「岸辺露伴 ルーヴルへ行く (映画)」の版間の差分

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『'''岸辺露伴 ルーヴルへ行く'''』(きしべろはん ルーヴルへいく)は[[2023年]][[5月26日]]公開の[[日本映画|日本の映画]]。{{出典範囲|text1=[[荒木飛呂彦]]による漫画シリーズ『[[ジョジョの奇妙な冒険]]』のスピンオフ作品『[[岸辺露伴は動かない]]』の一編であり、[[ルーヴル美術館]]が主催するバンド・デシネプロジェクトのために書き下ろされた[[岸辺露伴 ルーヴルへ行く|同名の漫画作品]]が原作となっている。監督の[[渡辺一貴 (演出家)|渡辺一貴]]、脚本の[[小林靖子]]を始め、[[NHK総合テレビジョン|NHK総合]]で放送されたテレビドラマ『[[岸辺露伴は動かない#テレビドラマ|岸辺露伴は動かない]]』のキャスト・スタッフが続投する形で制作された|ref1=<ref name="realsound20230105">{{Cite web|title=『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』映画化決定 高橋一生、飯豊まりえ、スタッフ陣が再集結|url=https://realsound.jp/movie/2023/01/post-1227907.html|website=リアルサウンド映画部|publisher=blueprint|date=2023-01-05|accessdate=2023-01-05}}</ref>}}
 
本作の主人公である漫画家・岸辺露伴が、ルーヴル美術館に存在するといわれる「この世で最も黒い絵」が引き起こす怪異に巻き込まれる物語が描かれる。企画は2020年、ドラマシリーズの放送前に始動し、2022年9月から2023年3月にかけて撮影が行われた。パリ市街や[[ルーヴル美術館]]でのロケも行われ、日本映画がルーヴル美術館で撮影されるのは『[[Qシリーズ (小説)#映画『万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-』|万能鑑定士Q モナ・リザの瞳]]』以来2作目となった。
日本映画としては『[[Qシリーズ (小説)#映画『万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-』|万能鑑定士Q モナ・リザの瞳]]』以来2作目となる[[ルーヴル美術館]]でのロケが行われた{{R|realsound20230105}}。また、NHKが製作したドラマの映画化作品としては初めて興行収入が10億円を突破した<ref name="animeanime20230619">{{Cite web|和書|url=https://animeanime.jp/article/2023/06/19/78033.html|title=映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」興行収入10億円を突破! 渡辺一貴監督による全国ティーチインイベントも開催 |accessdate=2023-12-01|author=仲瀬コウタロウ|date=2023-06-19|website=アニメ!アニメ!|publisher=イード}}</ref>。
 
興行収入は12.5億円を記録し、NHKが製作したドラマの映画化作品としては初めて10億円を突破した。
 
== あらすじ ==
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== キャスト ==
* 岸辺露伴、山村仁左右衛門:[[高橋一生]]<ref name="realsound20230105">{{RCite web|realsound20230105title=『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』映画化決定 高橋一生、飯豊まりえ、スタッフ陣が再集結|url=https://realsound.jp/movie/2023/01/post-1227907.html|website=リアルサウンド映画部|publisher=blueprint|date=2023-01-05|accessdate=2023-01-05}}</ref>{{R|oricon20230201}}<ref name="realsound1350204">{{Cite web|和書|url=https://realsound.jp/book/2023/06/post-1350204.html|title=映画『岸辺露伴ルーヴルへ行く』原作を補う“改変”が見事 高橋一生が見せた、最も切ない「ヘブンズ・ドアー」の卓越さ|accessdate=2023-12-20|author=島田一志|date=2023-06-15|website=リアルサウンド映画部|publisher=blueprint}}</ref>
* 泉京香:[[飯豊まりえ]]{{R|realsound20230105}}
* 岸辺露伴(青年):[[長尾謙杜]]<ref name="oricon20230201">{{Cite web|url=https://www.oricon.co.jp/news/2265869/full/|title=青年期の岸辺露伴役はなにわ男子・長尾謙杜 映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』追加キャスト4人発表|date=2023-02-01|website=ORICON NEWS|publisher=oricon ME|accessdate=2023-02-01}}</ref>
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== 制作 ==
=== 企画 ===
監督の渡辺とNHKエンタープライズのプロデューサー・土橋圭介は2018年ごろにテレビドラマ『岸辺露伴は動かない』(以下、「ドラマシリーズ」という)企画段階している時から妄想レベルで本作を構想しており、「このドラマがうまくいってシリーズ化、最後は長編映画で、長編やるならやっぱり『ルーヴルへ行く』だよね」と話をしていた<ref name="cinematoday20230427">{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136520|title=「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」映画化が実現するまで パリロケで思わぬハプニングも|accessdate=2023-11-03|author=石井百合子|date=2023-04-27|website=シネマトゥデイ}}</ref>。また撮影中においても、露伴を演じた高橋一生と渡辺は雑談中に度々「『ルーヴルへ行く』を映画でできたらいいね」と話をしていたという{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=116}}。
 
本作の企画はドラマシリーズ第1期のキービジュアルが発表された後に、アスミック・エースのプロデューサー・井出陽子が渡辺と土橋に、ドラマシリーズを再編集し応援上映を行う企画を持ちかけたことがきっかけとなり、本格的に動き出した{{Efn2|ドラマシリーズ第1期のキービジュアルが発表されたのは2020年10月14日のこと<ref>{{Cite web|和書|url=https://natalie.mu/comic/news/400587|title=荒木飛呂彦「岸辺露伴は動かない」NHKでドラマ化!露伴は高橋一生、脚本は小林靖子|accessdate=2024-04-21|date=2020-10-14|website=コミックナタリー|publisher=ナターシャ}}</ref>。}}{{R|cinematoday20230427}}。井出は『ジョジョ』シリーズのファンであり、ドラマシリーズのキービジュアルを観た際に「原作ファンも喜ぶ作品になる」と直感し、話を持ちかけたと語っている<ref name="finders20230526">{{Cite interview|和書|date=2023-05-26|subject=井手陽子(映画プロデューサー、アスミック・エース所属)|interviewer=赤井大祐、文:船岡花奈 |title=『岸辺露伴』はどのように「ルーヴル」へ行ったのか。プロデューサーが語る制作秘話|url=https://finders.me/kqFQpDM3Mzk|work=FINDERS|publisher=シー・エヌ・エス・メディア|accessdate=2023-12-15}}</ref>。{{出典範囲|text1=話を受けた渡辺と土橋は応援上映ではなく『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の実写化の企画書を書き上げて井出に提出し、|ref1={{R|cinematoday20230427}}|text2=打ち合わせを重ねる中で劇場版にチャレンジすることが決まった|ref2={{R|finders20230526}}}}。
 
数ある原作のエピソードの中で『ルーヴルへ行く』を選んだ理由を、井出は以下のように語っている。
原作者の荒木と[[版元]]の集英社の許諾を得て企画は進み始めたが、[[コロナ禍]]の影響などからルーヴル美術館との撮影交渉は困難を極め、パリでの撮影日程が決まったのは日本での撮影が始まってからであった{{R|cinematoday20230427}}。また、円安の影響から制作費がかさみ、一部費用が足りなくなったことから、[[テレビ東京]]が製作に参加し出資した{{R|finders20230526}}。
{{Quotation|テレビと違って映画はお金を払って観るメディアですよね。{{Interp|中略|和文=1}}ドラマとは違う面白さを感じるものでなければならない。そう考えた時に、『ルーヴルへ行く』は、露伴が海外に赴く話なのでスケールも大きく、なおかつ露伴の過去や、露伴のルーツに迫っていくという、ドラマの中では描かれていない切り口があったので|井出陽子|{{R|cinematoday20230427}}}}
 
原作者の荒木と[[版元]]の集英社の許諾を得、2021年10月ごろより本格的に企画は進み始めた。高橋によれば、脚本の初稿が俳優陣に上がってきたのはドラマシリーズ第2期が終わる頃(2021年12月末)であったという<ref>{{Cite web|和書 |url=https://www.gqjapan.jp/article/20230524-kishiberohan-movie-issey-takahashi-interview |title=高橋一生「ずっと岸辺露伴でもいいですよ」──映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』インタビュー |accessdate=2024-01-16 |author=斎藤岬 |date=2023-05-24 |website=GQ Japan |publisher=CONDÉ NAST }}</ref>。{{出典範囲|text1=脚本を担当した小林はルーヴルでの撮影交渉が難航した影響で、パリおよびルーヴル美術館でのシナリオハンティングなしで脚本を書き上げる事になったが、|ref1={{R|cinematoday20230427}}|text2=ルーヴル美術館に詳しい人や[[東京藝術大学]]保存修復日本画研究室教授の荒井経に取材を行い、脚本に反映させた|ref2={{R|natalie20230608}}}}。また、原作者の荒木から受けたいくつかの要望に従い、原作からいくつかの要素が足されている([[#原作との違い|後述]])。
本作は監督の渡辺をはじめ、ドラマシリーズのスタッフが引き続き担当している{{R|realsound20230105}}。{{出典範囲|text1=渡辺はドラマシリーズから作り方を変えるということはせず、今までやってきたことをそのまま落とし込むことを意識したという。また本作では露伴の過去や江戸時代など様々な時代が描かれるが、過去の記憶でも現実よりも鮮明に記憶されていることもあるので、白黒やセピア色にするといった映像上の演出はしないよう意識された|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=118}}}}。
 
原作者{{出典範囲|text1=脚本荒木骨格が出来上がり始めた頃、ルーヴル美術館[[版元]]集英社の許諾を得て企画は撮影交渉も進み始めた。原作がルーヴル美術館の主催するバンド・デシネプロジェクトの作品であるため、ルーヴル美術館サイドの反応は上々であったが、[[コロナ禍]]の影響などからルーヴル美術館と日程など撮影具体的な交渉は困難を極めた。2022年6月には撮影日程が固まらないままパリでのロケハンが行われ、ようやく撮影日程が決まったのは日本での撮影が始まってから(2022年9月)であった|ref1={{R|cinematoday20230427}}}}。また、円安の影響から制作費がかさみ、一部費用が足りなくなったことから、[[テレビ東京]]が製作に参加し出資した{{R|finders20230526}}。
=== 脚本 ===
 
=== 原作との違い ===
ドラマシリーズに引き続き脚本を務めた小林は荒木より、仁左右衛門と奈々瀬を悲恋にすること、そしてルーヴル美術館で死ぬ消防士たちを悪者にしてほしいという要望を受けていた{{R|natalie20230608}}。そのため本作ではZ-13倉庫のシーンのあとに、新たに書き起こされた尺の長い過去編が入る構成となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=124}}。また、本作の露伴は原作より年齢が高く設定されているため{{Efn2|明確な年齢は設定されていないが、演じている高橋と同じくらいの30代後半と設定されている{{R|natalie20230608}}。なお、原作の露伴は27歳。}}、奈々瀬を思い出す展開に違和感が生じないよう、モリス・ルグランや黒い絵の設定を足し、「露伴が漫画のために美術を調べていて、そのためにオークションに潜入し、そこから事件に巻き込まれることで過去に少しずつ繋がっていく」という展開となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=127}}。
 
ドラマシリーズから引き継がれたオリジナル要素の一つとして、露伴と京香のコンビがある。ドラマシリーズでの京香は荒木の物語に存在する「ユーモア」の要素を引き受ける、息抜きになるようなキャラクターとして描かれた<ref>{{Cite web|和書|url=https://mindra.jp/post/154/|title=演出・渡辺一貴インタビュー『岸辺露伴~』は作り続けたい|accessdate=2023-12-10 |date=2021-12-23|website=TVガイドみんなドラマ|publisher=東京ニュース通信社}}</ref>。小林は二人の関係を「全然住む世界が違っていて、普通なら友だちになることもなく関係が終わっちゃうふたり」と捉えており、本作では、露伴は京香を「ちょっと面白いかも」と感じるようにはなりつつも、それ以上の関係にはならないように意識されている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=129}}。この二人の関係やコミカルな掛け合いは、シリアスな物語の中の清涼剤として高く評価された{{R|kinejun_review}}{{R|realsound20230619}}。
 
=== キャスティング ===
{{出典範囲|text1=ルーヴルでの撮影交渉が難航したことからシナリオハンティングなしで脚本を書き上げる事になったが、|ref1={{R|cinematoday20230427}}|text2=ルーヴル美術館に詳しい人や[[東京藝術大学]]保存修復日本画研究室教授の荒井経に取材を行い、脚本に反映させた|ref2={{R|natalie20230608}}}}。
青年期の露伴には[[長尾謙杜]]が起用された。{{出典範囲|text1=キャスティングの際には憂いがあり、また駆け出しでスタイルが確立されていない「まだ完成される前の露伴」が前提となり、渡辺が画像検索で長尾の写真を見つけ、キャストの検討会議に提案した。渡辺は長尾が人気アイドルであること、また「ジョジョ」のファンであることを知らずに推薦したため、土屋は不思議な縁を感じたという|ref1=<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136616|title=青年期の岸辺露伴に長尾謙杜を起用した理由 不思議な巡り合わせも|accessdate=2023-11-25|author=石井百合子|date=2023-05-02|website=シネマトゥデイ}}</ref>}}。長尾は渡辺のアドバイスから高橋の露伴を意識しないようにし、また年齢感が近いことから原作だけでなく『[[ダイヤモンドは砕けない]]』も読み直し、役作りを行った{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=144}}。
 
=== 衣装・劇中画 ===
{{出典範囲|text1=ドラマシリーズに引き続き人物デザイン監修{{Efn2|扮装のコンセプトを決め、各キャラクターのデザインを描き、登場人物の扮装を統括する役割<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136435 |title=実写「岸辺露伴」の衣装、なぜモノトーン?大反響のビジュアルが出来上がるまで|accessdate=2023-11-25|author=石井百合子|date=2023-04-22|website=シネマトゥデイ}}</ref>。}}を担当した[[柘植伊佐夫]]は原作を読んだ際、辻褄が合っているのに合っていないような不思議な読後感を感じたといい、本作では各パートごとに分裂した、整合性や共通性のなさを意識したという。またドラマシリーズでは元気さや生命力がイメージされていたが、今作は悲劇性のある物語であることから、より重みのある印象になるよう意識されている|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=132-134}}}}。なお、京香の衣装はドラマシリーズに引き続き、靴とタイツ以外のすべてが[[オートクチュール]]となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=143}}。パリパートの衣装は「パリの街やルーヴルに露伴と京香が立ったとき、しっくり来るものなのか」を意識して制作された{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=134}}。また、ルーヴルで撮影すると聞いた時点で映画『[[シャレード (1963年の映画)|シャレード]]』の[[ケーリー・グラント]]と[[オードリー・ヘプバーン]]のようにしたいと考え、色の組み合わせなどをオマージュしている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=136}}。
 
{{出典範囲|text1=オークションを始めとした現代パートにて京香が着用している紫のワンピースは、落ち着きと華やかさの両方を柘植が欲していたため取り入れられた。作中では京香が「もっとドレスっぽいのを着てこようと思った」と話している衣装であり、柘植は「オークションでこれはすでにかなり派手だよ?!」と突っ込みたくなると語っている|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=138-139}}}}。飯豊はこの衣装のゴージャスな雰囲気が、いち編集部員というより編集長並みの貫禄を感じさせてくれたと回想している{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=143}}。
 
過去編にて登場する青年期の露伴は、現在の露伴がもつ明快さをまだ持ち合わせておらず、また演じた長尾謙杜もふわふわしたところがあったため、曖昧な白の階調が意識された衣装となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=137-138}}。柘植はこの白の風合いを出すための素材を見つけるのに苦労したと語っている{{R|cinematoday20230521}}。
 
パリパートの衣装は「パリの街やルーヴルに露伴と京香が立ったとき、しっくり来るものなのか」を意識して制作された{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=134}}。また、ルーヴルで撮影すると聞いた時点で映画『[[シャレード (1963年の映画)|シャレード]]』の[[ケーリー・グラント]]と[[オードリー・ヘプバーン]]のようにしたいと考え、色の組み合わせなどをオマージュしている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=136}}。
 
{{出典範囲|text1=パリでの京香の衣装である黒の革のワンピースは彼女のアイコンであるリボン以外の装飾が排されたミニマムなものとなっている。このワンピースは本来フロントジップで作られたものだったが、衣装合わせの際の飯豊の提案から前後逆に着ることになった。京香が時折羽織っていたシャンパンゴールドのコートは、ベージュと黒はフランス人の好む組み合わせであり、パリの建築物ともマッチすると考えられたことから採用された。なお、ドラマシリーズ第8話「ジャンケン小僧」にて京香がレザーのショートパンツを履いていたのは、今作に向けての匂わせの一つだったという|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=134-135}}}}。
 
パリでの露伴は、シリーズを通して初めてタイを着用しており、保守的なイメージのタイをいかにアバンギャルドなイメージの露伴に馴染ませるかが意識された。そのためシャツの襟の構造から見直し、襟の中にタイが通る不思議な構造になっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=135}}。{{出典範囲|text1=また、コートもシリーズを通して初めて着用しており、パリの雰囲気に即したシックなものになっている。スタンドカラーに大きなボタンが3つあしらわれており、柘植は偶然にも「ジョジョ」のキャラクターがしばしば着用している学ランのようなシルエットになったと語っている|ref1=<ref name="cinematoday20230521">{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136906|title=岸辺露伴、パリで初のコート&タイ姿!人物デザイン監修・柘植伊佐夫、驚きの仕掛け明かす |accessdate=2023-11-29|author=石井百合子|date=2023-05-21|website=シネマトゥデイ}}</ref>}}。{{出典範囲|text1=生地には起毛したウールが使われており、|ref1={{R|cinematoday20230521}}|text2=高橋は撮影中コートの温かさがとても助かったと語っている|ref2={{R|moviewalker20230609}}}}。
 
=== 劇中画 ===
{{出典範囲|text1=仁左右衛門の描いた絵画を始めとした劇中画は日本画家の宮崎優が担当した。劇中で仁左右衛門の描いた「蘭画」「微笑む奈々瀬」は1770年代の[[秋田蘭画]]を参考に約250年前の画材や技法で制作された。一方、物語の肝となる「黒い絵」は時代考証を無視して制作され、遠目から見ると真っ黒な板に見えるほどの絵画に仕上がっている。「黒い絵」での奈々瀬の黒髪は、まるで奈々瀬の魂が閉じ込められているように、時間の止まった空間に漂うようなイメージで描かれている。宮崎は、仁左右衛門の描きたいものに執着し周りが見えなくなるところに共感し、「黒い絵」の制作時には最初から完成形がはっきりとイメージできたという|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=154-155}}}}。
 
=== 撮影・演出 ===
本作は監督の渡辺をはじめ、ド2022年9月にクマシリーズのスタッフが引き続き担当ンクインている{{R|realsound20230105productionnote}}。{{出典範囲|text1=渡辺は演出する際、ドラマシリーズから作り方を変えるということはせず、今までやってきたことをそのまま落とし込むことを意識したという。また本作では露伴の過去や江戸時代など様々な時代が描かれるが、過去の記憶でも現実よりも鮮明に記憶されていることもあるので、白黒やセピア色にするといった映像上の演出はしないよう意識された|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=118}}}}。{{出典範囲|text1=参考にした作品として渡辺はベルナルド・ベルトルッチの映画『[[暗殺の森]]』を挙げており、『暗殺の森』でのパリのシーンが曇天であることから、今作でも曇天に拘って制作された。また、パリのシーンは観光名所巡りのような雰囲気は出さないことも意識されている|ref1={{R|cinematoday20230526}}}}。パリでのロケは2022年11月と2023年3月の2回に分けて行われ、2023年3月の撮影をもって本作はクランクアップとなった{{R|cinematoday20230427}}。
{{出典範囲|text1=本作は2022年9月にクランクインし、オークションのシーンから撮影が始められた。ロケ地は横浜の老舗ホテル・[[ホテルニューグランド]]が選定された|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=20}}{{R|productionnote}}}}。このホテルは渡辺が挙式した場所であり、クラシカルな場所というイメージで思い浮かんだことからオークション会場として選ばれた<ref name="cinematoday20230526">{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136997|title=『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』なぜ曇り空のパリ?渡辺一貴監督のロケーションの流儀|accessdate=2023-11-03|author=石井百合子|date=2023-05-26|website=シネマトゥデイ}}</ref>。美術の磯貝さやかは撮影前に実際のオークションに参加し取材を行ったが、そのオークションは会議室のようなあまり華やかでない場所で行われたため、本作では花などが並べられた「オークションのイメージ」が強い物となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=150}}。
 
{{出典範囲|text1=続いて、露伴の祖母・猷の下宿を舞台とした、露伴の青年期の撮影が行われた。ロケ地は会津若松の旅館・向瀧が選定された|ref1={{R|productionnote}}}}。この場所は渡辺が演出し高橋が主演を務めたNHKのテレビドラマ『[[雪国 (小説)#テレビドラマ|雪国 -SNOW COUNTRY-]]』のロケ地でもあり、渡辺は『雪国』の撮影中(2022年1月)から猷の下宿にも理想的だと考えていたという{{R|cinematoday20230526}}。{{出典範囲|text1=奈々瀬の部屋は向瀧の茶室が使用されており、磯貝は奈々瀬の実在感のない不思議な感じを表現するため、部屋の物を極力減らすよう意識した。また、対照的に猷の部屋は生活感を出すため、物の密度を高くし、ごちゃごちゃとさせている。なお、露伴の部屋のみ向瀧でない場所を使用しており、磯貝は部屋の木の色を向瀧と同じ色に塗り替えるなど同じ場所に見えるように意識したという|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=151-152}}}}。
 
青年期の露伴には[[長尾謙杜]]が起用された。{{出典範囲|text1=キャスティングの際には憂いがあり、また駆け出しでスタイルが確立されていない「まだ完成される前の露伴」が前提となり、渡辺が画像検索で長尾の写真を見つけ、キャストの検討会議に提案した。渡辺は長尾が人気アイドルであること、また「ジョジョ」のファンであることを知らずに推薦したため、土屋は不思議な縁を感じたという|ref1=<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136616|title=青年期の岸辺露伴に長尾謙杜を起用した理由 不思議な巡り合わせも|accessdate=2023-11-25|author=石井百合子|date=2023-05-02|website=シネマトゥデイ}}</ref>}}。長尾は渡辺のアドバイスから高橋の露伴を意識しないようにし、また年齢感が近いことから原作だけでなく『[[ダイヤモンドは砕けない]]』も読み直し、役作りを行った{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=144}}。
 
仁左右衛門と奈々瀬の物語が描かれた江戸時代パートも会津若松にて撮影され、主に霧幻峡や大内宿が舞台となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=101}}。{{出典範囲|text1=仁左右衛門が黒に魅せられていく場面はZ-13倉庫のシーンとリンクされており、蜘蛛の巣が徐々に増える演出が施されている。また、御神木の黒い樹液は、木から流れるものと指についたものとで素材を変えるなどこだわって制作された|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=153}}}}。この江戸時代パートは原作から大きく加筆されている。{{出典範囲|text1=高橋はこの江戸時代パートがあることによって、タイトルが『ルーヴルへ行く』でありながらもパリに気触れず、自分たちが日本人であるというところに立ち返ることができると語っている。渡辺と高橋は大河ドラマ『[[おんな城主 直虎]]』でもタッグを組んだ間柄であり、高橋はデジャブを感じたものの渡辺が「([[小野政次]]{{Efn2|『おんな城主直虎』にて高橋が演じた。}}とは)また違う人ですね」と言ってくれたことで安心したという|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=117}}}}。
 
[[File:Oya-saikutsujo-ato-2.jpg|thumb|Z-13倉庫でのシーンが撮影された大谷石採石場跡]]
続いて、大谷石採石場跡にて、本作のクライマックスシーンの一つであるZ-13倉庫のシーンが4日間にわたって撮影された{{R|productionnote}}{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=143}}。{{出典範囲|text1=渡辺は[[アンドレイ・タルコフスキー]]の映画『[[ストーカー (1979年の映画)|ストーカー]]』をイメージし、|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=152-153}} |text2=20分以上続く無機質な暗がりのシーンを、いかにエンターテイメントとして飽きさせないものにするかに注力したという<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.creativevillage.ne.jp/category/topcreators/visual-creators/135115/|title=映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』監督 渡辺一貴———引っ掛かるのは〝記憶″というキーワード。最近の作品はすべてそれがモチーフなのではと思うほど。|accessdate=2023-11-03|author=永瀬由佳|date=2023-05-24|website=CREATIVE VILLAGE|publisher=クリーク・アンド・リバー}}</ref>}}。{{出典範囲|text1=磯貝は原作を読んだときから再現に一番ハードルを感じていた場所だといい、洞窟や廃墟の資料や『ストーカー』を参考に、長い間放置されたような雰囲気を作り出したという。蜘蛛の巣は真綿を引き伸ばして作られており、カメラに収まるところに重点的に付けたり、レイヤーを重ねるようにしたりして、大量の蜘蛛の巣が張っているように見せている|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=152-153}}}}。
 
{{出典範囲|text1=Z-13に続く地下通路は[[大森ベルポート]]の地下3階、および[[館山市]]にある能忍寺の廃トンネルにて撮影された。螺旋階段のシーンの撮影では[[ステディカム]]が使用され、動きのあるダイナミックな映像となっている|ref1={{R|productionnote}}}}。
 
{{出典範囲|text1=続いて、神奈川県を中心に現代パートの撮影が進められた。露伴邸はドラマシリーズと同様に[[葉山加地邸]]がロケ地となった|ref1={{R|productionnote}}}}。{{出典範囲|text1=ドラマシリーズとの違いとして、部屋には顔料のもととなる植物などが大量に吊るされており、これらは磯貝が荒井に行った取材がもとになっている。また、ドラマシリーズとの繋がりが感じられるよう、ホットサマー・マーサのフィギュアやバキンのフードボウルなども置かれている|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=150}}}}。
 
パリでの撮影は2022年11月と2023年3月の2回に分けて行われた{{R|cinematoday20230427}}。{{出典範囲|text1=渡辺はベルナルド・ベルトルッチの映画『[[暗殺の森]]』をベースに今作を演出しており、『暗殺の森』でのパリのシーンが曇天であることから、今作でも曇天に拘って制作されたという。また、パリのシーンは観光名所巡りのような雰囲気は出さないことも意識されている|ref1={{R|cinematoday20230526}}}}。
 
1回目のロケは3日間にわたって行われ、パリ市街を舞台としたシーンが撮影された。露伴と京香が2階建てバスに乗り、[[エトワール凱旋門]]から[[シャンゼリゼ通り]]の方へ抜けるシーンの撮影では、信号や他の車のタイミングが合わず、理想の画が撮れるまで30分以上、何十周も凱旋門を周回したという{{R|cinematoday20230427}}{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=79}}。また、カフェ・ルテシアでのシーンでは、エキストラの女性が偶然『[[ジョジョリオン]]』の登場人物・東方大弥のような耳付きのフードを被っており、その女性が映るように撮り直したという{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=119}}。
 
ルーヴル美術館文化メディエーション部のオフィスはヴィクトル・ユゴーの弁護士事務所にて撮影された。磯貝自身は現地に赴くことはできなかったものの、現地スタッフとオンライン上で打ち合わせを重ね、オフィスを美術で飾ったという。
 
[[File:La Joconde (Le Louvre) (8226631218).jpg|thumb|飯豊は、モナ・リザの前で大きな声を出しながらの演技は貴重な体験だったと語っている<ref name="moviewalker20230609">{{Cite web|和書|url=https://moviewalker.jp/news/article/1138223/|title=高橋一生&飯豊まりえが語り合う、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』で再確認した異形のバディ感|accessdate=2023-11-25|author=タナカシノブ |date=2023-06-09|website=MOVIE WALKER PRESS|publisher=ムービーウォーカー}}</ref>。]]
2回目のロケではルーヴル美術館での撮影が3日間にわたって行われた{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=80}}。原作ではルーヴル美術館のシーンは少なく、すぐにZ-13倉庫に行ってしまうことから、映画化に際し館内の描写が多く足されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://otocoto.jp/interview/ikenobe210/ |title=渡辺一貴監督が語る 現実にルーヴルへ行くという奇跡が起きた『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』 |accessdate=2023-11-19 |author=池ノ辺直子 |date=2023-05-27 |website=otocoto |publisher=バカ・ザ・バッカ |page=1}}</ref>。撮影は閉館後から翌朝にかけて行われた。渡辺らによる下見は10回ほど行われたが、閉館後の人がいない美術館は雰囲気が全く異なり、本番では考えてきたことをリセットし、その場で感じたことを大事にしながら撮影は行われたという<ref>{{Cite web|和書|url=https://otocoto.jp/interview/ikenobe210/2/|title=渡辺一貴監督が語る 現実にルーヴルへ行くという奇跡が起きた『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』|accessdate=2023-11-19|author=池ノ辺直子|date=2023-05-27|website=otocoto|publisher=バカ・ザ・バッカ|page=2}}</ref>。飯豊は閉館後の館内は常に誰かに見られているような不思議な空気感があり、貴重な経験だったと回想している{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=142}}。
 
{{出典範囲|text1=高橋は、露伴ならルーヴル美術館は畏敬する場所でありながらも「こんなすごい絵を書きやがって、腹立つ」と思うだろうと想像し、かつての画家に対してのライバル心を意識して露伴を演じた。その意識は[[モナ・リザ]]に背を向けながらスケッチをするという演技に繋がっているという|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=122}}}}。
 
==== 脚本ロケ地 ====
最終日はカルーゼル凱旋門前の広場からルーヴル美術館のピラミッドを臨む撮影が行われ、これをもって本作はクランクアップとなった{{R|productionnote}}。なお、カルーゼル凱旋門自体は撮影当時工事中だったため、本作には登場していない{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=159}}。撮影中は太陽が月に見えるほどの厚い雲が空を覆い、気温は1℃ほどと非常に低く、高橋と飯豊は不穏な天気が幻想的でラストシーンにピッタリであったと回想している{{R|productionnote}}{{R|moviewalker20230609}}。
;[[ホテルニューグランド]]
{{出典範囲|text1=本作は2022年9月にクランクインし、:オークションのシーンから撮影が始められた。ロケ地は横浜の老舗ホテル・[[ホテルニューグランド]]が選定された|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=20}}{{R|productionnote}}}}このホテルは渡辺が挙式した場所であり、クラシカルな場所というイメージで思い浮かんだことからオークション会場として選ばれた<ref name="cinematoday20230526">{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136997|title=『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』なぜ曇り空のパリ?渡辺一貴監督のロケーションの流儀|accessdate=2023-11-03|author=石井百合子|date=2023-05-26|website=シネマトゥデイ}}</ref>。美術の磯貝さやかは撮影前に実際のオークションに参加し取材を行ったが、そのオークションは会議室のようなあまり華やかでない場所で行われたため、本作では花などが並べられた「オークションのイメージ」が強い物となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=150}}。
;[[葉山加地邸]]
{{出典範囲|text1=続いて、神奈川県を中心に現代パートの撮影が進められた。露伴邸は:テレビドラマシリーズと同様[[葉山加地邸]]がロケ地引き続き、露伴の自宅なっして使用され|ref1={{R|productionnote}}}}。{{出典範囲|text1=ドラマシリーズとの違いとして、部屋には顔料のもととなる植物などが大量に吊るされており、これらは磯貝が荒井に行った取材がもとになっている。また、ドラマシリーズとの繋がりが感じられるよう、ホットサマー・マーサのフィギュアやバキンのフードボウルなども置かれている|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=150}}}}。
;向瀧
:会津若松市の旅館。露伴の祖母・猷の下宿を舞台とした、露伴の青年期の撮影が行われた。この場所は渡辺が演出し高橋が主演を務めたNHKのテレビドラマ『[[雪国 (小説)#テレビドラマ|雪国 -SNOW COUNTRY-]]』のロケ地でもあり、渡辺は『雪国』の撮影中(2022年1月)から猷の下宿にも理想的だと考えていたという{{R|cinematoday20230526}}。
;[[エトワール凱旋門]]・[[シャンゼリゼ通り]]
:露伴と京香が2階建てバスに乗るシーンが撮影された。このシーンでは信号や他の車のタイミングが合わず、理想の画が撮れるまで30分以上、何十周も凱旋門を周回したという{{R|cinematoday20230427}}{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=79}}。
;ヴィクトル・ユゴーの弁護士事務所
:ルーヴル美術館文化メディエーション部のオフィスとして使用された。
;ルーヴル美術館
2回目のロケではルーヴル美術館での撮影が3日間にわたって行われた{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=80}}。原作ではルーヴル美術館のシーンは少なく、すぐにZ-13倉庫に行ってしまうことから、映画化に際し館内の描写が多く足されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://otocoto.jp/interview/ikenobe210/ |title=渡辺一貴監督が語る 現実にルーヴルへ行くという奇跡が起きた『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』 |accessdate=2023-11-19 |author=池ノ辺直子 |date=2023-05-27 |website=otocoto |publisher=バカ・ザ・バッカ |page=1}}</ref>。撮影は閉館後から翌朝にかけて行われた。渡辺らによる下見は10回ほど行われたが、閉館後の人がいない美術館は雰囲気が全く異なり、本番では考えてきたことをリセットし、その場で感じたことを大事にしながら撮影は行われたという<ref>{{Cite web|和書|url=https://otocoto.jp/interview/ikenobe210/2/|title=渡辺一貴監督が語る 現実にルーヴルへ行くという奇跡が起きた『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』|accessdate=2023-11-19|author=池ノ辺直子|date=2023-05-27|website=otocoto|publisher=バカ・ザ・バッカ|page=2}}</ref>。飯豊は閉館後の館内は常に誰かに見られているような不思議な空気感があり、貴重な経験だったと回想している{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=142}}
;[[大森ベルポート]]地下3階・能忍寺の廃トンネル
{{出典範囲|text1=:Z-13に続く地下通路は[[大森ベルポのシト]]の地下3階、および[[館山市]]にある能忍寺の廃トネルにて撮影された。螺旋階段のシーンの撮影では[[ステディカム]]が使用され、動きのあるダイナミックな映像となっている|ref1={{R|productionnote}}}}。
;大谷石採石場跡
続いて、大谷石採石場跡にて、:本作のクライマックスシーンの一つであるZ-13倉庫のシーンが4日間にわたって撮影された{{R|productionnote}}{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=143}}。{{出典範囲|text1=渡辺は[[アンドレイ・タルコフスキー]]の映画『[[ストーカー (1979年の映画)|ストーカー]]』をイメージし、|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=152-153}} |text2=20分以上続く無機質な暗がりのシーンを、いかにエンターテイメントとして飽きさせないものにするかに注力したという<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.creativevillage.ne.jp/category/topcreators/visual-creators/135115/|title=映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』監督 渡辺一貴———引っ掛かるのは〝記憶″というキーワード。最近の作品はすべてそれがモチーフなのではと思うほど。|accessdate=2023-11-03|author=永瀬由佳|date=2023-05-24|website=CREATIVE VILLAGE|publisher=クリーク・アンド・リバー}}</ref>}}。{{出典範囲|text1=磯貝は原作を読んだときから再現に一番ハードルを感じていた場所だといい、洞窟や廃墟の資料や『ストーカー』を参考に、長い間放置されたような雰囲気を作り出したという。蜘蛛の巣は真綿を引き伸ばして作られており、カメラに収まるところに重点的に付けたり、レイヤーを重ねるようにしたりして、大量の蜘蛛の巣が張っているように見せている|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=152-153}}}}。
;霧幻峡・大内宿
:仁左右衛門と奈々瀬の物語が描かれた江戸時代パートが撮影された。{{出典範囲|text1=仁左右衛門が黒に魅せられていく場面はZ-13倉庫のシーンとリンクされており、蜘蛛の巣が徐々に増える演出が施されている。また、御神木の黒い樹液は、木から流れるものと指についたものとで素材を変えるなどこだわって制作された|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=153}}}}。
 
=== 音楽 ===
ドラマシリーズに引き続き音楽を担当した[[菊池成孔]]は原作を読んだことはなかったものの、周囲には「ジョジョ」の熱狂的なファンが多くおり、『ルーヴルへ行く』についてもある程度予備知識を持った状態で制作に臨むことができたという{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=147}}。本作の音楽制作は映像がすべて完成してから行われ、菊池は様々な時代が描かれる映像に合わせて、音楽も統一感を出さず[[オムニバス]]のような形で制作した。なお、本作ではドラマシリーズに引き続き「新音楽制作工房{{Efn2|菊池の私塾「ペンギン音楽大学」の生徒らと菊池自身が立ち上げた音楽ギルド<ref name="snrec20231121">{{Cite interview|和書|date=2023-11-21|subject=菊地成孔|subjectlink=菊地成孔|interviewer=Satoshi Torii、写真:Hiroki Obara|subject2=佐々木語|subject3=丹羽武史|subject4=大野格|title=『岸辺露伴は動かない/岸辺露伴 ルーヴルへ行く』OST〜菊地成孔/新音楽制作工房が紡ぐ新時代の劇伴とは|url=https://www.snrec.jp/entry/ex/interview/kishiberohan_kikuchi-naruyoshi_shin-on-gak|work=サンレコ|publisher=リットーミュージック|accessdate=2023-12-15}}</ref>。}}」も音楽制作を行っている{{Sfnp|パンフレット|2023|p=19}}。
 
菊池はドラマシリーズとの違いとして、[[シネマコンプレックス|シネコン]]の大出力のスピーカーにも耐えうる音の厚みを心がけたといい、ドラマシリーズでは4人編成でダビングを2回行い最大8人分の音だったストリングスが、今作では14人編成でレコーディングが行われた{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=148}}。メインテーマである「大空位時代」も今作に向けて音を厚くアレンジされており、この曲のブローアップが本作の最初のミッションだったという{{Sfnp|パンフレット|2023|p=19}}。
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=== 公開後 ===
本作は2023年5月26日に全国272スクリーンで公開され、翌27日には[[六本木ヒルズ#TOHOシネマズ六本木ヒルズ|TOHOシネマズ六本木ヒルズ]]にて公開記念舞台挨拶が行われた<ref name="animeanime20230619">{{RCite web|animeanime20230619和書|url=https://animeanime.jp/article/2023/06/19/78033.html|title=映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」興行収入10億円を突破! 渡辺一貴監督による全国ティーチインイベントも開催 |accessdate=2023-12-01|author=仲瀬コウタロウ|date=2023-06-19|website=アニメ!アニメ!|publisher=イード}}</ref><ref name="natalie20230527">{{Cite web|和書|url=https://natalie.mu/eiga/news/526262|title=「岸辺露伴」高橋一生は目の奥が真っ黒、木村文乃は長尾謙杜の“立ち振る舞い”を絶賛|accessdate=2023-12-01|date=2023-05-27|website=映画ナタリー|publisher=ナターシャ}}</ref>。舞台挨拶の最後に高橋は次のように述べている。
 
{{Quotation|この作品は娯楽です。娯楽作品は人の心を動かし得るものだと思っています。僕は岸辺露伴の役をいただいたときに、この虚構の世界で皆さんに夢を見ていただき、現実で生きる力を携えていただきたいと思い、3年間やってきました。その集大成がこの作品に詰まっています。|高橋一生|{{R|natalie20230527}}}}