朝鮮八道(ちょうせんはちどう)は、李氏朝鮮(朝鮮王朝)が朝鮮半島に置いた8つの行政区画)。

八道
各種表記
ハングル 팔도
漢字 八道
発音 パルト
日本語読み: はちどう
2000年式
MR式
英語表記:
Paldo
P'alto
Eight Provinces of Korea
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400年以上にわたって同一の区分が用いられたため、「八道」は転じて「朝鮮全土」のことも指した。鶏林八道(けいりんはちどう)[注釈 1]と呼ぶ事もある。8つに区分された道は、現在も地域的なまとまりとして捉えられている(朝鮮の地方)。

また、現在の韓国北朝鮮の行政区画の基礎にもなっている。

概要(八道四都) 編集

朝鮮八道とは、以下の8つのである。「首都近郊」を意味する京畿道を除く7つの道の名は、主要な2つの都市の名を並べたものである。かつて鶏林八道と称されるともに、各道について別称の表記もみえる。

八道 語源 別称 行政区分
京畿道(キョンギド) 首都近郊を意味する 畿甸 州6、府9、郡8、縣15、驛6、堡9
忠清道(チュンチョンド) 忠州+清州 湖西 州4、府1、郡11、縣38、驛5、堡6
慶尚道(キョンサンド) 慶州+尚州 嶺南 州4、府11、郡42、縣13、驛11、堡31
全羅道(チョルラド) 全州+羅州 湖南 州5、府5、郡11、縣35、驛5、堡18
江原道(カンウォンド) 江陵+原州 関東 州1、府6、郡7、縣12
平安道(ピョンアンド) 平壌+安州 関西 州4、府10、郡14、縣13、驛2、堡54
黄海道(ファンヘド) 黄州+海州 海西 州2、府5、郡8、縣8、驛3、堡7
咸鏡道(ハムギョンド) 咸興+鏡城 関北 州1、府15、郡4、縣2、驛3、堡41

朝鮮王朝によって、道には外官職(地方役人)が置かれた。長官は観察使(監司、巡察使とも。従二品)と呼ばれ、次官である都事の補佐を受け、軍司令官である兵使水使の協力を得て地方統治を行った。

また八道のうち、首都の漢城(漢陽・ソウル)、及び開城江華水原広州の各地(四都)は中央行政の直轄地であった。いずれも地理的には京畿道に属するが、この地の役人は「留守職」といい、京官職(中央役人)が置かれた。

沿革 編集

朝鮮王朝の地方行政区分は、高麗時代の地方行政の枠組を改変して編成されている。高麗建国当初は古代日本の国造制に近い制度であったが、中期に地方行政制度が整備され中国・唐の制度に起源を持つ「道」を行政区画に用いるようになった(五道両界制)。全羅道・慶尚道はこのときに生まれた名称と地域を引き継いでいる。高麗末期には区画改変が行われた結果、京畿道の名称が生まれた。

朝鮮王朝の初期に満州との境の辺境地域(現在の中朝国境)の攻略が進められると、西北面に平安道(1413年)、東北面に永吉道(1414年)が設置された。永吉道は、咸吉道・咸鏡道・永安道などの改名を経て、1497年以降咸鏡道の名が定着した。

高宗32年(1895年)、甲午改革の一環として地方行政制度の改編が行われ、勅令第98号によって八道は廃止され、日本の府県制度をモデルに23の府(長官:観察使)が置かれた(二十三府制)。しかし、翌高宗33年(1896年)8月4日の勅令第36号により、二十三府は廃止されて道が復活した。このとき、京畿道・黄海道・江原道を除く5道が南北に分割され、十三道となった(十三道制)。

1910年に日本による韓国併合が行われるが、日本統治時代でも朝鮮全域を13の道に分割する区画はそのまま受け継がれた。

第二次世界大戦後、朝鮮半島に南北2つの政権ができると、道の分割や、特別市・広域市などの分離などが行われている。

朝鮮の地方行政区画の変遷 編集

八道と十三道、ならびに現在の行政区画の対比表は、おおむね以下の通りである。

李氏朝鮮(朝鮮王朝) 大韓帝国 - 日本統治期 現在
八道 十三道
京畿道 京畿道   ソウル特別市
  仁川広域市
  京畿道
  開城特別市
  黄海北道の一部
  江原道の一部
忠清道 忠清北道   忠清北道
  世宗特別自治市の一部
忠清南道   大田広域市
  世宗特別自治市の一部
  忠清南道
慶尚道 慶尚北道   大邱広域市
  慶尚北道蔚珍郡を除く)[注釈 2]
慶尚南道   釜山広域市
  蔚山広域市
  慶尚南道
全羅道 全羅北道   全北特別自治道
全羅南道   光州広域市
  全羅南道
  済州特別自治道
黄海道 黄海道   黄海北道
  黄海南道
  仁川広域市甕津郡の一部
平安道 平安北道   平安北道
  慈江道
  両江道の一部
平安南道   平壌直轄市
  南浦特別市
  平安南道
江原道 江原道   江原特別自治道
  慶尚北道蔚珍郡
  江原道元山市周辺を除く)[注釈 3]
咸鏡道 咸鏡北道   羅先特別市
  咸鏡北道
  両江道の一部
咸鏡南道   咸鏡南道
  江原道元山市周辺
  両江道の一部

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 鶏林は、もともと新羅の発祥地の名。新羅が朝鮮半島を統一した後は、歴代統一政権の美称となる。
  2. ^ 蔚珍郡は元々江原道に属していたが、1963年から慶尚北道に属するようになった。
  3. ^ 元山市周辺は元々咸鏡南道に属していたが、1946年から江原道に属するようになった。

関連項目 編集