度目の決勝進出で、1986年メキシコ大会以来36年ぶり(9大会ぶり)の優勝を目指し[2]、フランスは優勝した前回2018年ロシア大会に続く4回目の決勝進出で、3回目の優勝と、1934年イタリア大会1938年フランス大会を連覇したイタリア及び1958年スウェーデン大会1962年チリ大会を連覇したブラジルに続く60年ぶり(15大会ぶり)3ヶ国目の「FIFAワールドカップ連覇」を目指す[3]

アルゼンチンのFWリオネル・メッシは準決勝までにワールドカップ本大会において通算25試合・2194分の出場を果たしており、試合数ではローター・マテウスドイツ)と並んで最多タイ、出場時間数ではパオロ・マルディーニイタリア)の2217分に次ぐ2位となっており、決勝で24分間以上出場するといずれも最多記録を更新する[4][5]とともに、決勝で勝利するとミロスラフ・クローゼ(ドイツ)の持つ大会通算勝利数(17勝)に並ぶ[4]。一方、フランス監督のディディエ・デシャンは前回優勝時から引き続いてフランスを率いており、優勝すれば1934年・1938年にイタリアを率いたヴィットーリオ・ポッツォ英語版以来2人目となる「2大会で優勝経験を持つ監督」となる[6]。また、デシャンは選手として1998年フランス大会で優勝しており、ペレ[注釈 1]マリオ・ザガロ[注釈 2]以来3人目の「個人3度のFIFAワールドカップ優勝」を目指す戦いともなる[7][8]

両者の対戦は前回ロシア大会のラウンド16が最後で、この時は4-3でフランスが勝利している[9]。FIFAワールドカップでは他に2度の対戦経験があり(1930年1978年)、いずれもアルゼンチンが勝利している。国際親善試合を含めた対戦成績はアルゼンチンの6勝3分3敗。

会場 編集

決勝戦は、カタールの首都・ドーハ中心部から北に約15キロメートル (9.3 mi) )の距離にあるルサイルルサイル・アイコニック・スタジアムで開催される[10]。スタジアムはカタールのワールドカップ招致活動の一環として決勝戦を開催することを目的として新たに建設された、カタールサッカー協会が所有するスタジアムであり[11] 、2020年7月15日に決勝会場として承認された[12]。スタジアムは他にもグループステージを6試合、ノックアウトステージで3試合を開催予定となっている[13]

スタジアムはイギリスの企業フォスター・アンド・パートナーズPOPULOUSによって設計された[14][15]。スタジアムは太陽光発電を使用して冷却され、カーボンフットプリントはゼロになるとされている[16]。建設は2017年4月に開始され[17] 、2020年に完了する予定だったが、スタジアムの完成は延期され、最終的には2021年11月に建設が完了した[18]

試合球 編集

この試合の試合球は、グループステージ、ラウンド16及び準々決勝で使われてきたアル・リフラに代わり、アル・リフラのデザイン違いバージョンであるアル・ヒルム(Al Hilm、الحلم)が使用される[19]

国歌 編集

試合前の国歌の歌唱は2人の女性歌手が担当した。アルゼンチンの国歌を歌ったのは同国出身の歌手ラリ・エスポジットである[20]。フランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」を歌ったのはエジプト出身のメゾソプラノ歌手ファラハ・エッ=ディバニー英語版で、同年4月のエマニュエル・マクロン大統領の再選の後、シャン・ド・マルス公園で国歌を披露した歌手である[21][22]

決勝までの道のり 編集

アルゼンチンは南米 (CONMEBOL) 予選を11勝6分の2位で、フランスはヨーロッパ (UEFA) 予選グループDで5勝3分の首位と、いずれも無敗[注釈 3]で本大会出場を決める。

本大会ではアルゼンチンはグループCに入る。初戦のサウジアラビア戦ではMFリオネル・メッシのPKで先制するも、後半立ち上がりに立て続けに2点を失い、当時FIFAランキング51位の相手に1-2で敗戦[23]。このアップセットで一気に窮地に追い込まれたが、2戦目のメキシコ戦ではチームを立て直して2-0で勝利する[24]と、3戦目のポーランドにも2-0で勝利し、大混戦となったグループCで結果的に1位となり、決勝トーナメント進出を決めた[25]。ラウンド16では16年ぶりにグループリーグを突破したオーストラリア相手に2-1で接戦をものにする[26]と、準々決勝のオランダ戦ではイエローカードが18枚も出されるという大荒れの展開の中[27]、土壇場で同点に追いつかれるも120分戦って決着がつかず、PK戦でオランダを下して勝ち上がる。準決勝ではここまで1勝4分[注釈 4]と粘り強い戦い方で2大会連続ベスト4に勝ち上がったクロアチア相手にメッシとFWフリアン・アルバレスの2ゴールで3−0と完勝して決勝に駒を進めた[2]

一方、フランスはグループDに入る。主力のMFエンゴロ・カンテやMFポール・ポグバを怪我で欠きながら本大会に臨み、初戦の前にFWカリム・ベンゼマとFWクリストファー・エンクンクも途中離脱となった。初戦のオーストラリア戦では前半早々に先制点を奪われ、このプレーでDFリュカ・エルナンデスが途中交代を余儀なくされながらもそこから効率よく点を重ねて4-1で逆転勝ち[28]。2戦目のデンマーク戦では後半のFWキリアン・エムバペの2得点で突き放して今大会決勝トーナメント進出一番乗りを決める[29]。3戦目のチュニジア戦では主力を温存して臨み、終了間際のFWアントワーヌ・グリーズマンのゴールがVAR介入で取り消されるなどもあって0-1で敗れる[30]ものの、グループ1位で決勝トーナメントに進出する。ラウンド16では36年ぶりのラウンド16進出を果たしたポーランド相手にエムバペの2得点などで3-1の快勝[31]、準々決勝では大一番と目されたイングランドとの激戦を2-1で制し[32]、準決勝ではアフリカ勢初のベスト4進出を果たしたモロッコに圧倒的に攻められながらも少ないチャンスをものにして2-0で勝利し、決勝進出を決めた[3]

両チームともベテランと若手の点取り屋がチームを牽引した。アルゼンチンは今回が最後のワールドカップと公言する35歳のメッシが準決勝までの6試合中5試合で得点し、5ゴール(うちPK3本)3アシストと絶好調。途中からスタメンに定着した22歳のアルバレスも4ゴールを記録し、チームの総得点12のうち9点をふたりで稼いでいる[33]。フランスも23歳のエース、エムバペが5ゴールし、再三チャンスに絡んでいるが、準々決勝以降得点がない。36歳のFWオリヴィエ・ジルーが4ゴールを挙げ、フランス代表の最多得点記録を更新するなど好調である[34]。こちらもチームの総得点13のうち9点をふたりで挙げている。

日程的にはアルゼンチンがクロアチア戦から中4日、フランスはモロッコ戦から中3日と休養期間の違いがある。また、フランスはチーム内で風邪のような症状が広まり、数名が公開練習を休むなど、決勝戦に向けてコンディションの不安を抱えた[35]

アルゼンチン ラウンド フランス
対戦国 結果 グループステージ 対戦国 結果
  サウジアラビア 1–2 第1戦   オーストラリア 4–1
  メキシコ 2–0 第2戦   デンマーク 2–1
  ポーランド 2–0 第3戦   チュニジア 0–1
グループC 1位
チーム
1   アルゼンチン 3 6
2   ポーランド 3 4
3   メキシコ 3 4
4   サウジアラビア 3 3
出典: FIFA
最終結果 グループD 1位
チーム
1   フランス 3 6
2   オーストラリア 3 6
3   チュニジア 3 4
4   デンマーク 3 1
出典: FIFA
対戦国 結果 ノックアウトステージ 対戦国 結果
  オーストラリア 2–1 ラウンド16   ポーランド 3–1
  オランダ 2–2 (延長) (4–3 p) 準々決勝   イングランド 2–1
  クロアチア 3–0 準決勝   モロッコ 2–0

試合 編集

アルゼンチンFWリオネル・メッシとフランスFWキリアン・エムバペの両ストライカーの対決に世界的な注目が集まったこの試合[36][37][38]、アルゼンチンは負傷によりノックアウトステージを欠場していたFWアンヘル・ディ・マリアが満を持して復帰し、一方のフランスは2人を入れ替えて準々決勝のイングランド戦と同じメンバーを揃えた[39]。戦前の大方の予想ではアルゼンチンのディ・マリアは右サイド2列目での起用が見込まれていたが、試合が始まると左サイド1列目に位置しており、これがフランスの守備陣を混乱に陥れた。

試合は立ち上がりからアルゼンチンが両ウィングのメッシ、ディ・マリアに加え、中央のFWフリアン・アルバレスの3人を中心にフランス陣内に激しいプレッシングを掛けペースを握る[39][40]。その流れのまま前半21分、アルゼンチンはアルバレスを起点に左サイドを攻め込みディ・マリアのドリブル突破に対して、フランスFWウスマン・デンベレがペナルティエリア内で後ろから倒してしまいPKを献上[39][41]。このPKをメッシが決め、アルゼンチンが先制する[39]。さらに前半36分、SBナウエル・モリーナが自陣でボールを奪うと、縦パスをつないでFWメッシから右サイドのFWアルバレスへ、さらにDFの裏を取ったMFアレクシス・マック・アリスターへとボールが渡り、折り返しのパスに左サイドから飛び込んだディ・マリアがフランスGKウーゴ・ロリスを掠める巧みなシュートでゴールファーサイドへ流し込み待望の追加点を奪う[39][40][41]。2点ビハインドとなったフランスは41分にセンターフォワードのオリヴィエ・ジルーと右ウィングのウスマン・デンベレに替わってFWランダル・コロ・ムアニとFWマルクス・テュラムを投入し、エムバペをジルーのいた中央に配置する布陣変更を行って前半のうちに流れを変えようとするが、ターゲットマンの役割が不在となったことでサイドを崩してもクロスに合わせることが難しくなったためこの策は機能せず、そのまま2-0で前半を終了した[40]

後半もアルゼンチンが攻勢を続けて主導権を握り続け、後半35分(80分)までフランスに枠内シュートを1本も許さない完璧な試合運びを見せる[41]。しかし後半34分(79分)、途中投入されたフランスMFエドゥアルド・カマヴィンガのパスを受けたエムバペがさらに前方へとボールを送り、抜け出したFWコロ・ムアニがそれに反応する[40]と、振り切られまいと対応したアルゼンチンDFニコラス・オタメンディがペナルティエリア内でコロ・ムアニを倒してPKの判定[41]。これをエムバペが決めて1点差に追いすがる[39]。さらにその直後の後半36分(81分)、途中投入されたフランスFWキングスレイ・コマンがメッシからボールを奪うと、MFアドリアン・ラビオのフィードに反応したエムバペが頭で折り返し、テュラムとのリターンからエムバペが右足でダイレクトボレーを叩き込み、フランスが同点に追いつく[39][41]。この2得点で勢いを盛り返したフランスだったが、勝ち越しまでには至らず、アルゼンチンも後半アディショナルタイムにメッシがボックス外から強烈なミドルシュートを放ちボールは枠を捉えたが、フランスGKウーゴ・ロリスのセーブに遭い決めきれず、試合は2014年ブラジル大会以来2大会ぶりの延長戦にもつれ込む。

延長戦に突入しても一進一退の攻防を繰り返すが、延長後半4分、アルゼンチンは右サイドを攻め上がったDFゴンサロ・モンティエルからのクロスを途中投入のFWラウタロ・マルティネスがゴール正面で落とし、FWメッシ、MFエンソ・フェルナンデスとワンタッチでつないで、右サイドに流れたFWマルティネスがボレーシュート。一旦はフランスGKウーゴ・ロリスに阻まれるも、そのこぼれ球をメッシが詰める[39][41]。ゴール内でフランスDFクンデが掻き出したようにも見えたが、VARによりゴールラインを割っていたことが確認され、加えてフェルナンデスからマルティネスへのパスもオフサイドの疑いがあったが、同じくVARによりオンサイドの判定が下され、再びアルゼンチンが勝ち越しに成功する[40]。これを守り切ればアルゼンチンの優勝となるところだったが、延長後半11分、エムバペのシュートがアルゼンチンDFモンティエルの腕に当たり、再びPKの判定[39]。これをエムバペが再び決めて同点に追いつくと共に、エムバペは1966年イングランド大会ジェフ・ハーストイングランド)以来56年ぶり2人目となるFIFAワールドカップ決勝でのハットトリックを達成する[42]。試合の最終盤延長後半アディショナルタイムには、フランスDFイブラヒマ・コナテがセンターサークル付近からアルゼンチンDFニコラス・オタメンディの頭上を掠める浮玉のパスをフランスFW ランダル・コロ・ムアニへ送り、決定的なシュートが放たれるがアルゼンチンGKエミリアーノ・マルティネスの身を呈したブロックに阻まれ、九死に一生を得る。その直後にはアルゼンチンDFゴンサロ・モンティエルが右サイドを駆け上がり右足でクロスを上げるがアルゼンチンFWラウタロ・マルティネスのヘディングシュートが右に大きく逸れ、そのまま120分間を終了。試合は2006年ドイツ大会決勝以来16年ぶり3度目となるPK戦決着となった。

PK戦では1人目が両チームのエース・エムバペとメッシが決めるが、フランス2人目のFWコマンのゴール右を狙ったシュートがエミリアーノ・マルティネスに阻まれ、フランス3人目のMFオーレリアン・チュアメニのシュートは左ポストの外側をかすめる[41]。一方のアルゼンチンは4人目のモンティエルまで4人全員が成功させ、アルゼンチンが36年ぶり(9大会ぶり)3回目の優勝を果たした[39][41]

結果 編集

 
 
 
 
 
 
 
 
 
アルゼンチン
 
 
 
 
 
 
 
 
フランス
GK 23 エミリアーノ・マルティネス   120+5分
RB 26 ナウエル・モリーナ   91分
CB 13 クリスティアン・ロメロ
CB 19 ニコラス・オタメンディ
LB 3 ニコラス・タグリアフィコ   120+1分
DM 24 エンソ・フェルナンデス   45+7分
CM 7 ロドリゴ・デ・パウル   102分
CM 20 アレクシス・マック・アリスター   116分
RF 10 リオネル・メッシ  
CF 9 フリアン・アルバレス   102分
LF 11 アンヘル・ディ・マリア   64分
交代出場
MF 8 マルコス・アクーニャ   90+8分   64分
DF 4 ゴンサロ・モンティエル   116分   91分
MF 5 レアンドロ・パレデス   114分   102分
FW 22 ラウタロ・マルティネス   102分
DF 6 ヘルマン・ペッセージャ   116分
FW 21 パウロ・ディバラ   120+1分
監督
  リオネル・スカローニ
 
GK 1 ウーゴ・ロリス  
RB 5 ジュール・クンデ   120+1分
CB 4 ラファエル・ヴァラン   113分
CB 18 ダヨ・ウパメカノ
LB 22 テオ・エルナンデス   71分
CM 8 オーレリアン・チュアメニ
CM 14 アドリアン・ラビオ   55分   96分
RW 11 ウスマン・デンベレ   41分
AM 7 アントワーヌ・グリーズマン   71分
LW 10 キリアン・エムバペ
CF 9 オリヴィエ・ジルー   90+5分   41分
交代出場
FW 12 ランダル・コロ・ムアニ   41分
FW 26 マルクス・テュラム   87分   41分
FW 20 キングスレイ・コマン   71分
MF 25 エドゥアルド・カマヴィンガ   71分
DF 13 ユスフ・フォファナ   96分
DF 24 イブラヒマ・コナテ   113分
DF 3 アクセル・ディサシ   120+1分
監督
  ディディエ・デシャン
マン・オブ・ザ・マッチ
  リオネル・メッシ[1]
副審
  パヴェウ・ソコルニツキ
  トマシュ・リストキエヴィチ
第4の審判
  イスマイル・エルファス
予備副審
  キャスリン・ネスビット
ビデオ・アシスタント・レフェリー (VAR)
  トマシュ・クヴィアトコフスキ
アシスタント・ビデオ・アシスタント・レフェリー (AVAR)
  フアン・ソト
  カイル・アトキンス
  フェルナンド・ゲレーロ
控えVAR
  バスティアン・ダンケルト
控えAVAR
  コーリー・パーカー

試合ルール[43]

  • 試合時間は90分。
  • 90分終了後同点の場合、30分の延長戦が行われる。
  • 120分終了後同点の場合、PK戦で優勝国が決定される。
  • 90分内で決着が付いた場合5人まで(交代回数は後半開始前を除き3回以内)、延長戦に突入した場合合計6人まで(交代回数は後半開始前・延長戦開始前・延長後半開始前を除き4回以内)選手交代が可能。ただし、脳震盪による選手交代が必要と判断された場合は、前述と別に1人の選手交代が可能。

統計 編集

優勝国 編集

 2022 FIFAワールドカップ優勝国 
 
アルゼンチン
9大会ぶり3回目

挿話 編集

  • 2021年に不整脈のため現役引退した元アルゼンチン代表FWセルヒオ・アグエロがFIFAアンバサダーとして決勝戦を観戦した。背番号19の代表ユニフォーム[注釈 6]を着て太鼓を叩きながら応援し、PK戦が決着するとピッチに駆け込み、親友のメッシらと喜びを爆発させた。また、表彰式にも参加して優勝トロフィーを掲げた[46]
  • 表彰式でキャプテンのメッシに優勝トロフィーが渡される際、カタール首長のタミーム・ビン・ハマド・アール=サーニーがメッシの肩に黒いローブをかけた。これはビシュト英語版と呼ばれるアラブの伝統衣装で、冠婚葬祭や公式行事などで男性用正装として用いられる。一着2,200ドル(約29万円)という最高級品だったが、トロフィーを掲げるハイライトシーンでメッシのユニフォームが隠れてしまい物議を醸した[47]。現地メディアはビシュトを着ることは「大きな名誉」であるとして、欧米メディアに反論した[48]
  • フランス大統領のエマニュエル・マクロンが貴賓席で決勝戦を観戦。フランスが2-2の同点に追いつくと上着を脱いで、袖をまくって応援する姿がみられた。試合後は茫然とするエムバペを慰め、ロッカールームで選手たちを励ました。優勝したロシア大会でも熱心なサポーターぶりをみせていたが[49]、フランス国内では「やりすぎ」「政治的パフォーマンス」という批判も受けた[50]
  • 試合後、トルコ人のインフルエンサーである「塩振りおじさん」(Salt Bae)ことヌスレット・ギョクチェがピッチに乱入し、メッシらと握手や記念撮影を行ったり、選手のメダルを噛んだり、優勝トロフィーを持ってキスした様子が撮られた。国際サッカー連盟 (FIFA) は部外者による不正立ち入り事案として調査を行う方向であると報じられた[51]
  • アルゼンチンGKエミリアーノ・マルティネスは試合後の表彰式でゴールデングローブ賞(大会最優秀GK)のトロフィーを股間に当てて持つ下品なジェスチャーをし、更に試合後のロッカールームで「(亡くなった)エムバペに1分間の黙とうを」と嘲笑する動画が撮影がされた[52]。帰国後の優勝パレードではおむつを穿いた赤ん坊の人形にエムバペの顔写真を貼るという行為も行った[53]。これらの侮辱行為に対し、フランスサッカー連盟(FFF)はアルゼンチンサッカー協会(AFA)に書面で抗議した[54]。マルティネスは「股間パフォーマンス」をした理由について「フランス人サポーターにブーイングされたからだ」と説明[55]。エムバペへの侮辱行為については、エムバペが大会前のインタビューで「南米ではヨーロッパほどサッカーが進んでいない」と南米を軽視する発言をしたことへの反発と見られる[56]。FIFAはFIFA規律規程第11条(攻撃的行為およびフェアプレーの原則の違反)および第12条(選手および役員の不正行為)に抵触する「攻撃的な振る舞い」があったとして、アルゼンチンサッカー協会に対する処分の手続きを開始したと発表した[57][58]
  • フランスのスポーツ紙・レキップは、メッシの3点目のゴールが決まる直前、興奮したアルゼンチンの控え選手がピッチに入り込んでいたと指摘。サッカー競技規則第3条9項ではフィールド内に部外者がいた場合、得点は認められないという理由から、このルールを厳格に適用するとメッシのゴールは無効になると主張した[59][60]。しかし、得点無効(取り消し)になるのは「得点後にキックオフで再開される前」に確認された場合に限られるため実際には無効とはならず、レキップの主張に対しても、主審のシモン・マルチニアクはフランスのエムバペがゴールした場面でもフランスの選手7人がピッチに入り込んでいたと、証拠画像を示しながら反論した[61]

脚注 編集

注記 編集

  1. ^ 1958年スウェーデン大会・1962年チリ大会の連覇時と1970年メキシコ大会、いずれも選手として。
  2. ^ 1958年スウェーデン大会・1962年チリ大会の連覇時に選手として2回、1970年メキシコ大会で監督として1回。
  3. ^ アルゼンチンはブラジル当局の指導により中止となったブラジルとのアウェーゲームを含まない。当該項参照。
  4. ^ 決勝トーナメントでの2分(PK戦2勝)を含む。
  5. ^ PK戦時の1つ(GKエミリアーノ・マルティネスの非紳士的行為による警告)を含む。
  6. ^ 「19」はアグエロがFCバルセロナで付けた現役最後の背番号。この試合では、今大会19番を付けたニコラス・オタメンディのユニフォームを着用していた。

出典 編集

  1. ^ a b Argentina and Messi spot on for World Cup glory”. FIFA (2022年12月18日). 2022年12月19日閲覧。
  2. ^ a b “アルゼンチンが決勝進出 メッシ先制、クロアチア下す―W杯サッカー”. 時事通信. (2022年12月14日). https://www.jiji.com/jc/article?k=2022121400119&g=spo 2022年12月14日閲覧。 
  3. ^ a b “故障者続出ものともせず フランスが60年ぶりW杯連覇に王手”. 毎日新聞. (2022年12月15日). https://mainichi.jp/articles/20221215/k00/00m/050/003000c 2022年12月15日閲覧。 
  4. ^ a b リオネル・メッシの保持するワールドカップ記録と狙える新記録”. FIFA+. 2022年12月18日閲覧。
  5. ^ メッシ、決勝で24分プレーすればW杯出場時間が歴代最多に 現記録保持者はアズーリの名選手”. スポーツニッポン (2022年12月17日). 2022年12月18日閲覧。
  6. ^ Who is Vittorio Pozzo French World Cup coach Didier Deschamps is trying to emulate” (英語). FIFA+. 2022年12月16日閲覧。
  7. ^ World Cup Champions Squads 1930–2018”. RSSSF (2021年9月15日). 2022年12月14日閲覧。
  8. ^ West, Jenna (2018年7月15日). “Didier Deschamps Becomes Third to Win World Cup as Player and Manager”. Sports Illustrated. https://www.si.com/soccer/2018/07/15/world-cup-wins-manager-player-zagallo-beckenbauer-deschamps 2018年7月16日閲覧。 
  9. ^ カタールW杯決勝はフランス対アルゼンチン!! ムバッペvsメッシの歴史的覇権争い、ロシア大会は4-3大激闘に”. ゲキサカ (2022年12月15日). 2022年12月15日閲覧。
  10. ^ Lusail Stadium”. Supreme Committee for Delivery & Legacy. 2022年3月30日閲覧。
  11. ^ "Lusail Iconic Stadium for Qatar 2022 is revealed at Leaders in Football conference in London" (Press release). Foster and Partners. 6 October 2010. 2022年3月30日閲覧
  12. ^ “FIFA World Cup match schedule confirmed: hosts Qatar to kick off 2022 tournament at Al Bayt Stadium”. FIFA. (2020年7月15日). https://www.fifa.com/tournaments/mens/worldcup/qatar2022/news/fifa-world-cuptm-match-schedule-confirmed-hosts-qatar-to-kick-off-2022-tournamen 2022年3月30日閲覧。 
  13. ^ FIFA World Cup Qatar 2022 – Match Schedule” (PDF). FIFA.com. Fédération Internationale de Football Association (2022年4月1日). 2022年4月1日閲覧。
  14. ^ Lusail Iconic Stadium - FIFA World Cup Qatar”. e-architect (2019年3月7日). 2022年1月20日閲覧。
  15. ^ Lusail Iconic Stadium World Cup 2022: Qatar World Cup Stadium”. fifaworldcupnews.com (2021年9月23日). 2022年2月17日閲覧。
  16. ^ Qatar's Lusail Iconic Stadium for Solar World Cup Stadium”. architecture-view.com (2010年10月27日). 2016年6月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月24日閲覧。
  17. ^ Work starts on Qatar World Cup final stadium at Lusail”. thepeninsulaqatar.com (2017年4月12日). 2022年2月24日閲覧。
  18. ^ Parkes, James (2021年11月23日). “Foster + Partners-designed Lusail Stadium among eight completed Qatar World Cup venues”. Dezeen. https://www.dezeen.com/2021/11/23/qatar-2022-world-cup-stadiums-roundup/ 2022年3月30日閲覧。 
  19. ^ "Introducing 'Al Hilm', The Official Match Ball of the FIFA World Cup Qatar 2022™ Finals" (Press release) (英語). FIFA. 11 December 2022. 2022年12月16日閲覧
  20. ^ Lali Espósito emocionó a todos con la interpretación del himno argentino en la final del Mundial” (スペイン語). LA NACION (2022年12月18日). 2022年12月19日閲覧。
  21. ^ INFO E1 – Mundial 2022: Farrah El-Dibany interpretará “La Marsellesa” para la final” (スペイン語). Deportes News ES Euro (2022年12月17日). 2022年12月19日閲覧。
  22. ^ Egyptian Soprano Farrah El-Dibany on Singing France's National Anthem at Emmanuel Macron's Re-Election” (英語). Vogue Arabia (2022年4月25日). 2022年12月19日閲覧。
  23. ^ “サウジアラビア代表が大金星…優勝候補のアルゼンチン代表相手に受け身にならず、ドサリがスーパーゴール”. 読売新聞. (2022年11月23日). https://www.yomiuri.co.jp/sports/soccer/worldcup/20221122-OYT1T50312/ 2022年12月14日閲覧。 
  24. ^ メキシコ撃破のアルゼンチン、先制点決めたメッシは気を引き締め直す「僕たちは改めてW杯をスタートさせた。すべての試合がすべて決勝戦だ」”. Goal.com (2022年11月27日). 2022年12月14日閲覧。
  25. ^ メッシPK失敗も…アルゼンチンが首位で決勝T進出!オーストラリアは16年ぶりにグループ突破|カタールW杯2022”. DAZN NEWS (2022年12月1日). 2022年12月14日閲覧。
  26. ^ メッシ、待望の決勝T初ゴール!アルゼンチンがオーストラリアに競り勝ち準々決勝でオランダと激突”. Goal.com (2022年12月4日). 2022年12月14日閲覧。
  27. ^ “Red mist descends in World Cup yellow card record” (英語). BBC Sport. (2022年12月10日). https://www.bbc.com/sport/football/63920253 2022年12月10日閲覧。 
  28. ^ フランス代表が4発逆転勝利! 連覇へ好発進…オーストラリアは先制弾を守れず”. サッカーキング (2022年11月23日). 2022年12月15日閲覧。
  29. ^ “連覇狙うフランス、デンマーク下し16強一番乗り…エムバペが先制&決勝ゴール”. (2022年11月27日). https://www.yomiuri.co.jp/sports/soccer/worldcup/20221127-OYT1T50050/ 2022年12月15日閲覧。 
  30. ^ “フランス完敗 グリーズマンの同点弾もVARで幻に サッカーW杯”. 毎日新聞. (2022年12月1日). https://mainichi.jp/articles/20221201/k00/00m/050/022000c 2022年12月15日閲覧。 
  31. ^ 【W杯】エムバペが圧巻の2ゴール! フランスがポーランドを下し、危なげなく準々決勝へ”. サッカーマガジン (2022年12月5日). 2022年12月15日閲覧。
  32. ^ “【2022年サッカーW杯】 イングランド、ベスト8で敗退 フランスに1-2で敗れる”. BBC NEWS Japan. (2022年12月11日). https://www.bbc.com/japanese/63932161 2022年12月15日閲覧。 
  33. ^ “【カタールW杯】メッシを上回る「0.57」のスタッツ アルゼンチンを36年ぶり優勝へ導く“キーマン”はJ・アルバレス”. SPREAD. (2022年12月17日). https://spread-sports.jp/archives/172682 2023年1月16日閲覧。 
  34. ^ “【W杯】決勝弾ジルー、エムバペから7回右ほおはたかれ祝福 ベンゼマら負傷離脱のピンチをチャンスに”. 日刊スポーツ. (2022年12月11日). https://www.nikkansports.com/soccer/qatar2022/news/202212110001228.html 2023年1月16日閲覧。 
  35. ^ “フランス、2連覇に黄信号?! 体調不良&故障者続出 頼りはエースのエムバペ W杯決勝は19日午前0時”. サンケイスポーツ. (2022年12月17日). https://www.sanspo.com/article/20221217-THYALNGRBJOUXLGJQZDXUOZBZA/?outputType=theme_qatar2022 2023年1月16日閲覧。 
  36. ^ Matias Grez (2022年12月19日). “Lionel Messi cements his place among the greats after winning epic duel against Kylian Mbappé”. CNN Sports. 2023年1月3日閲覧。
  37. ^ Emma Sanders (2022年12月18日). “World Cup 2022: Was Argentina's win over France the best ever final?”. BBC Sport. 2023年1月3日閲覧。
  38. ^ Alan Shearer (2022年12月19日). “Lionel Messi and Kylian Mbappe: Thank you for that beautiful madness”. The Athletic. 2023年1月3日閲覧。
  39. ^ a b c d e f g h i j 竹内達也 (2022年12月19日). “圧巻2発のメッシが悲願の世界一!! 3-3大激闘からのPK戦制したアルゼンチン、36年ぶりW杯制覇”. ゲキサカ. 2022年12月19日閲覧。
  40. ^ a b c d e PK戦までもつれる死闘を制したのはアルゼンチン! フランスを下し36年ぶりに優勝【W杯決勝】”. サッカーマガジン (2022年12月19日). 2022年12月19日閲覧。
  41. ^ a b c d e f g h アルゼンチンがフランスとの歴史的一戦を制し悲願の優勝!”. FIFA+ (2022年12月19日). 2022年12月19日閲覧。
  42. ^ “エムバペ、偉業達成に笑顔なし 56年ぶりのW杯決勝ハットトリック”. 毎日新聞. (2022年12月19日). https://mainichi.jp/articles/20221219/k00/00m/050/022000c 2022年12月19日閲覧。 
  43. ^ Regulations – FIFA World Cup Qatar 2022”. FIFA.com. Fédération Internationale de Football Association (2021年12月15日). 2022年12月16日閲覧。
  44. ^ a b c d World Cup: Argentina vs France”. Sofascore (2022年12月18日). 2022年12月18日閲覧。
  45. ^ a b c d Argentina vs France: live info and stats - FIFA World Cup 2022”. Diario AS. 2022年12月18日閲覧。
  46. ^ “【W杯】盟友アグエロも「すべての感情を表現」 アルゼンチン優勝の歓喜…スタンドで太鼓応援&メッシと掲げたトロフィーに注目”. FOOTBALL ZONE. (2022年12月19日). https://www.football-zone.net/archives/424213 2023年1月16日閲覧。 
  47. ^ “メッシ着用で物議を醸した“黒ローブ”の価格が判明! 決勝翌日にはアルゼンチン・サポが150着を爆買い【W杯】”. サッカーダイジェストweb. (2022年12月22日). https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=123611 2023年1月16日閲覧。 
  48. ^ “なぜ怒る? メッシ着用の黒マント批判、不思議に思うアラブ諸国「無知や偏見の表れだ」”. フットボールチャンネル. (2022年12月23日). https://www.footballchannel.jp/2022/12/23/post490030/ 2023年1月16日閲覧。 
  49. ^ フランス大使館 [@ambafrancejp_jp] (2018年7月17日). "フランス代表 レ・ブルーの1番のサポーターはマクロン大統領だったかもしれません。". X(旧Twitter)より2023年1月16日閲覧
  50. ^ “仏大統領は「オフサイド」? W杯決勝での振る舞いに批判の声”. AFP BB News. (2022年12月20日). https://www.afpbb.com/articles/-/3444081 2023年1月16日閲覧。 
  51. ^ 有名「塩振り」シェフ、W杯決勝ピッチに不正立ち入り FIFAが調査”. www.afpbb.com (2022年12月23日). 2023年1月3日閲覧。
  52. ^ 「1分間の黙とう…死亡したエムバペのために」大はしゃぎのアルゼンチン守護神、3点を奪われた怪物を嘲笑し物議!「8歳の子どもレベル」【W杯】”. サッカーダイジェストweb (2022年12月19日). 2023年1月24日閲覧。
  53. ^ “「無礼だ」「許せない」パレードでムバッペの赤ちゃん人形を掲げる、アルゼンチン守護神の度重なる侮辱行為に大バッシング「素晴らしいGKだけど…」”. 超WORLDサッカー. (2022年12月21日). https://web.ultra-soccer.jp/news/view?news_no=433472 2023年1月24日閲覧。 
  54. ^ “「わいせつポーズ」アルゼンチンGKに仏から抗議 エムバペ侮辱に連盟会長怒り「これは行き過ぎ」”. J-CASTニュース. (2022年12月26日). https://www.j-cast.com/2022/12/26453316.html?p=all 2023年1月24日閲覧。 
  55. ^ ““股間パフォ”が非難集めるカタールW杯最優秀GK、行為の理由を説明「許容できないことだった」”. 超WORLDサッカー. (2022年12月20日). https://web.ultra-soccer.jp/news/view?news_no=433427&div=0 2023年1月24日閲覧。 
  56. ^ エムバペの放った“南米軽視”発言に波紋広がる! アルゼンチン代表GKは猛反論「息もできないコロンビアでプレーしたらどうなるか」”. サッカーダイジェストWEB (2022年5月30日). 2023年1月24日閲覧。
  57. ^ "Disciplinary update on FIFA World Cup Qatar 2022™" (Press release). FIFA. 14 January 2023. 2023年1月16日閲覧
  58. ^ “FIFA、アルゼンチンの処分手続き開始 W杯決勝で規定違反か”. AFP BB News. (2023年1月14日). https://www.afpbb.com/articles/-/3447010 2023年1月16日閲覧。 
  59. ^ “【W杯】メッシの延長戦ゴール“無効疑惑”浮上 競技ルールに抵触の証拠画像も判明「不許可になる」”. FOOTBALL ZONE. (2022年12月20日). https://www.football-zone.net/archives/424346 2023年1月18日閲覧。 
  60. ^ “メッシ得点は「ルール違反で無効」 敗北フランス紙まさかの主張「感情的なサブが…」”. THE ANSWER. (2022年12月20日). https://the-ans.jp/qatar-world-cup/292920/ 2023年1月18日閲覧。 
  61. ^ “メッシ弾の“無効論”に新展開 決勝主審がフランスの違反も指摘「エムバペ得点時に…」”. THE ANSWER. (2022年12月24日). https://the-ans.jp/qatar-world-cup/293671/ 2023年1月18日閲覧。 

外部リンク 編集