オンタリオ・ハイドロ(英語:Ontario Hydro)はカナダオンタリオ州政府が所有していた電力会社である。1906年創業の公企業で、1999年までオンタリオ州の電力供給していた。1999年にオンタリオ州電力政策の規制緩和により5社に分割民営化され、全発電所の所有権と運用はオンタリオ・パワー・ジェネレーションに引き継がれた。

オンタリオ・ハイドロ
Ontario Hydro
元の種類
公企業
業種 発電、送電、配電
設立 1906年
解散 1999年
本社 カナダ オンタリオ州 トロント
製品 電力

沿革 編集

ナイアガラ公園委員会(Niagara Parks Commission)がニューヨーク州オンタリオ州を結ぶ国際観光鉄道を計画した際に、1888年にナイアガラ川を活用した水力発電の構想も生まれた。国際観光鉄道「ナイアガラ滝公園河川鉄道(Niagara Falls Park & River Railway)」が1892年に認可され1900年までには20万馬力(15万キロワット)の発電機を稼働させていた[1]。1899年にはこの電力を販売する会社が数社登場した。天然資源を私的に流用しているという懸念も起こり[2]、1902年にオンタリオ州ベルリン(現キッチナー)で非公式の評議会が開催され、オンタリオ州議会に対し地方自治体主導の電力協同会社を提案した[3]。当初、当時の州政府はこれを退け、1905年総選挙で敗北後に公立の電力会社設立に向け作業を開始した。選挙時にはジェームス・ホイットニー(James Whitney)は「ナイアガラの水力発電は空気と同じようにただであるべきだ」と主張した[4]

 
アダム・ベック水力発電所
 
オンタリオ・ハイドロの送電網地域(1919年)

1906年5月、オンタリオ水力発電委員会(Hydro-Electric Power Commission of Ontario ("Hydro" or "HEPCO"))が設立された[5]。HEPCOは当初、政府機関、国営企業、地方委員会、民間企業のいくつかの組織のハイブリッド型の独特の運営を行なった。1907年にトロントおよび18の地方自治体での住民投票が行われ、HEPCOとの暫定的な送電協定が承認された。1910年にナイアガラフォールズから長距離送電線によってベルリン(現キッチナー)に電力が供給された。その後1920年代に送電網は著しく拡大していった。

 
アビティビ渓谷発電所


拡大期 編集

1960年代にはHEPCOは北米で初めて超超高電圧(UHV)送電を開始した事業者となった。1960年に計画開始し、1967年には50万ボルトで北部オンタリオの遠隔地から、トロントオタワなどの南部オンタリオの都市部に送電を開始した。1970年代から1980年代にかけて、現在の50万ボルト送電網を完成させた。原子力発電開始前では、オンタリオ・ハイドロは下記の電力供給を実施していた[6]

オンタリオ・ハイドロの電力供給源 (1969年)
電力源 形式 許容容量 (GW) 年間出力
発電 水力 5.8 32662.5GWh
地熱 4.7 18771.4 GWh
購入 水力 0.5 6503.5 GWh
原子力 0.2 411.5 GWh
合計 11.2 62448.9 GWh

HEPCOからオンタリオ・ハイドロへ 編集

1974に、HEPCOは「オンタリオ・ハイドロ」という公企業に改組[7]された。オンタリオ・ハイドロはこれまでも委員会のニックネームとして呼ばれてきたもので、現在でも電力源にかかわらず「ハイドロ」が電力の代名詞となっている。

分割民営化 編集

1998年、オンタリオ州議会はエネルギー競争法(1998年)を可決した[8]。この法律は電力供給に市場原理を導入するもので、オンタリオ・ハイドロを民営化し5社に分割する内容であった。5社は下記の通り[9]オンタリオ・パワー・ジェネレーションハイドロ・ワンは公企業ではなく私企業として運営する意図があった。


オンタリオ・ハイドロは1999年3月31日に操業を停止し、全資産を後継企業に移管した[10]

文献 編集

脚注 編集

  1. ^ Biggar 1920, p. 32.
  2. ^ Biggar 1920, p. 37.
  3. ^ Biggar 1920, pp. 42–44.
  4. ^ Hampton 2003, p. 37.
  5. ^ An Act to provide for the Transmission of Electrical Power to Municipalities, S.O. 1906, c. 15
  6. ^ The Hydro-Electric Power Commission of Ontario: 1969 Annual Report”. pp. 44–46. 2013年8月14日閲覧。
  7. ^ The Power Commission Amendment Act, 1973, S.O. 1973, c. 57 , which renamed the Power Commission Act as the Power Corporation Act
  8. ^ Energy Competition Act, 1998, S.O. 1998, c. 15
  9. ^ Electricity Act, 1998, S.O. 1998, c. 15, Sch. A
  10. ^ Ontario Hydro - Final Annual Report” (English). oefc.on.ca. Ontario Hydro. p. i (1999年3月31日). 2016年9月15日閲覧。

注釈 編集


関連項目 編集

外部リンク 編集