クルマユリ(車百合、学名Lilium medeoloides A. Gray[1] )は、ユリ科ユリ属多年草[2]

クルマユリ
クルマユリ(木曽駒ヶ岳、2013年8月8日)
クルマユリ Lilium medeoloides
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
: ユリ目 Liliales
: ユリ科 Liliaceae
: ユリ属 Lilium
: クルマユリ L. medeoloides
亜種 : 本文を参照
学名
Lilium medeoloides A. Gray[1]
和名
クルマユリ(車百合)

特徴 編集

白色の鱗茎は球形で、直径約2 cm[2]の高さは30-100 cm[2]の大きさは5-6 cm、茎の上部に1-数個が互生する[2]。6枚の花被片はオレンジ色で、濃紅色の斑点がある。花粉は赤褐色[2]。花期は7-8月[2][3]が茎の中央部で6-15枚輪生し、その上部に3-4枚まばらにつく[3]朔果は倒卵形で、長さは約2 cm[2]

和名は、茎に輪生する葉を車輪(や)にたとえたことに由来する[4]

分布 編集

中国朝鮮半島サハリンカムチャッカ半島千島列島日本に分布し[2][4]、冷涼な土地に生育する。

日本では北海道本州の中部以北と大台ヶ原山四国剣山[3][5]高山帯から亜高山帯草原に分布している[2][4]田中澄江の著書である『新・花の百名山』で、栗駒山を代表する高山植物としてムシトリスミレなどと共に紹介された[6]基準標本函館市付近のもの[4]青森県車力村(現つがる市)の村の花であった。

利用 編集

鱗茎は可食で、アイヌ料理では調理して食される。

その調理方法は、秋に掘り出した鱗茎を、食べられない芯の部分を除いて鱗片をほぐし、洗ってからと混ぜて炊く。炊きあがると、杓子で鍋の片隅からを潰していく。この調理が終わるとまず近隣の住人にこれを配り、それから食べたという。

この鱗茎を北海道西部のアイヌ語方言ではニヨカイ(niyokay)またはニノオカイ(ninookay)、北海道東部の方言ではパララ(parara)、樺太地方ではそれぞれヌマハプル(numahapuru 落帆地方)、スマリエノンカイ(sumari enonkay 白浦地方)、スマリハハ(sumari hax 真岡地方)と呼ばれる。エゾスカシユリの鱗茎も同様に調理して食される。

種の保全状況評価 編集

日本の以下の都道府県で、レッドリストの指定を受けている[7]環境省により、上信越高原国立公園中部山岳国立公園南アルプス国立公園などで自然公園指定植物の指定を受けている[8]。生育環境の遷移[9]、栽培目的の採集[9]シカによる食害[10]などが要因で減少傾向の地域がある。変種として分類されることがあるサドクルマユリ(佐渡車百合、学名:L. medeoloides var. sadoinsulare )が石川県で、絶滅危惧I類(CRまたはEN)の指定を受けている[11]

分類 編集

品種 編集

  • フナシクルマユリ(斑無車百合、学名:L. medeoloides A.Gray f. immaculatum Takeda ) - 花被片に斑点がないもの[4]
  • チシマクルマユリ(千島車百合、学名:L. medeoloides f. kurilense ) - 葉の細いもの[4]
  • クロバナクルマユリ(黒花車百合、学名:L. medeoloides A.Gray f. atropurpureum Okuyama

変種 編集

  • サドクルマユリ(佐渡車百合、学名:L. medeoloides A.Gray var. sadoinsulare (Masam. et Satomi) Masam. et Satomi )[11] - 佐渡島金北山などに分布し、鱗片に関節がない[2]

近縁種 編集

以下の似た種がある。花はコオニユリに似ているが、葉の付き方が輪生することから区別できる。

画像 和名 学名 備考(自生地)
  クルマユリ
車百合
Lilium medeoloides ユリ属
Lilium
ユリ科
Liliaceae
高山帯から亜高山帯
  コオニユリ
小鬼百合
Lilium leichtlinii 山地から低山
  オニユリ
鬼百合
Lilium lancifolium 平地から低山

関連画像 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 奈良県のレッドリストのカテゴリー「絶滅寸前種」は、環境省の絶滅危惧I類(CRまたはEN)相当。

出典 編集

  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Lilium medeoloides A.Gray”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年11月10日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j 佐竹 (1981)、41-42頁
  3. ^ a b c 林 (2009)、621頁
  4. ^ a b c d e f 豊国 (1988)、564-565頁
  5. ^ 近藤 (1956)、197頁
  6. ^ 田中 (1995)、87-90頁
  7. ^ 日本のレッドデータ検索システム「クルマユリ」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2013年11月10日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
  8. ^ 国立・国定公園特別地域内指定植物(クルマユリ)” (PDF). 環境省自然環境局. pp. 9. 2011年9月20日閲覧。
  9. ^ a b c 徳島県版レッドデータブック” (PDF). 徳島県. pp. 330 (2011年8月). 2013年11月10日閲覧。
  10. ^ 特定希少野生動植物指定案の縦覧期間に提出された意見の概要及び県の考え方” (PDF). 奈良県. 2013年11月10日閲覧。
  11. ^ a b いしかわレッドデータブック植物編2010「サドクルマユリ」” (PDF). 石川県. pp. 183. 2013年11月10日閲覧。
  12. ^ 埼玉県レッドデータブック2008植物編” (PDF). 埼玉県. pp. 182 (2011年). 2013年11月10日閲覧。

参考文献 編集

  • 近藤 (1956-12-30). “クルマユリLilium medeoloides A. GRAY四國に産す”. 植物分類・地理 (日本植物分類学会) 16 (6). doi:10.18942/bunruichiri.KJ00002594011. https://doi.org/10.18942/bunruichiri.KJ00002594011. 
  • 田中澄江新・花の百名山文藝春秋、1995年6月。ISBN 4-16-731304-9 
  • 豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月。ISBN 4-635-09019-1 
  • 佐竹義輔大井次三郎北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本Ⅰ単子葉類』平凡社、1981年9月。ISBN 4582535011 
  • 林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421 

関連項目 編集

外部リンク 編集