雨の日には車をみがいて

雨の日には車をみがいて』(あめのひにはくるまをみがいて)は、1988年6月に角川書店より単行本として刊行された五木寛之小説

雨の日には車をみがいて
著者 五木寛之
発行日 日本の旗 1988年6月(単行本)
日本の旗 1990年9月(角川文庫)
日本の旗 1998年5月(集英社文庫)
発行元 角川書店、集英社
ジャンル 恋愛小説
日本の旗 日本
言語 日本語
ページ数 279(角川文庫)
コード ISBN 978-4048725002(単行本)
ISBN 978-4041294161(角川文庫)
ISBN 978-4087487770(集英社文庫)
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9台の車と9人の女性を巡る9つの短編小説で構成されている。

概要 編集

放送作家の卵で車好きのぼくが出会う車(輸入車)と女性たち。 ぼくは年を重ね、キャリアアップしながら、さまざまな魅力的な車や女性との出会いと別れを繰り返していく。

各話で登場する女性たちは主人公ぼくに関連するヒロインで、必ずしもぼくの恋人ではなく、ドライブ先でたまたま出会った少女だったり、友人であったりする。

作中では、各話で登場する車についての様々なトリビアも紹介されている。

「さまざまな車に思いをよせる友、そして未知の異性との出会いを夢見るすべての読者に、この本を捧げる」と著者からコメントがつけられている。[注 1]

構成 編集

全9話から構成されており、基本的に主人公であるぼくの年齢順の話になっている。

第1話 たそがれ色のシムカ
搭乗車は、シムカ1000。1966年の夏から話が始まる。
第2話 アルファ・ロメオの月
搭乗車は、アルファ・ロメオ・ジュリエッタ・スパイダーぼくは20代後半となっている。
第3話 アマゾンにもう一度
搭乗車は、白いボルボ122S・アマゾン。1960年代後半。
第4話 バイエルンからきた貴婦人
搭乗車は、BMW2000CS。1970年夏の話となっている。
第5話 翼よ! あれがパリの灯りだ
搭乗車は、シトローエン2CV。1960年代後半の話(同時期にBMW2000CSも所有している)。
第6話 ビッグ・キャットはしなやかに
搭乗車は、ジャグヮーXJ6(ただし、主人公の所有車ではない)。
第7話 怪物グロッサーの孫娘
搭乗車は、メルツェデス・ベンツ300SEL6.3。1970年代の半ば。
第8話 時をパスするもの
搭乗車は、ポルシェ911S。1970年代の半ば。
第9話 白樺のエンブレム
サーブ96Sがストーリーの軸として登場する。1987年の夏。

登場人物 編集

江上 浩一(えがみ こういち)
主人公、ぼく。江上浩一は<構成作家>としてのペンネームで、第2話から使用している。第1話では、放送作家の卵。第3話では、テレビ番組の主題歌やCMソングの歌詞なども手掛けている。第7話では、音楽番組の構成をしていることが示唆されており、作詞家と放送作家、CMライターの三本立てで順調な仕事ぶりであることがうかがえる。第9話では、TVやコマーシャルの仕事から足を洗い、ルポ・ライターをしている。車好きであり、運転免許をとったばかりにもかかわらず、輸入車のオーナーとなる。
火見 瑤子[注 2](ひみ ようこ)
第1話のヒロイン。ひとこと多いタイプだが、歯に衣着せぬ物言いで名フレーズも吐く。フランス語やパントマイムを習い、発声のトレーニングを受けて、芸能界デビューを狙っている。ぼくから錦原を紹介してもらう。ぼくの女友達だが、ぼくは彼女に夢中になっている。雨の日に新品の白いハイヒールを履いてきたことについて「雨の日だからこそ新しい靴をはくのよ」と言い、「車は雨の日にこそみがくものだわ」と続ける。
錦原 良策
音楽業界では<天皇>と言われている権力者の大物プロデューサー。業界人からは「キンバラさん」と呼ばれている。50歳を超えている。マスタングに乗っている。
秋野 晶子(あきの しょうこ)
第2話のヒロイン。22歳。音楽大学の学生で、川西晃に個人レッスンを受けている。どこかつかみどころのない不思議な雰囲気を持つ。スピード狂。
川西 晃(かわにし あきら)
映画音楽の仕事でも知られている有名な作曲家。40過ぎ。イタリア車にしか興味のない、生粋のアルファ・ロメオ党。ぼくに秋野晶子を紹介する。
赤いボルボの少女
第3話のヒロイン。名前不明、年齢不詳の謎の女性。赤いボルボ122S・アマゾンに乗って登場する。非常に小柄で幼い顔立ちのため中学生にも見えるが、喋り方や話の内容、態度などからはとても子供には見えない。
朝霞 圭子(あさか けいこ)
第4話のヒロイン。28歳。自宅で趣味的に手芸を教えている。日本人離れした独特の歯並びを持っている。品が良く、控え目な、しとやかな物腰の女性なのだが……
K
ぼくの先輩の翻訳家。ぼくへBMW2000CSを良心的な価格で譲る。
アヤ
第5話のヒロイン。紺のダッフルコートを着た、目の大きな少女。和子からは「アヤちゃん」と呼ばれている。雪のため乗っていた車が立ち往生していたところを2CVで通りかかったぼくと出会う。ぼくの2CVで送ってもらい、はしゃぐのだが……
和子
アヤの保護者的な立場の年上の女性。灰色のオーバーコートを着ている。アヤからは「和子ねえさん」と呼ばれている。ぼくの2CVにアヤとともに乗せてもらう。
高沢 麻智子(たかさわ まちこ)
第6話のヒロイン。R大学の女子学生で、父親は不動産会社のオーナー。ぼくに卒業論文の代作を依頼する。やがて、ぼくと付き合うことになる。物静かでおっとりとした、いい性格の娘なのだが……
水森 由布子(ゆうこ)
第7話のヒロイン。銀座のクラブ「ユニコーン」のホステス。19歳。かすかに北陸の訛りが感じられる、整った顔立ちで、おとなしそうな娘。Rを通じて、ぼくに会いたいと言ってくる。
R
ラジオ局の営業マンで、ぼくの高校時代の友人。ぼくと由布子を引き合わせる。
美佐子
銀座のクラブ「ユニコーン」の副(ちい)ママ。
彼女
第8話のヒロイン。名前は不明。カメラマン。濃い眉としっかりとした輪郭の顔立ちの女性。独断的でわがまま、はっきりとものを言うきつい性格の自信家。結婚を意識して、ぼくと同棲する。車に対する理解は低い。
石森 翔子(いしもり しょうこ)
第9話のヒロイン。TV取材班のディレクター。40歳と6か月。小柄で痩せた体型。ぼくから、大切な友人と思われている。
早田
TV取材班のカメラマン。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 「雨の日には車をみがいて」(著:五木寛之 版:角川文庫)の「エピローグ風のあとがき」より
  2. ^ 作中で使われている「瑤(よう)」の漢字は手偏。

出典 編集

「雨の日には車をみがいて」(著:五木寛之 版:角川文庫